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死体は語る23

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:ネズミモチ医学の分野には、ネズミモチという名称や用語は、どこを調べても出てこない。二十数年も前のことである。法医学会に出
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ネズミモチ

医学の分野には、ネズミモチという名称や用語は、どこを調べても出てこない。二十数年も前のことである。法医学会に出席した際、ある事件を担当した大学の先生から、このネズミモチの話を聞いた。
家へ帰り早速調べてみると、『広辞苑』にモクセイ科の常緑灌木《かんぼく》とある。西日本などの暖地に自生し、庭木や生垣として栽植され、四〜五月ごろに花が咲くという。特性として、種子は土中から発芽するまでに二年かかる植物であることがわかった。
昭和三十八年三月末の夕方、四歳の男の子が行方不明となった。東京の下町のことである。警察には迷子として届け出されたが、見つからなかった。誘拐の疑いがもたれ、極秘のうちに捜査は開始された。
二日後、家族に電話が入った。案の定、身代金五十万円を要求してきた。「場所はあとで指定する。子供はそのあと返す」という内容であった。その後、何回となく指定場所を変え、「警察に通報すると子供の命はないぞ」と、脅迫の電話が続いた。この事件は結局、五十万円を持ち去られ、子供は帰らなかった。
しかし、二年四ヵ月後の七月、ついに犯人を逮捕した。子供は誘拐したその夜のうちに絞殺し、近くの寺の墓の中に捨て、隠した。自供に基づき、捜査員が墓石を取り除くと、骨壺のかたわらに変わりはてた子供の死体が発見された。
死後変化がひどく、個人識別もできない状態であった。ただ子供の口の中から、一〇センチほどの植物が三本芽を出していた。これがネズミモチである。
墓地での犯行の際、ネズミモチの種子が子供の口の中に入ったのであろう。それから二年と四ヵ月後に発見された遺体の口の中で、ネズミモチが発芽していたのである。犯人の自供が嘘《うそ》ではないことを、この植物が実証していた。事件の本筋から外れた一粒の種子であったが、事件を振り返ると、実に大きな意味をもっていたことに気がつく。
ひき逃げ事件などでもそうであるが、現場のブレーキ痕、着衣に付着した車の塗料、タイヤマーク、破損した車の備品の一部などから加害車両を特定することも可能であり、現場検証の重要さが理解できる。
溺死の場合にも同じようなことが言える。気管や肺に水を吸い込んで窒息するのが溺死である。この水の中には、水中微生物であるプランクトンがいる。溺れている間に水とプランクトンは、肺の血管から体に吸収されて、全身を循環する。その際、プランクトンは肝臓や腎臓などにひっかかる。解剖して、肝や腎などから多くのプランクトンを検出できれば溺死と診断する。
殺して水中に死体を捨て、溺れたように見せかけた場合には、肺に水の流入があって、一見溺れたように見えるけれども、血液循環は停止しているので、プランクトンは体に吸収されていない。そこで本当の溺死とは区別がつく。
さらに、臓器内のプランクトンの種類がわかれば、溺れた場所(川、池、海などの一定の区域)を特定することができるとさえいわれている。東京湾での浮遊死体を解剖し、種々検査してみたところ、川で入水自殺したものが、海へ流れ出たことがわかった事例もある。
ネズミモチにしろ、プランクトンにしろ、医学以外のものである。この医学に無縁なものが事件解決に大きな役割を果たしている場合が多々ある。しかし、なんでも利用し応用する、この自然科学が私は好きなのである。
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