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死体は語る19

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:個人識別漁船員たちは驚いた。マグロ漁船が漁獲したヨシキリザメの腹を開けたところ、胃の中から人間の右手が出てきたのである。
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個人識別

漁船員たちは驚いた。マグロ漁船が漁獲したヨシキリザメの腹を開けたところ、胃の中から人間の右手が出てきたのである。太平洋上、八丈島沖東南方五〇〇マイル海上の出来事である。
その夜は供養が行われ、右手は船長の判断で、船の冷凍室に保管された。それから二十三日目、マグロを満載した漁船は東京港に入港した。
いうまでもなく、右手は東京水上警察署に届けられた。人体の一部分でも変死体と同じように扱われる。とくにバラバラ事件のときなどは、その一部分がいかに重要であるかは説明の必要はないであろう。私は警察署長から、右手の部分検案と鑑定を依頼された。
以前、国鉄の日光号という電車の車体下にへばりついていた足を鑑定したことがあった。その片足はミイラのように黒く乾燥していた。ミイラは永久死体といわれ、乾燥したまま変化せず、ほぼ永久に維持される死体現象をいう。日本のような湿気の多いところでは、自然に乾燥してミイラ化するようなことはほとんどない。その前に腐敗して軟部組織が溶解し、白骨化してしまう。
この片足は電車の車体にへばりつき、長時間疾走していたため乾燥、ミイラ化したのである。東京と日光の間を走る限られた範囲での列車事故を調べてもらったところ、半年前に飛び込み自殺があり、片足が見つからなかった中年男性の記録があった。鑑定の結果は、その男の年、背格好、血液型、その他がほぼ一致し、解決した経験がある。
それに比べると今度の鑑定は、かなりの困難が感じられた。太平洋という特殊な環境では、その人が日本人であると初めからきめつけるわけにもいかない。人種の別、男女の区別、年齢の推定、そして右手が離断されたとき、その人は生きていたのか、死んでいたのか、死後経過時間、血液型、その他いろいろな事項について考えなくてはならなかった。
つまり法医学でいう個人識別である。一般には指紋が最良の個人識別になるといわれている。それは万人不同、終生不変という生物学的特徴があるからなのである。しかし、指紋が採取されないこともあり、採取されても警察に登録されていないと、身元の割り出しは容易ではない。
犯罪捜査には“八何《はつか》”の原則というのがある。いつ(時間)、どこで(場所)、誰が(犯人)、誰と(共犯)、何ゆえに(動機)、誰に対し(被害者)、いかにして(方法)、いかにした(結果)という八何が明確にされなければならない。いうまでもなく、検死の対象者が誰であるのかをわからせなければ、事件は解決しない。
日航機が群馬県の山中に墜落したときなども、個人識別に大変苦労したと聞いている。死体に見られる損壊は言語に絶するものがあって、顔で識別できた遺体はほんの一割程度で、あとは指紋、歯型、身体的特徴(ホクロ、手術痕など)、着衣などを参考にしたという。
漁船が持ち帰った人間の右手は、サメの胃の中にあったというだけに、ぬるぬるしていた。中指は根元からちぎれたように欠損している。手のひらや甲には切創や裂創のような傷がいくつもあり、サメの歯で噛んだり、食いちぎったようであった。しかし、全体としてはそんなにくずれた形にはなっていない。
とりあえず、その状態を写真におさめ、レントゲン写真をとったり、指の指紋をとった。また、離断されている手首の関節の部分と、手のひらの大きな切創の一部を取り出し、組織標本を作った。顕微鏡で観察するためである。
人体の一部分から、人種の別を判断するのは容易なことではないが、中手骨や指骨の長さは西洋人よりも日本人の長さに近く、指紋の形、指紋示数は東洋人に近かったので一応、日本人と考えた。
また、性別は皮膚や爪が厚く筋肉、腱《けん》の発育がよい。そして指の骨の長さを測って比べてみると、女の値よりも男の値に近いほか、骨の発育、骨格などを総合すると、どうしても男であった。
しかも、ペンダコがなく、手のひらの皮膚も厚いので、肉体労働者のように思われた。顕微鏡で組織標本をのぞくと、血管の内膜に肥厚があり、中膜には線維化があって、中等度の動脈硬化が見られた。
レントゲン写真には、骨端の化骨は完成してすでに成人に達しているが、老人のような骨構造の消失透明化などは見られないので、五十歳前後のように思われた。しかし、個人差があるから必ずしもそれが当たっているとは限らない。
離断部や切創、裂創の部位を肉眼的に観察すると、刃物で切ったように鋭利には切れていない。やはりサメの歯で噛んだり、食いちぎったような傷であった。
顕微鏡で傷の部分をみると、筋線維の断裂があるが、組織内に出血などは見当たらない。もしも生きている人が、このような傷を受けたとすれば、必ず出血が伴うものである。そして血球が血管周囲の組織の中にも、にじんでいなければならない。
この所見を生活反応があるといい、死んだ人に傷をつけてもそのような変化は起こらないから、生活反応はないと表現する。右手には生活反応はなかった。
とすると、男は死体となって漂流中、ヨシキリザメに右手を食いちぎられたことになる。ぬるぬるした手は、透明な粘液で覆われ、手のひらには漂母皮形成があって、長い間海につかってしわだらけになったことを思わせた。顕微鏡でみると、表皮は脱落しているが、真皮の汗腺には核が見られ、血管のところどころに腐敗菌が入り込んでいる。
これらの所見から考えると、手の表面の組織はサメの胃の消化によって、ある程度冒されてはいるが、やや深いところではその影響は少なく、汗腺などは比較的よく保たれているので、サメの胃に入ってからそれほど長い時間はたっていないようであった。
死体漂流二〜三日、サメに食われて一日以内の経過と推定した。また筋肉の一部を取り、血液型を調べたところO型であった。しかし、男の死因についてはその右手だけからでは、わかりようがない。私の鑑定もここまでである。
警察では鑑定結果に基づき手配し、身元の割り出しをするが、結局わからずじまいであった。その年の暮れに、ニュースにならなかったニュースとして、ある新聞社が取材したりしたが、それにも何の反応もなかった。
このように多くの人々の手をわずらわし、検索を重ね、個人識別をして身元の割り出しに努めるのも、死者の人権を擁護するためなのである。
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