返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

死体は生きている45

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:「死体は生きている」文庫化に際してのあとがき 私が東京都の監察医を辞したのは、平成元年八月である。以来、事件が発生しても
(单词翻译:双击或拖选)
「死体は生きている」文庫化に際してのあとがき
 
 私が東京都の監察医を辞したのは、平成元年八月である。
以来、事件が発生しても直接現場に出向いて検死をしたり、解剖するようなことはなくなったが、法医学評論家という立場で、テレビや新聞、雑誌などで知り得た少ない情報をもとに、死因や犯人像などを整理したり、事件の現場からお茶の間に向け、解説するような仕事が増えてきた。
トリカブト事件、甲府OL誘拐殺人事件、愛犬家連続殺人事件、美容師バラバラ殺人事件、つくば妻子殺人事件、オウム事件と凶悪犯罪が続発し、日本は政治経済だけではなく、社会秩序までもが混乱し、低迷してしまった。
とくにバラバラ事件などが報道されると、だれだって残忍で怨《えん》恨《こん》がからんだ変質者の犯行のように思ってしまう。しかし、目先きにとらわれず冷静な法医学の目で事件を観察すると、保身の心理が見えてくる。
犯人は他《ひ》人《と》を殺しておきながら、自分は警察に捕まりたくない。そのためにバラバラにする。そうすれば運びやすく、捨てやすい。そして遺体が発見されたとしても、身元がわかりにくいので、自分に捜査が及ばない。隠れみのとして、行動していることが読みとれる。とはいえ、怨恨が殺人の動機になっていることは多い。しかし、いかに激しい怨恨があっても殺害し、それでもなお許せないと、死体をさらに切りきざむような犯人はまずいない。それよりもいかに見つからないようにす早く死体を隠《いん》蔽《ぺい》するかに専念する。
だから遺体を病死のように見せかけたり、山中に埋めたり、水底に沈めたり、あるいは焼いたり、バラバラにしたりと様々なことをやっているのである。
なにも犯罪に限ったことではない。政治家も役人も、人間だれしも多少は責任のがれの保身の心理が働くから、それを責めようとは思わないが、事件を複雑にしていることは事実である。
ここで真相を見あやまってはならない。そのための専門家であり、解説者なのである。
時代の変遷とともに生活様式も変り、人間の考え方も変って、徐々に犯罪の傾向も変ってきた。その背景には身勝手で、他《ひ》人《と》の痛みがわからない人が増え、それが命の軽視につながって、安易に殺人が行われているのかも知れない。

私は「医は仁術なり」を全うした父のような医者になろうと志したのだが、いざ医者になったら、生きている人には縁がなく変死者の検死や解剖をする監察医になっていた。
思いもよらぬ選択であった。
しかし、法医学はおもしろく、そのなかに自分を完全燃焼させて生きてきた。そして六十になったのを機会に、監察医をやめたのだが、今度はもの書きやら法医学評論などをやらされたりして、これも予期しない方向へと、私の人生は動き出した。

今回「死体は生きている」の文庫化に当って思うのだが、正にタイトルと同じで『死』というテーマを通して、命の尊さ、いかに生きるべきかを訴えたいのである。
これからも自分を完全燃焼させながら、生きていこうと思っている。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(1)
100%
踩一下
(0)
0%

[查看全部]  相关评论