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死体は生きている42

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:仏は生きていた 三河島列車二重衝突事件のことである。昭和三十七年五月三日、常磐線三河島駅付近で下り貨物列車が脱線、右側の
(单词翻译:双击或拖选)
仏は生きていた
 
 三河島列車二重衝突事件のことである。
昭和三十七年五月三日、常磐線三河島駅付近で下り貨物列車が脱線、右側の下り客車用の線路に傾き、併進中の電車に衝突した。そのため乗客約一三〇〇名の大半は事故と知って、電車から降り上り電車の軌道内を歩いて避難していた。
そこへ取手発、上野行きの電車が猛スピードで進行してきたからたまらない。軌道内を歩いていた人々をはねとばし、あるいは轢《れき》過《か》し、さらに現場に傾いていた下り電車に激突したのである。その衝突で即死した人、転覆した車両の下敷きになった人など、一瞬にして一六〇名もの命が奪われるという、大惨事になった。
受傷者は病院に収容され、死者は付近の病院やお寺などに分散収容された。
監察医務院では、特別検死班を組織して対応した。
私の班は、現場近くの小さな病院を担当することになった。
立会官に案内されて、玄関を入ると廊下にはムシロが敷かれ、端から端までぎっしりと遺体が並べられていた。
現場から運び込まれたそのままの姿であろうが、血だらけの服のまま、泥まみれの服のままであった。
まだ身元はわかっていないので、とりあえず番号札をつけ、端から検死をすることにした。
先ず鑑識係が遺体の写真をとる。これは顔や着衣などを記録し、個人識別にそなえるためである。
次いで警官が着衣の特徴を記録しながら、監察医補佐と一緒に脱がせ、全裸にする。この状態を再び写真にとる。これは外傷を記録するためである。
このような手順のあと、監察医が検死をする。
外傷や異常所見をメモし、致命傷から死因を決定して、次から次へと検死をしていかなければならない。大量死の場合には、ある程度スピード処理が必要なのである。
後日、身元が判明したときに、そのメモをもとに死体検案調書と死体検案書(死亡診断書)を作成し交付する。
こうして八体の検死が終り、九体目の検死に移ろうとして補佐が中腰になって、死者の背広に手をかけたところ、
「ウーッ」
と死体が低い声を上げたのである。
「オーッ」
と補佐は驚きの声を上げ、手を引込め、たじろいだ。
補佐ばかりではない。
私も警察官も、びっくりした。
「生きている。先生、生きてるよ」
と補佐は叫んだ。
一瞬、私の心臓は止った。
仕事の対象は常に、死体ときまっていた。
その死体が「ウーッ」と声を発したのだから、ビックリするのも無理はない。
こんなに驚いたことはなかった。
すぐに看護婦さんに連絡して、治療室へ運んだが、そっちはそっちで、てんてこ舞いの状態であった。
職業とはいえ、生きている人に驚く医者なんてあるのだろうか、とあとで大笑いした。

監察医になってこの方、生きている人には縁はなかったが、あるとき警察からこんな電話が入った。
男と同《どう》棲《せい》していたホステスが、浮気がばれてしまった。
怒った男は、彼女の髪の毛をつかんでハサミでジョキジョキ切ってしまった。
ネッカチーフをかぶって警察にやってきた。この頭では外にも出られないし、仕事も出来ない。元の髪に戻るまで生活の補償と損害賠償請求をするというのである。
髪の毛がのびるのに、どの位の月日がかかるものかとの質問であった。
殆《ほと》んど丸坊主のトラガリである。
一般的には毛髪は、一日に〇・三粍《ミリ》のびるとされている。三日で一・〇粍《ミリ》弱、一か月で約一・〇糎《センチ》。どうしても一年以上たたないと、女性の髪は戻らない。
刑事は電話の向うで、なる程そうですかと真剣にメモしているようであった。
私は、男と女の行動を思い浮べ、おかしくてたまらなかった。
その後、この事件はどう決着したのか聞いていない。

またある日、警察から電話があって、鑑定してもらいたい物件があるので、これから先生の所へ伺ってもよいかという。
四時過ぎになれば、時間が空くからと約束した。しかし、その日は解剖当番で件数が多く、解剖が終って自室に戻ったのは、四時半を過ぎていた。
二人の刑事は待ちくたびれていた。
「お待たせしました」
と私は挨《あい》拶《さつ》した。顔見知りの刑事であった。
「こちらこそ、お世話になります。お忙しいところ、すみません。早速ですが、これなんです」
と封筒から、ちり紙に丸め包まれたものを取り出し、私の目の前にひろげた。
プラムの種子のような形をし、干し柿のような感じで、暗赤褐色に乾燥していた。
見慣れぬものに目をやり、何であるのかを見極めようとしたが、わからぬままに、
「なんですか。これ」
と私は尋ねた。
実は三週間前の真夜中、酒に酔って二人の男が口論をはじめた。
若い方は大男で、中年の方は小男であった。その中に、大男が小男を殴ったために、とっくみ合いのけんかになった。
乱闘中に大男の耳が切れて、出血がひどくなった。
けんかは中断され、救急車で病院に運ばれた。医師は刃物で切られたもので、切れ端はないが、外傷は全治二週間と診断している。
夜が明け警察で現場検証をしたところ、切られた大男の耳たぶの一部が路上のすみに落ちていた。
「これが、それなんです」
小男は刃物は持っていないし、切った覚えもないと、犯行を否認した。
酒に酔い、興奮しての乱闘であったため、どうして耳が損傷されたのか、二人とも覚えがないのである。
簡単で結構ですから、調べて欲しいというのである。
二〜三日あずかることにした。
落着いて観察すると、ちぎれた耳たぶは不整形に断裂し、刃物で切ったような感じではない。
生活反応があり、拡《ル》大《ー》鏡《ペ》で断端を細かく見てみると、歯型状の痕跡になっている。
刃物ではなく、咬《こう》創《そう》による断裂の可能性が強かった。
けんかで耳たぶを噛《か》み切ったようなんだけれどと、警察へ電話した。
数日後、警察から返事がきた。
先生のご意見を念頭にして調べ直したところ、乱闘中小男が大男の髪の毛を両手でつかみ、頭をひき寄せ耳に噛みついたらしい。
大男はこれをはらいのけようとして、からだを引き起こした。そのときにどうも耳たぶが噛み切られたようであった。
そういえば、小男は大したけがはないのに、口や顔が血だらけになっていたという。
「そんなわけで、ありがとうございました」
これで一件、落着したのである。
生きた人のケースは、初めてであったから鮮明に記憶している。

死体でも生体でも、監察医の出番は、人生の裏側を垣《かい》間《ま》見《み》るようで、ひどく人間臭く、それなりに味わい深い。
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