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死体は語る07

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:死者は雄弁である日比谷公会堂で、三党首演説会が開かれていた。自民党総裁池田首相の演説が終わり、社会党の浅沼委員長がダミ声
(单词翻译:双击或拖选)
死者は雄弁である

日比谷公会堂で、三党首演説会が開かれていた。自民党総裁池田首相の演説が終わり、社会党の浅沼委員長がダミ声をはり上げて、演説中であった。民社党の西尾委員長も壇上に控えていた。私は途中からではあったが、次の検死の待機をしながら、監察医室でテレビを見ていた。突然、観客席から舞台にはい上がり、委員長めがけて突進していく男があった。短刀のようなものを持って、委員長に体当たりをした。それから小一時間後、警察から検死の緊急依頼が入った。いうまでもなく、浅沼委員長の検死である。
歴史に残るような大事件を、突然担当することになった緊張と興奮、さらにテレビとはいえ目撃した事件を検死するなど、初めての体験であり、考えられないことが現実となって、驚くべき映像の時代になったものだと、たかぶる感情を押さえながら、現場へ急行したのを覚えている。
テレビは繰り返し、事件を放映していた。犯人と格闘した場合と違って、防御創がないことなどから、テレビの映像そのままに、ほとんど無抵抗の状態で刺殺されたことがわかり、検死の際に大いに役立った。
これまでの事件と異なり、犯人も現場で取り押さえられ、日本中の人が犯行の一部始終を目撃したといってもいいような、珍しい事件でもあった。
このようなケースは例外中の例外で、ほとんどの場合、目撃者などない事件である。したがって、捜査も難航する。
 渋谷の街角で、サンドイッチマンがプラカードを持ったまま後方へ転倒した。繁華街の宵の口、目撃者は多い。靴屋の店員も見ていた。酔いどれサンドイッチマンといわれている街の名物男であった。
間もなく救急車が来た。大げさだ。放って置いても平気なのにと思っていたが、担架に載せられ男は病院に収容された。左側頭部に小さな打撲傷があるだけで、手当てはすぐに終わった。
大学の経済学部を出たと自称するその男は、酒臭く大声でわめきちらすので、病院でももてあまし、すぐに警察に引き渡された。大トラ状態なので、放置するわけにもいかず、一応酔っぱらい保護所に移送することになった。一夜明けると大トラたちは、われにかえって行状を詫び解放されるが、男はまだ大いびきをかいていた。
見ると小便をもらし、様子がおかしいので、再び救急車で昨晩収容された病院へ逆送された。そのときには昏睡状態で、右眼窩《がんか》に淡青藍色の皮下出血があり、レントゲン検査では左側頭部に亀裂骨折が発見されていた。開頭手術が予定されたが、午後になって容体は急変し、死亡したという。
このいきさつを病院の一室で院長と立会官から聞き、死因と思われる頭部外傷は、街で倒れたときのものか、それとも酔っぱらい保護所で生じたものかを考えながら、検死を始めた。
死斑も死体硬直も中等度である。眼窩結膜下に溢血点はない。舌は上下歯列の後方にある。
異常所見としては、左側頭部頭皮に鶏卵大の腫脹《しゆちよう》があり、毛髪を分けて観察すると、軽度の打撲傷があって、マーキュロが塗布されている。右眼窩は淡青藍色に腫脹し、皮下出血を生じていた。また、口唇粘膜には小さな挫創があった。
警察では大事をとって、検視官を現場に派遣し、念入りな捜査と検視をすませていた。外傷に対しては、泥酔のために倒れたものとの見解をとり、目撃者である靴屋の店員ほか二名の証言までとって裏づけていた。
なるほど、頭部外傷は酔って倒れてもできるだろう。しかし、顔面の外傷は眼窩という顔の中では一番陥凹《かんおう》した部分であり、路面に倒れたとするならば額部や頬部、鼻の先端あたりの突出したところに擦過傷ができるのが普通で、眼窩に外傷は生じない。また泥酔者が転んだとするならば、手足や膝《ひざ》などにも擦過打撲傷があってもよさそうだが、そこに外傷はない。納得がいかない。
着衣を見せて欲しいと言ったが、酔っぱらい保護所で着換えさせられていて、服はそこになかった。刑事さんの話では、泥土などの付着はなく、そんなに汚れてはいなかったという。
とくに、右眼窩の皮下出血には擦過傷を伴っていないので、路面などの転倒ではなく、比較的柔らかい物体の作用が考えられ、手拳などによるナックルパンチの方が、死体所見に合致する。
