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死体は生きている25

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:炎の画策九 犯行の当日、いつもより早めに帰宅した。八時頃夕食をすませ、妻は子供をねかせるため添寝しながらテレビをみていた
(单词翻译:双击或拖选)
炎の画策
 犯行の当日、いつもより早めに帰宅した。
八時頃夕食をすませ、妻は子供をねかせるため添寝しながらテレビをみていたが、いつの間にかねてしまった。犬山は新聞をひろげ読むとはなしに、妻の寝息をうかがっていた。
いびきが聞えはじめた。
犬山は妻の首に巻いてあったマフラーの両端を持って、一気に首を絞めたのである。
ウーッ、とかすかな声をあげ、全身をつっぱるように痙《けい》攣《れん》して間もなく、こときれたようであった。子供はねむったままであった。
布団のわきには石油ストーブが赤々と燃えていた。
座布団を三枚重ね、その上に妻と子供の衣類などをまるめてストーブのすぐ前に置いた。一〜二時間もすれば衣類に火がつくであろうと、計画通り工作してから、車を運転して外出した。九時を少しすぎていた。
十時半頃、バーへ行き水割りをたてつづけに二杯のみ、大きく息をついた。
リサはカウンター越しに微笑をおくった。
暗黙の了解であった。
犬山はひどく疲れていたが、午前〇時半の閉店を待った。ママやほかのホステスに愛想よく挨《あい》拶《さつ》をして店を出た。
アリバイをつくって置きたかったからである。
リサを自分の車に乗せ、マンションまで送った後、郊外の自宅へ向かった。
この時間であれば、工作して六時間はたっている。火事で自宅付近は大騒ぎになっているだろうとの計算であった。
家の近くのバス停まで行ったが、何んのかわりもない。静かな住宅街はねむったままである。
道路わきに車を止めて、歩いて自宅の様子を見に行った。
何事もない。
急に胸に高なりを覚えた。計画通りにはいかない誤算とあせりのためだろう。
車に引き返した。
しかし、どうしたらよいのか予期せぬ事態に直面したので、次の手段が浮かばない。タバコに火をつけ、気を落着かせることにした。
缶ビールの栓を開け、のみながら再び暗《くら》闇《やみ》の中、家の方へ歩いていった。
玄関前に立ち止って様子をうかがったが、何んの変りもない。通りすぎて空地の砂利の山かげに腰をおろし、ビールをのみながら家の様子を見守っていた。
タバコを吸っては消し、出火を待った。
四時二十分を時計はさしていた。ビールもなくなり、寒さがこたえた。これ以上は待てない。
夜が明ければ、計画は失敗する。そう考えて犬山は腰をあげた。
家の中は熱気にあふれていた。
暗くて中の様子はわからないが、ストーブのあかりで赤く腫《ふく》れ上ったような妻の顔が、怒りに満ちてにらんでいるように見えた。
一瞬すくんだが、すぐ気を取り直した。
石油ストーブの前に積み重ねた衣類は、茶褐色にこげているが、出火には至っていない。
咄《とつ》嗟《さ》に犬山は五〜六枚の新聞紙をまるめて、ストーブと衣類の間に置いた。見る間に新聞紙に火がつき燃え上った。
急いで玄関から外へ出ようとしたとき、ドーンという鈍い音をたてて家の中は、火の海となった。
すべてやり終えた。
もうあとへは引けない。
目の前の炎は、すべての過去を焼きはらうかのように激しく燃え上っていた。
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