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死体は生きている30

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:行政解剖 誰れでもそうであろうが、自分のやっていること以外のことについて、詳しく知っている人は少ない。当然であろうが、医
(单词翻译:双击或拖选)
行政解剖
 
 誰れでもそうであろうが、自分のやっていること以外のことについて、詳しく知っている人は少ない。
当然であろうが、医者の世界のことを世間の人はあまりご存知ないようである。
たとえば、内科医は医学部に入るとはじめから内科だけを専門に勉強し、外科医は外科の勉強だけをして卒業するかのように思われているようである。
決してそうではなく、大学の低学年は教養学科を学び、中学年になって基礎医学を勉強する。この基礎医学というのは解剖学、生理学、生化学、病理学、薬理学、細菌学等々直接患者に接する前に医師として知っておかなくてはならない医学知識である。
これらと平行して公衆衛生学(予防医学)と法医学(裁判医学)を勉強する。この二科目は社会医学系と呼ばれている。
これらを学んだ後、高学年になってはじめて臨床医学の講義をうける。内科、外科、産婦人科、整形外科、眼科、皮膚科、耳《じ》鼻《び》咽《いん》喉《こう》科、精神科等々の患者に対応する医学である。
したがって、医学部を卒業するまでは、全員が同じ過程を踏み、国家試験に合格してはじめて、それぞれが自分のめざす科目を選び、専門家としての勉強をすることになる。
ところが卒業生の殆んどは、臨床医になってしまい、基礎医学系をめざすものは一割程度であり、社会医学系を希望するものは、いないというぐらい少ない。
医師である以上は、やはり患者の治療にあたるのが本筋であり、また収入の点からいっても格段の差があるから致し方がない。
私は法医学を専攻したが、一大学で十年間に一人いればよいぐらい希望者の少ない部門である。
だから医師千人の中で法医学専攻者は、一人位という計算になる。
医師の資格があるからたとえば、途中で法医学がいやになったからと、内科に変更しても一向にかまわないのである。
私は大学の法医学教室で四年間学んだ後、実際に変死者を検死したり、解剖する東京都の監察医になった。
毎日死者と対面し、検死や解剖をしているので、臨床医のように診察、治療をしていないから、それらの知識は日ごと忘れる一方となり、自分自身が医者だという意識もうすれている。
だから夜中に、子供が高熱を出したときなど、妻に早く医者を呼べなどとどなったりする。
「なにいっているのよ。自分は医者でしょ」
とたしなめられて、あっ! いけねぇ。医者だったと、気をとり直して子供の病状を医師の立場で診療するという、腑《ふ》甲《が》斐《い》無《な》さである。
監察医在任中は、都立の看護専門学校で解剖学の講義を担当し、かれこれ二十年にもなり、現在も継続しているが、はじめのころ学生からよく、先生は医師ですかと聞かれた。
なぜそのような質問をされるのか、わからなかった。ところが、最近妹に聞いた話であるが、
「貴女のお兄さんは解剖をする人だそうですね」
「そうですよ。休みで実家に帰ったりすると開業医の父の仕事を手伝ったりしています」
というと、
「えっ、お医者様ですか?」
と不思議そうに尋ねたという。
どうも患者を診療するのが医者で、解剖をするのは医者ではなく、別の職業の人という理解であるらしい。
思いもよらぬ話に、私は驚いたのだが、自分自身も医者であることを忘れているような状態だから、看護学生の質問と合せて考えると、一般にはそう思われているのも止むを得ないことだと思った。

