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死体は語る01

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:死者との対話私は医者になったとき、何科を専攻しようかと迷った。おかしな話であるが、医学部に入るときは、無我夢中でただ医者
(单词翻译:双击或拖选)
死者との対話

私は医者になったとき、何科を専攻しようかと迷った。
おかしな話であるが、医学部に入るときは、無我夢中でただ医者になれさえすればと、それだけを願っていたが、いざ卒業しインターンを終え、国家試験に合格してみると、さて何科を専門にして自立したらよいのかわからなくなっていた。
へき地で医者をしていた父は、何科の区別など全くない何でも屋であった。肺炎、結核、腸チフス、捻挫《ねんざ》、骨折、切り傷のほか、中耳炎、トラコーマ、はたまたお産まで昼夜の区別もなく、地域の患者は何でも診なければならなかった。重症者は、遠くの町の病院に送り込めばよい。いわば野戦病院のような感じであった。
そんな環境の中で育った私には、医者が一つの科だけを専門としなければならないなどとは考えられなかった。しかし、医学を知るにつれ、一つの科でさえマスターするのが大変なのに、オールマイティーに患者を診るなどありえないことがわかってくると、悩みは深刻であった。
内科は外側から患者を診察して、中の病気を予測し、治療をするので難しい。重箱の外側を触って中身が赤飯かぼた餅《もち》かを当てるようなもので、見方によってはかなりいい加減だ。
外科はどうだろう。もっと大ざっぱで、悪いところを切り取って捨ててしまうのである。これでは医者ではないような気もした。
いろいろ考えたが、自分に適した科は見当たらない。やはり趣味と実益をかねて、産婦人科でもやろうかと思ったりした。
それがどうだろう。
医者になったら、生きた人には縁がなくなってしまった。法医学を専攻したからである。
理由も目的もあまりはっきりしていないが、いきなり臨床医になって診療するよりも、それ以前の人間の問題として、生きるということの意義、そして死とは何であるのか、そんなことを勉強するのも、将来患者に接したときの自分にプラスになるであろうと考えたからであった。
「医者は商売ではない」と言っていた父も大賛成であった。だから臨床の経験もないまま、大学の法医学教室に入ったのである。将来は臨床医に戻るとしても、二〜三年研究生活を味わうのも決して無駄なことではないと思った。
動物を使って中毒や血清学的実験を四年ばかりやってみた。しかし、自分が期待していた法医学とは違っていたし、なんとなくかゆいところを着物の上からかくようなもどかしさを感じた。
やはり事件の現場に立って、検死や解剖をする実践法医学の方が、自分の性格に合っているような気がした。
東京都には監察医務院という事業所がある。異状死体(不自然死または変死)を検死したり、解剖して、死因が何であるのかを決定して、警察官の検視に医学的協力をし、社会の秩序を保つと同時に、公衆衛生の向上や予防医学に貢献するという役割をもつものである。
普通、患者は医師に咳《せき》が出る、熱がある、などと病状を訴え治療をしてもらうが、時として元気な人が突然死するようなことがある。周囲の人も、家族も、あるいは本人自身も、恐らく納得のいかない死亡であろう。病死なのか事故死なのか、あるいは自殺か他殺かと考えれば疑問は残る。
監察医務院は、この疑問に答え、もの言わずして死亡した人々の人権を擁護する、いわば死者の側に立った法医学のメッカでもあった。そこで私は、監察医務院の監察医になったのである。
以来この道にのめり込み、気がついたときには、もう臨床医に戻る気持ちなどはなくなっていた。
 幼女がはいはいしていて、石油ストーブにぶつかった。運悪く熱湯の入ったヤカンが彼女の背中に落ちて大火傷《やけど》を負った。救急病院で手当てを受けたが、一日足らずで死亡した。
母親は狂乱状態であった。担当医は火傷死という死亡診断書を発行した。父親は区役所に死亡届を提出しに行ったが、このような外因死(熱湯という外力作用による死亡)は一般の医師が診断書を発行しても正式のものとは認められず、受理されなかった。
法律があって、医師は警察に異状死体(変死)の届出をすることになっている。とくに監察医制度のある都内では、警察官立ち会いで監察医が検死をするのである。
なぜならば、治療に当たった医師は、死因は火傷死とわかるであろうが、どうして幼女の背中に熱湯がかかったのか、その理由まではわからない。家族や周囲の人の話を聞いて、医師が災害事故死などと死亡の種類まで決めてしまうわけにはいかない。
やはり他人の秘密に立ち入って調べることのできる警察官の捜査によって、どのような状況、原因があったかを調査しなければ、彼女の人権は擁護できないからである。
父親が区役所で受理されなかった死亡診断書を病院に持ち帰ってきたので、担当医も気がついた。すぐに変死の届出がなされた。
監察医は補佐を伴って検案車に乗り込んだ。運転手は都内の地理に明るい。混雑した道を避け、依頼のあった警察へ急行した。警察官に案内されて、病院の霊安室に入ると、遺体に目礼をした監察医補佐は、幼女の着衣をぬがせ、ぐるぐる巻きの包帯をほどきはじめた。
立会官の捜査状況を聞きながら、監察医の検死が始まる。火傷を見て驚いた。背中にまるい火傷があったからである。
母親は取り乱していて、詳しいことは聞き出せないが、ストーブにぶつかり熱湯の入ったヤカンが落ちた自己過失に間違いないというのだ。それならば熱湯は不整形に背中に散らなければならない。
状況と死体所見が違うのである。誰かが嘘《うそ》をついている。監察医の指摘によって、警察は捜査をしなおすことになった。
時間はかかったが、母親が自供した。知恵遅れの子供の前途を悲観した母が、過失をよそおって殺そうと、ヤカンの熱湯をかけたのであった。
家族の負担になっていた知恵遅れの次女。一家のためにも、本人のためにも、死んだ方が幸せであろうと、母は、自分本位に考えてやったのである。
しかし、悪事はうまくいかなかった。お湯の量が少なかったのである。熱湯は着込んだ幼女の着物に吸い取られて、流れ出なかった。まるい火傷はそのためであった。
母と子という関係にあるにせよ、加害者に対する被害者の必死の抵抗が、熱湯を決して流れ出させなかった。天の救いか、幼女の執念か。これが解決の糸口だったのである。
病院の医師は治療に専念しているから、そこまで考えは及ばなくても致し方はないにしても、変死の届出を忘れてはならない。幸いにも区役所の戸籍係がベテランであったがために、変死扱いになり、正規のルートで検死することになって、事件は解決した。
今の若い母親の中には、生まれてくる子が五体満足でなかったら育てる自信がないから、生かさないで欲しいと平気で医者に言ってくる者がいるというのである。自分本位で身勝手で、命を命と思わない。
なぜこうなったのかはさておき、監察医は臨床医とは全く逆の方向から、医学をみるのである。
まず死体がある。
なぜ死んだのかを調べていく。
やがて一つの死と、それにまつわるさまざまな事情がはっきりしてくる。
生きている人の言葉には嘘がある。
しかし、もの言わぬ死体は決して嘘を言わない。
丹念に検死をし、解剖することによって、なぜ死に至ったかを、死体自らが語ってくれる。
その死者の声を聞くのが、監察医の仕事である。
話をじっくり聞いて、死者の生前の人権を十分に擁護するとともに、多くの解剖結果から、健康であるための方法を生きている人のために少しでも還元することができれば、直接病人を癒《いや》すことができない私でも、医師としての使命を十分に果たすことができると思っている。
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