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死体は生きている28

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:危険防止 監察医は死体を検案(検死)して、そこに見られる所見から、なぜこの人が死亡したのか、死因をはじめどのくらい前に、
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危険防止
 
 監察医は死体を検案(検死)して、そこに見られる所見から、なぜこの人が死亡したのか、死因をはじめどのくらい前に、どのようにして死に至ったのかなど、知りうるすべての事柄を発掘するのが仕事である。
しかし、死体はわれわれが布団に横たわって寝ているような感じで、死亡している場合が多いので、死因特有の所見をもっているケースは少ない。
また、一言も言葉を発しないから、こわれたテレビを外側からみて、どこがこわれているのかをいいあてるようなもので、検死というものはむずかしい。
あいまいのまま死因を決定することは許されない。なぜならば、殺しを病死と判断するようなことがあっては、社会の秩序は守れないし、死者の生前の人権も擁護できないからである。
したがって、検死で死因がわからなければ解剖することができるのである。
これが監察医制度であり、この解剖は行政官である監察医の判断で、容易に行うことができるので、行政解剖と呼ばれている。
殺人などの犯罪死体は、検事の指揮下で司法検視、司法解剖として行われ、行政解剖とは法的基盤を異にしている。
行政検死、行政解剖の対象は、原則的には犯罪死体ではないが、社会的にも医学的にもかなりの不安をもった死に方であることには違いない。その謎《なぞ》をとき、不安を取り除くためにも、行政上必要な制度であり、さらに一歩進めて病気の原因を究明したり、また元気な人達の突然死の解明なども行い、医学的データを予防医学に応用して、住民サービスにつとめるので、衛生行政上も重要な役割を果している。

風邪で会社を休んでいた課長が夜中、カプセル入りの売薬を取り出し服用した。間もなく気分が悪いといい、苦しみ出した。家族はすぐ救急車を要請し、病院に向かったが、到着前に救急車の中で死亡してしまった。
変死扱いになった。
普段心臓もあまり丈夫ではなかったというが、日常生活に支障をきたすようなことはなかったし、風邪にせよ急死するような病状ではない。
検死しても、外見から死因となるような所見はつかめない。死因不詳として、監察医務院で行政解剖をしたところ、心臓の栄養血管である冠状動脈に軽度の硬化があったが、年齢相応のもので、死因となるようなものではなかった。
胃粘膜は赤褐色にびらんし、異臭が感じられ化学検査をしたところ、青酸が検出された。
死因は、青酸中毒である。
「風邪薬から、青酸反応」
「他殺か」
と大きく報道された。
きびしい捜査の結果、数日後実態が明らかになった。
その家の祖父が病弱のため、自殺しようと思い、カプセル入りの風邪薬の中味をぬきとり、カプセルの中に青酸を入れ、用意して置いたものであることがわかった。
このように工作したあと、再び薬箱の中に入れたまま、忘れていたというのである。
それにしても、危険きわまりない話である。

ある事件の容疑で逮捕された男が、警察に連行された。取り調べ中急に苦しみ出した。
病院に収容したが間に合わなかった。
状況から心臓発作と考えられたが、解剖の結果なんと青酸服用による自殺とわかった。
青酸塩は即効性の毒物であるが、カプセル入りであったため、胃でとけるのに時間がかかったこと、あるいは服用量が少量であったことなどから、服用してから死亡するまでの時間が長びいて、一見心臓発作のように思われた。
このようなことがニュースに流れたりすると、類似の事件が起こることがある。

帰宅するなり、口から泡をふき苦しみ出した。病院へ収容されたが急死した。
医師は心不全の病死と判断したが、苦《く》悶《もん》の中で妻に、ある男にだまされて薬をのまされたといった。そのため遺体は毒殺の疑いで、司法解剖されることになった。
犯人と目された男は、否認のまま起訴され結局、死刑判決をいい渡された。
今、無実を叫び、再審を求めているという。
この事件の真偽について述べるつもりはないが、問題なのはこのようなカプセル入り薬剤の中身を素人が簡単にすりかえられることである。
安心させて服用させることのできる巧妙な殺しのテクニックには、何らかの防御策が必要である。
一般的には、カプセルそのものは胃に入ると十分以内に殆《ほと》んどが溶けなければならない、規定になっているという。しかし、これはあくまでも試験管内での実験であり、人間の生体内に入った場合とは異なるので、多少のずれは考慮しなければならない。
当時カプセルはキャップをかぶせるような構造になっていたが、その後封入式になり薬の中身は入れかえられないようになってきた。

話は変るが、同じような事件がある。
子供達が、悪ふざけをして遊んでいた。
その中に一人が階段をかけ降りた。追いかけていた子が持っていた傘をやり投げのように投げつけた。
運悪くその子の頭に当った。
金属製の傘の先端が細長くなっていたため、加速度のついた傘は頭に突き刺さったのである。
頭《ず》蓋《がい》骨《こつ》骨折、脳障害、細菌感染から脳《のう》脊《せき》髄《ずい》膜《まく》炎《えん》を起こし死亡してしまった。
大人のけんかでも、同じ事件があった。
口論からけんかになり、傘で相手の顔を突いた。眼に当ったからたまらない。眼《がん》窩《か》の頭蓋骨の厚さはハガキぐらいの薄い骨なので、傘の細長い先端は、骨を突き破り脳に達した。そのため細菌感染を生じ、脳脊髄膜炎となって死亡した。
殺すつもりはなかったのであるが、最悪の結果になった。
このような事件があって傘の先端は、改良されとくに子供用のものは、先端が太く丸味のある危険性の少ないものになってきている。
薬にしろ、傘にしろ一つの事件を契機に、再び同じことが起こらないよう防止対策がとられることは望ましい。
事件が起こってからでは遅いのである。
一歩踏み込んで、製造の段階で業者がつかう側の気持ちになって、工夫改良することが最も大切なことだと思うのである。
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