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死体は語る02

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:検土杖一月中旬ともなれば寒さは一段と厳しい。温暖な季節よりも、寒い季節の方がはるかに変死の数は多くなる。とくに高齢者の突
(单词翻译:双击或拖选)
検土杖

一月中旬ともなれば寒さは一段と厳しい。温暖な季節よりも、寒い季節の方がはるかに変死の数は多くなる。とくに高齢者の突然死が増えるからである。
監察医の仕事は盆も正月もない。連休で病院や開業医が休診のときなどは、診てもらう医者がいないので変死扱いになるケースが多く、ことのほか忙しい。
そんなある日、私は警視庁捜査一課の刑事さん二人の訪問を受けた。警察官の検視に医学的知識で協力するのが監察医の役割でもあるから、検死の現場では、当然法医学的な質問を受けることになる。時には北海道や九州などからも、警察電話で質問を受けることがある。眼瞼《がんけん》結膜下に溢血点があっても病死でよいか、病死とすれば死因は何が考えられるか、など高度な質問が多い。
それも、そのはずである。変死体に直面して、これをどう判断すべきか。判断いかんによっては単なる病死か、あるいは殺人事件にもなりかねないからである。岐路に立たされた責任ある警察幹部検視官の苦悩が電話越しに伝わってくる。
しかし、今日の質問は違っていた。二人の刑事は真黒に日焼けしていた。
「実は、女子大生殺しの担当の者です」
「八王子の別荘周辺に死体を埋めたとの判断で、そのあたりを掘り返しているのですが、半年を過ぎても、遺体は見つからないのです」
とくに、十二月に入ってからは冷え込みが厳しく、関東ローム層が二〜三〇センチにわたって凍りつき、とても掘るどころではないというのである。両手をひろげて、豆だらけのぶ厚い手のひらを見せてくれた。
事件というのは、ある大学の大学院の女子学生が妻子ある助教授と恋仲になった。妻子と別れて結婚するとの約束になっていた。しかし、実現はしなかった。
男にとって、妻子と別れるということは、そう簡単なことではない。肉体関係を続けるための口実にすぎないとみるべき場合が多いものだ。話はもつれ、彼女は必死に妻の座を要求した。要求すればするほど、男にとっては女の存在はうっとうしくなる。
その年の夏休みに入って間もない七月のなかごろから、彼女は行方不明となった。実家には「二週間ほど旅行に出ます」との自筆の手紙が届いていた。しかし、このとき彼女は殺されていたのである。
助教授はいろいろなアリバイ工作を行っていた。その反面、大学の親しい友人に、大変な方法でケリをつけたことを告白していた。良心の呵責《かしやく》にさいなまれ、強度の精神不安に襲われていた。
夏休みが終わって、新学期が始まろうとしていた九月の上旬、伊豆半島の石廊崎で助教授一家四人の心中死体が発見された。
女子大生殺人事件は、皮肉にも助教授一家の心中が報道され、その動機を取材中に、恋のもつれから助教授が教え子を殺したことがわかったのである。つまり事件がすべて終結した時点で発覚し、捜査が開始されたのである。
しかし、関係者が語っているように、果たして女子大生は本当に殺されているのか否か、定かではない。遺体は発見されないままである。
大学という環境、そして助教授と女子学生の愛憎、殺人、一家心中と舞台背景にこと欠かない。ショッキングな内容であったから、世間の関心はとくに大きく、マスコミの格好のえじきになって、こと細かく報道され続けた。しかも、彼女は二ヵ月も前に殺されているというのである。
警視庁は捜査本部を設けて、遺体発見に乗り出した。犯人が逃亡中の事件と違うので、捜査員の数は少ない。殺して埋めたら発見できないのかと、警察も言われたくないのだろう。刑事の気迫というか、執念がその手のひらに感じられた。
半年間、遺体の捜査をしてきたがまだ見つからない。別荘周辺を掘り尽くした苦労と、焦りがあった。しかも、発掘捜査も地面が氷結したため、春まで延期せざるを得なくなった刑事さんたちは、やむなく小休止し、春からの捜査方法を検討中であった。
遺体発見に何かよい方法はないか、というのが私を訪ねた理由であった。検死や解剖についての質問であればともかく、監察医に地下に埋められた死体の発見方法を聞きにきたのである。
私は以前、腐敗の研究をしたことがあったが、一瞬これは難しいと感じた。しかし、口には出さなかった。逆に、私は全く別の話を始めてしまったのである。
「別荘の周りには、遺体はないと思うのだが……」
突然の言葉に刑事さんは、戸惑いと反発を覚えたに違いない。自信をもって捜査を続けてきた二人にとっては、当然のことであろう。
「一生懸命発掘しているお二人を前に、無責任な発言でお叱りを受けるかも知れないが、参考までに聞いてください。──私は水の中、湖底だろうと思っているのです」
「え! 湖ですか」
「そうです」
私はこの事件が報道されたときから興味をもち、自分なりに推理していた。湖底であるとの考えには、二つの理由があった。
