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死体は生きている41

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:因《いん》 縁《ねん》 世の中には不思議なめぐり合いというか、因縁めいたことがあるものだ。昭和四十三年の十月、東京タワー
(单词翻译:双击或拖选)
因《いん》 縁《ねん》
 
 世の中には不思議なめぐり合いというか、因縁めいたことがあるものだ。
昭和四十三年の十月、東京タワー近くのホテルでガードマンが射殺されるという事件があった。
検死をしたが、日本では射殺は珍しい。
真夜中に男がホテルの非常用外階段を降りてくるのを、庭にいたガードマンが発見。
不審に思って、声をかけ近よったところ、いきなりピストルで頭を撃たれたのである。
男は逃走し、ガードマンは意識不明のまま十時間後に死亡した。
検死の際、犯人が降りたという非常階段を立会官の案内で歩きながら、犯行の模様について細かく説明をうけた。
現場に立っての検死は、迫力があり勉強にもなった。
それから三日後、京都の八坂神社で巡回中の警備員が、銃で撃たれた。三時間半後に死亡したが、
「十七、八の子供や」
と警備員は語っている。
また、銃声を聞いてかけつけた人は、学生風の男だと証言したが、結局犯人はつかまらず逃走してしまった。
それから十二日。函館でタクシー強盗があった。運転手は意識不明のまま死亡。
頭部を鈍器のようなもので殴られ、鼻をキリで刺されたための死亡とされた。しかし二週間以上もたってから、詳しい調査の結果、ピストル射殺であることが判明した。
これらは弾丸が同一で、連続ピストル射殺一〇八号事件として大きく報道された。広域重要事件に指定されたのである。
十一月に入って間もなく、今度は名古屋で同じようにタクシーの運転手が射殺され、売上金と腕時計がなくなった。
全国をまたにかけ射殺をくりかえしている犯人に、日本中は不安を感じていた。
昭和四十四年の春、東京の渋谷でビジネススクールを警備中のガードマンが、盗みの男を発見。格闘の末、ピストル三発を発射して逃走したが、緊急配備中のパトカーによって犯人は逮捕された。ガードマンはかすり傷だけであった。
これが永山則夫、当時十九歳であった。
五件の事件を起こし、四人は射殺されたが五人目はかすり傷で、連続ピストル射殺事件は終った。
事件があってから二十二年目。永山は最高裁で死刑が確定した。
その間、獄中で『無知の涙』などの小説を書き、また獄中結婚、離婚などもあって注目されていた。
私は直接永山個人と面識はないが、最初の射殺事件を検死しているというかかわりがあったので、関心をもって見つめていた。
ただそれだけであったのだが、平成二年三月五日、日本文芸家協会の定例理事会で、永山則夫の入会申込みをめぐって論争となったのをニュースで知った。
結局、この日の理事会は、永山の入会拒否を決めたものの、実はその数日前、本人が申込みを取りさげていたことが明らかになり、入会拒否の決定が宙に浮いたまま決着がついた。
文学と犯罪をめぐるこの問題は長びきそうである。
それはとも角として、そのとき私も文芸家協会に入会手続きをとっていたのである。
永山と一緒に理事会の審査をうけ、私は入会を許可されたのであったが、永山は拒否に遭い、自ら入会を取りさげたのであった。
こんな因縁が、私と永山の間にあったことは誰れも知らない。
しかし、その後この話をある人にしたところ、あなた自身はどう考えますかと質問されてしまった。
会員になったからいうわけではないが、いかなる理由があるにせよ、四人もの命を奪い、国民の名において裁かれ判決をうけた以上は、罪をつぐなわなければならない。
死刑がよいのか悪いのかは別として、死をもって罪をつぐなわなければならないのに、入会云《うん》々《ぬん》はないであろう。
文学と犯罪は別ということはわかるが、永山に書くのをやめろというのではない。また彼の文筆活動を制限することは、何人もできないのである。
ただ文芸家が集まって、権益保護の職能団体をつくったのが協会であり、時には対社会的発言などもする組織である以上は、もはやプライベートなものではなく、それなりの社会的対応もあるので、このような場合は、入会拒否の対象になって当然であろう。
しかし、自衛隊に乱入して多くの人に傷を負わせて死んだ、三島由紀夫は除名されていない。協会の考え方が一貫していないなどの批判やその他いろいろな意見はあろうが、永山に関しては、私はかように思っている。
新入りの会員がこんな意見を述べるのは僭《せん》越《えつ》かも知れないが、自ら入会を辞退したということに救いを感ずる。
文芸作品は協会員であろうが、なかろうが関係はない。よいものはよいのである。
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