ある日、検死に出向いたが、死因はわからなかった。
警察の事情聴取に妻は、夜中気がついたときには夫は、からだを強直してウーッとうなり、呼びかけにも答えず、意識不明であったと説明していた。
普段の健康状態に異常はなく、大した病歴もない。自殺するようなことも全く考えられない。
どうも急病死のようであるが、死因まではわからない。
検死に時間がかかるので、とりあえず監察医補佐に解剖の必要があることを遺族の方々に説明しておいてもらった。
「ご遺体をおあずかりして検査をすることになります」
と補佐はきりだした。
「検査ってどういうことですか」
と奥さんは、聞きかえした。
「検死しただけでは、死因がわからないので、死亡診断書(死体検案書)が書けません。監察医がくわしく検査して、病名をはっきりさせるという意味です」
というと、
「解剖するのですか」
「そういうことです」
「それは困ります」
「研究材料にするつもりなのか」
「バラバラになってしまうではないか」
「可哀《かわい》そうだから、そんなことはさせません」
と居合せた親《しん》戚《せき》の人達までが、話に加わって解剖に反対しはじめた。
補佐も懸命に説得につとめていた。
「死んだ人が生きかえるならば、解剖でも何んでもしていただくが、生きかえるわけではあるまい」
「死んだ人をまた殺すのか」
などと、ありとあらゆる言葉を駆使して反対を唱え出した。
行政解剖は、監察医の判断で家族の承諾なしに実施できるが、行政官として家族によく説明し納得していただいた上で行っているのが現状である。
しかし、解剖という言葉に拒否反応を示す人達もいる。解剖というものをどのように理解しているのかは、個々人によって違っているようであるが、要約すれば先の言葉のようなイメージなのであろう。
私も監察医として、ご遺族の方々に解剖の主旨を説明した。
元気な人が寝ていて急に死亡するはずはない。それが事実死亡しているのだから、社会的にみても一抹の不審、不安があるし、医学的にもそれなりの原因があるはずである。それが皆目わからないから解剖しなければならない。そうすることが、ご当人の人権を擁護することになると、説明するがなかなか納得してもらえない。
いやがるご遺族の気持ちはわかるが、それを何んとか説き伏せ解剖しようとするのは、研究のためでもなんでもない。その人のためなのである。不安を取り除き、安心を得る。それは社会秩序の維持につながるのである。
それでも、解剖を拒否するようなときには、
「解剖すると、何か不利益な事態が生ずるのでしょうか」
と切りかえす。
ただ可哀そうだからというだけの感情的な理由だけで、法律に定められた行政解剖を拒否することはできない。拒否があまり強すぎると、警察としても逆に死体に解剖されては困るような秘密が隠されているのかと疑惑を抱くことになる。
このような会話のやりとりのあと、解剖して殺しを発見したこともあった。
しかし、殆《ほと》んどの場合解剖によって遺体がバラバラになってしまうと考えて、拒否しているようである。
決してそのようなことはない。
行政解剖のやり方を簡単に説明すると、解剖台にのせられた遺体の右手側に、執刀医である監察医がメスをもって立つ。
左手側には執刀医と向い合うように、臨床検査技師が解剖助手をつとめる。スタッフは死者に一礼をした後、執刀医は胸腹部の中央を縦に切開して解剖は、はじまる。
解剖台の周囲には二名の監察医補佐がついて、諸臓器の重量計測などを手伝う。解剖が終れば補佐は遺体の清拭、納《のう》棺《かん》、遺族に遺体の引き渡しなどを行う。
執刀医は解剖の進行に伴い、いろいろな所見を口述する。それを記録する監察医もいて、スタッフは一チーム五名である。
その他に主要所見を写真に残す場合は、写真技師が解剖室に控えていて、撮影してくれる。
遺族は待合室で、通夜に間に合うようにあるいは火葬の時間に間に合うようにと、解剖の終了するのを待っているので、行政解剖はゆっくり時間をかけてやっているわけにはいかない。
大体一時間内外で終らせねばならない。それに一日平均六〜七体の解剖がある。
だからといって、ぞんざいに扱うことは許されない。また手ぬきをすることもなく、丁重にかつ迅速に一定の術式にのっとって終了させるのである。
心、肺、肝、腎《じん》、脾《ひ》、胃、腸とすべての臓器を検査し、死因となる異常はないか、さらに臓器の小片を取り組織標本を作製して、顕微鏡下で検査をする。
頭も頭《ず》蓋《がい》骨《こつ》を開け、脳を調べる。
その後、頭も胸腹部もきれいに縫合するから、からだがバラバラになるようなことは全くない。
解剖が終ると、全身をお湯で洗ってふき、ゆかたを着せ、納棺して、ご遺族にお返しする。
すべては元通り。
きれいになったと感謝されることもある。
ご遺体は都内であれば無料で、ご自宅までワゴン車で返送する。
検死から解剖まで、一切の費用は無料である。
血液、胃内容、尿なども化学的に検査し、また毒物検査も行い、総合的な検査結果に基いて、監察医が最終的に診断を下す。
このような行程をとるために、どうしても解剖してから諸検査のデータが揃うまでに、三週間から四週間はかかってしまう。
このケースは、心臓の栄養血管である冠状動脈にコレステロールがたまって、血液の流れが悪くなったための心臓発作つまり、心筋梗塞であった。
解剖を拒否する理由はなかったのであるが、その後警察からの連絡では、夫婦関係中急に具合が悪くなり急死したため、奥さんはびっくりするやら、他人には言えないやらで、ひたすらそのことを隠し通そうと、解剖に反対したとのことであった。
逆に、はじめから解剖を希望するケースもある。
元気であった人が、突然死亡するとは考えにくいし、もしそうであったらどのような原因があるのか、家族のものも知っておきたいからだという。
理にかなった考え方であり、死因が判ればその病気に対する予防対策もたてられるので、家族にとってもきわめて有益なのである。
監察医制度は、生きている人のために応用されるべきものであり、このように住民が制度を利用し、公務員は住民に充分なサービスをするのが本来の姿であろう。
一生の終りである死が、理由もはっきりしないまま葬られるのは、やはり心もとないことだと思うのである。
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