まず、犯人一家は入水心中をしているので、犯罪心理学的に考えて、殺しも水の中ではないだろうか。愛人を水で殺したから、自分も水に帰るつもりになったと考えられないか。一家心中するのに、わざわざ石廊崎まで行って崖《がけ》から海に飛び込まなくても、安易な方法はいくらでもあるはずである。
もう一つの理由は、天下の警視庁が半年も別荘の周りを探しているのに、発見できないのは、遺体はそこにないからであろう。
「別荘周辺ではなく、やはり深い湖の底にでも沈んでいるのではないかと……」
「先生、それは違います」
話が終わるのを待ちかねたように、刑事は私の推理を否定した。二人は自信に満ちた顔つきであった。
遺体を埋めた場所は、別荘周辺以外には考えられないことを、捜査の経過から割り出していたのである。それは推理小説の謎《なぞ》解きのような理論の飛躍も、華麗さもない。
夏休みに入って間もない七月中旬、女子大生と助教授は一緒になるか、別れるか、最後の結論を出す約束で、京都旅行を計画していた。午後四時、新幹線下り「ひかり号」に乗る予定で、二人は東京駅のホームで待ち合わせた。しかし、新幹線には乗らなかったのである。
結ばれるか、別れるか。いずれにしろ結論が出る京都旅行を、彼女は待ち望んでいた。それを中止し、東京駅から突然、相模湖なり芦の湖行きに変更される理由は、彼女の側からは考えられないことである。
観光旅行でも新婚旅行でもない。女の将来を決める重要な意味のある旅行を、いとも簡単に行先変更に応ずるはずはない。それなりの理由がなければ、京都行きは中止されないのである。
助教授は、恩師の教授の八王子の別荘を借りて彼女としばしば会っていた。教授も成り行きを心配して、何回となく相談にのっていた。
助教授は教授の別荘で、教授にも話に加わってもらい、納得のいく結論を出そうと彼女を説得し、半ば強引に京都行きを変更させたと推理するのが妥当であろう。京都行きの二枚の切符が、使われないまま、研究室の助教授の机の中から発見された事実は、何を物語っているか。どうしても別荘に向かったとしか考えられないのである。
この結論は、別荘周辺から彼女の靴の片方が発見されたり、その他の捜査状況とも一致し、理屈などではなく、状況証拠の裏付けがあったのだ。
説得力のある話の展開と、その気迫に、私の頭の中の遊びのような推理などは、いっぺんに吹き飛んでしまった。
結局、別荘周辺を掘り返す話に戻った。刑事さんの質問に答えねばならなくなった。人間が死ぬと、徐々に腐敗が始まる。夏と冬とでは腐りの速さが全く違う。東京と大阪でも、腐敗の進行度に大きな違いがある。同じ部屋でも日当たりのよい場所、悪い場所でかなりの差が生じ、また太った人とやせた人でも違ってくるので、腐敗の基準はない。ケースバイケースなのである。そこに、死後変化の難しさがある。
かつて、カスパーという学者は、空気中に置かれた死体の腐敗の進行度を1とすれば、水中死体の腐敗度は二倍遅くなり、土中に埋めた場合は八倍遅いと報告している。とはいえ、必ずしもこれにあてはまる死体ばかりではない。
いずれにせよ、彼女は土中に埋められ半年間、東京の八王子で夏、秋、冬と三つの季節を過ごしていることになる。
一般的には、腐りはじめは酸化作用が強く、酸性腐敗となってガスが発生し、死体は土左衛門といわれるようにふくれあがる。そのうちに体のたんぱく質が分解して組織が融解し、腐敗液汁が流れ出すと、アルカリ性腐敗に変化し、その悪臭は一段と強くなる。
しかし、土中に二〜三〇センチ埋められていると、腐敗臭は地上に上がってこない。犬を使う方法もあろうが、警察犬は人間の腐敗臭について訓練を受けていないので、覚えさせるには数年かかるという。たとえ訓練ができても、土中に二〜三〇センチ埋まっていれば、犬の鼻も役立たない。
私も池の鯉《こい》や金魚が死んだとき、実験したことがある。深さ五センチ、一〇センチ、二〇センチと穴を掘り魚を埋めておく。近所の猫がやって来て、五センチの深さに埋めた魚は掘り返して食べてしまうが、一〇センチ以上になると、臭気は地下に密閉されるのだろう、その上を猫も気づかず通過してしまうのである。
「先生、探知機のようなものはないのですか」
臭《にお》いは音などと違って簡単に数量化できないものの一つである。悪臭公害も結局は、数量化できないので、取り締まりにくいといわれている。つまるところ、アルカリ性腐敗臭を人間の鼻で嗅《か》ぎ分ける以外に方法はない。
スコップで土を掘り返すよりも、パイプを土中に打ち込み、抜き取った穴の中の臭いを嗅ぐか、パイプの中の土の臭いを嗅げば、地面が氷結していてもできないことはない──と話をした。
探知機はこの鼻か、と刑事さんは、自分の鼻をつまんで笑った。
それから一ヵ月半たった、ある寒い朝早く、私は電話で起こされた。
「先生、私です。ありがとうございました。おかげ様で見つかりました」
聞き覚えのある刑事さんのはずんだ声であった。ニュースは女子大生の遺体発見を大々的に報道していた。
「執念の捜査七ヵ月」
「別荘裏、地下五十センチ」
「腐敗臭をつきとめた検土杖」
と見出しは派手であった。
大手柄の二人の刑事さんの写真も載っている。
犯人は死亡し、目撃者もいない。
殺して埋めたらわからないといわれた難事件も、春を待たずに解決した。
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