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死体は語る17

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:ミカン検死というものは、身内の人々の悲嘆に暮れるかたわらで行うことが多く、ときには号泣やすすり泣きが聞こえてくる。慣れは
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ミカン

検死というものは、身内の人々の悲嘆に暮れるかたわらで行うことが多く、ときには号泣やすすり泣きが聞こえてくる。慣れはあっても、心情的に穏やかではない。
とくに、子に先立たれた母親の嘆きは、見るにしのびない。事故で亡くなった幼な子を抱きしめて、
「もう一度、ママと呼んで」
と叫ぶ母の姿を見たときなどは、息が詰まり、胸が引き裂かれる思いである。冷静に検死をする立場にありながら、ついその情景の中に引きずり込まれてしまう。
あるアパートの一室に案内されたときのことである。三十前後の母親が、たたんだ布団によりかかっていた。一歳を少し過ぎたと思われる幼児が、胸に抱かれて乳を飲んでいる。
部屋を間違えたのかと思って、立ち会いの警察官の方を見ると、直立したまま幼児を見すえて口をわなわなと震わせている。検死の対象は、その母親であったからだ。母の死を知るよしもなく、無心に乳を吸う幼児の姿に、私たちはわれを忘れて、涙してしまった。
監察医は、人の死にかかわって仕事をしているので、それなりの覚悟はできているが、このようなケースに出会うと、運命とはいえ、あまりにも過酷でぶっつけようのない憤りを覚える。
ある日、三件の検死を終え、四件目の事件に向かって検案車が走っているときのことであった。運転担当の職員が、車を道路わきに寄せて止まってしまった。年はくっているが、医務院に転勤してきて一年足らずの運転手である。現場から現場へ、車は急行するのが常であったが、そういえば少しのろのろ運転であった。
車の調子でも悪いのかと思ったが、私はだまっていた。しばらくして、
「先生、少し待ってください。すみません」
と恐縮したような口調で、ハンカチを取り出し、目をふきながら、
「涙があふれて、前がよく見えないもんで。すみません」
と言うのである。
今、やり終えた検死のことを思っているのだろう。母子家庭で、母親が急病死したケースであった。残された男の子と女の子は、中学生と小学生くらいであった。歯をくいしばって、検死が終わるのを待っていた。
葬儀のこともあろうが、今後の生活をどうするのか、子供のことが心配であったから、立ち会いの警察官に、民生委員とよく相談して善後策を講じて上げてくださいよ、とお願いした。警察官は、わかりました、まかせておいてくださいと言わんばかりの、力強い返事であった。私たちは、次の検死に向かわねばならないので、
「あとのことは、刑事さんに頼んであるから、心配しないでいいからね」
「元気をだすんだよ」
と言って、二人の頭をなでて、その場を立ち去った。
検案車には、監察医と補佐と運転手の三人が乗っている。しかし、誰もが口を開こうとはしない。重苦しい雰囲気の中、車のスピードも上がらなかったのである。
「私にも同じ年ごろの子供がいるもんで。つい、こらえきれなくって……」
そう言いながら運転手は、気を取りなおし、車は再び走り出した。
 ある年の暮れのことである。東京都監察医務院長宛に、宅配便が届いた。開けると、ミカンに手紙が添えてあった。
「監察医務院の名称は存じておりましたが、よもやわが身にとって終生忘れ得ぬところとなろうとは、思いもよらぬことでした」
との書き出しで、文章、筆跡から教養のある婦人と推察された。
「親はなくとも子は育つといわれますが、年老いて一人息子に先立たれた親は、どうなるのでしょうか。生きるすべとてありません。この一年余の間、一日とて涙の乾いた日はありませんでした。その中で、ただ一つ救われましたことは、最後にお世話になった医師が、心優しく立派な人格のお方であったことでした。死者は二度と戻ってまいりませんが、それだけが私の心を慰めてくれています。本当にありがとうございました。私どもの住んでいる、すぐ前の畑のミカンです。立派なものではありませんが、お召し上がりください。
院長様」
とあった。差出人は、「伊東市仲尾」とあるだけで、あとはわからない。記録をさかのぼって調べたが、該当者は見当たらない。宅配の会社に問い合わせたところ、取り扱い店から、近所では見慣れない年配の婦人が依頼に来たということだった。その周辺を、警察を通じて調べてもらったが、わからずじまいであった。職員を代表して書いた礼状も、当然戻ってきてしまった。
十数日後の御用納めの日に、一年のしめくくりとして、この手紙を全職員に紹介した。死者の身内をいたわって仕事をしている職員の心遣いが何よりもうれしかった。みんなでいただいたミカンが、甘く酸っぱく、身にも心にも深くしみわたった。
母が子を思う気持ちには、理性を超えた本能のようなものを感ずる。
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