遺体を前にして監察医と立会官のディスカッションが続いた。積極的な殺しの線はなかったので、とりあえず警察官立ち会いで行政解剖をすることになった。頭部にメスが入り、頭蓋が開けられると、左側頭部に亀裂骨折があって、そこに脳硬膜外血腫二〇〇グラムが見られた。死因は疑いもなく、脳硬膜外血腫のための脳圧迫であった。右眼窩の皮下出血には小さな骨折を伴っていた。手拳のような柔らかい物体が、そこに強く作用したのであろう。そのため、男は左後方に倒れ、左側頭部を骨折し、徐々に出血して脳硬膜外血腫を形成し、死に至ったのである。
最初は、頭部の打撲傷とその痛みだけであるから、大したケガでもないように見える。ところが、頭蓋骨に亀裂骨折などがあると、二〜三時間後血腫が五〇グラムくらいたまってくる。すると、その分だけ脳は圧迫されてほろ酔いと同じように、歩行がふらつくのである。飲酒している場合は酒臭いので、ふらつき歩行は、酔いの症状と重なって区別はつけがたい。それまでは普通の行動がとれるから、帰宅して寝てしまうなど、現場から遠く離れていることが多い。半日くらいたつと、血腫の量も増えて一五〇〜二〇〇グラムに達し、死亡する。
そのときには一夜は明けているから、酔って帰ってきて寝たが、朝起こしに行くと布団の中で死んでいる、というようなわけで、急病死のようでもあり、死亡原因は皆目わからない。よしんば、頭部外傷であったとしても、時間と足どりをさかのぼっての捜査は難航する。
男の血腫は凝血で、一日くらい前のものと推定され、保護所での受傷は否定された。生前男が暴れ、わめいていたのは泥酔だけのせいではなく、脳外傷のためでもあった。結局、解剖所見をたよりに一日前の足どりから捜査したところ、左利きのサンドイッチマンを逮捕することができた。目撃者のいう自己転倒の数時間も前に、酔って同僚にからみ、殴打され路上に転倒、受傷していたのである。
酔いと頭部外傷の症状が重なって、はた目には酒臭いので酔っぱらいとしか映らない。ふらふらしながら、プラカードを持って街角までやって来て、目撃されたように転倒したのであった。本当の致命傷は、その数時間前のけんかである。けんかの現場は加害者と被害者の二人きりで、加害者は口を閉ざし、被害者は死亡。目撃者はいなかった。しかし、この事件は死体所見が、目撃者同様、事実を語ってくれたのである。
 このように、行政解剖によって殺人事件を発見することもある。監察医の仕事は、遺体を含めて残された資料を検討し、生前の状態から死に至るまでの経過を解明する。新聞に、
「主婦メッタ刺し」
「強盗か」
と大見出しで報道されていた。
はやる心を抑えながら検死をすると、首から胸、腹へと果物ナイフのようなもので刺創が二十数ヵ所もあり、出血多量で死亡していた。無残な姿である。
よく見ると、首や胸の刺創五〜六ヵ所には、出血を伴った生活反応(生前の外傷)があるが、その他の刺創には出血はなく、創口から黄色い皮下脂肪が見え、生活反応のない死後の刺創であることが歴然としていた。
しかも、犯人と格闘したような防御創もないので、不意打ちに首や胸を刺され、致命傷を受け、無抵抗状態で倒れているところを、胸腹部をメッタ刺しにされたものと推測された。
強盗ではない。こんな弱い強盗はいない。テレビを見ていてもそうであるが、剣の達人は、一刀のもとに相手を倒し、死を確認もせず刀を鞘《さや》に納めて颯爽《さつそう》と画面から消えていく。
弱い者はそうはいかない。首尾よく相手を倒しても、もしも相手が起き上がれば自分がやられてしまうという恐怖感におののき、何度もとどめを刺すのである。結果として惨殺死体になる。
目撃者はいないので、はっきりしたことはわからないが、このメッタ刺しの死体を見て、怨恨《えんこん》と考えるよりも、犯人は殺された主婦よりも弱者であろうと直感する。体力的、年齢的あるいは社会的にも、弱者であろうと推理する。
翌日の新聞には、
「夫の愛人、小娘逮捕」
と決着がついていた。そして、女性の残忍性や怨恨などについても論評が出ていた。
しかし、私はそうは思わない。残忍なるが故に、メッタ刺しにしたのではない。そのことを死体は如実に語ってくれている。
死人に口なしというが、死者は目撃者でもある。丹念に死体観察をすることによって、死者は語りだす。事実が明らかになり、犯人像まで浮かび上がってくることもある。
考古学者が一つの土器から時代考証をするのと同じである。
死者ほど雄弁なものはない。
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