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死体は語る24

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:木口小平小学校一年のとき教わった修身の教科書に、キグチコヘイハテキノタマニアタリマシタガ、シンデモラッパヲクチカラハナシ
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木口小平

小学校一年のとき教わった修身の教科書に、
キグチコヘイハテキノ
タマニアタリマシタガ、
シンデモラッパヲ
クチカラハナシマセン
デシタ。
というのがあった。
日清戦争の折、隊長の突撃命令で木口小平の吹く突撃ラッパを合図に、全隊は塹壕《ざんごう》を飛び出し、銃剣をかざし鬨《とき》の声をあげて、敵陣めがけて突入した。
戦いが終わり戦場を見渡すと、木口小平は敵弾に倒れ、戦死していた。しかし、彼は口からラッパを離そうとはしなかった。一ラッパ兵の武勇が絵入りで載っていた。君たちも大きくなったら、木口小平のように勇気と責任のある人間になれよと、教わったのである。
大きくなって、医学部に入った。時代は変わって、軍隊はなくなっていたが、法医学の講義の中に木口小平が突然出て来たのである。口からラッパを離さなかったのは、勇気でも責任でもなく、死体硬直という化学的現象で説明されたのである。講堂は爆笑した。
衣川の弁慶の立ち往生も同じことである。一般には、死ぬと神経は麻痺《まひ》するから、筋肉は弛緩《しかん》して緊張は取れ、ぐったりする。二時間ぐらいたつと体は化学反応のために徐々に筋肉が収縮硬化し、関節が動かなくなってくる。これが死体硬直といわれるもので、筋肉内のグリコーゲンの減少、乳酸の増加に伴うアデノシン三燐酸活性の低下などが関与し、徐々に筋肉が硬化してくる現象である。二十時間ぐらいで、硬直は最強度となる。
ところが、スポーツ中の急死のように筋肉が疲労状態にあると、これらの化学物質が強く速く反応して、硬直は死亡直後に出現する。これが木口小平であり、弁慶の立ち往生なのである。
手に雑草を握ったままの漂流死体が発見されたことがある。犯罪の可能性もあるのではないかと、警察は慎重な捜査をしたところ、花を摘みに行き岸辺で滑り、雑草につかまったがちぎれて川に落ち、溺れたものとわかった。土手に滑った跡があり、家族の話とも一致して事件にならなかった。死体硬直は疲労した筋肉に早く、強く出現するものである。
死体硬直は、体に腐敗が始まると徐々に緩解していく。一種の化学反応であるから体格、外気温その他死体の置かれた環境などによって左右され、一定しない。検死の際、死斑や死体の硬直の状態を観察して、死亡時間を推定しているが、なかなか正確な時間を言い当てるのは難しい。
坊さんがお経をあげたら、硬くなっていた遺体が柔らかくなって成仏でき、ありがたがったという話を聞いたことがある。このように、死んだ人が一度硬直を起こし、やがて解けて柔らかくなる一つの死体現象に武勇が入り、責任が入り、そして宗教が入って話がうまくまとまると、あらぬ方向へと事は運ばれる。こんな話を作った人は、社会の手品師とでもいうのだろうか。いずれにせよ、このような手品には引っ掛かりたくないものである。
ことわざに、
ゆうれいの正体みたり枯尾花
というのがある。こわごわ見直したら、枯れすすきであったというのであろう。検死の現場に要求されるのは、この冷静な観察と判断なのである。
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