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死体は語る36

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:嘘ある夏のこと、仕事から帰った夫がビールを飲んだ。間もなくウーッとうなって倒れ、意識を失った。妻はすぐ救急車を呼び、病院
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ある夏のこと、仕事から帰った夫がビールを飲んだ。間もなくウーッとうなって倒れ、意識を失った。妻はすぐ救急車を呼び、病院に収容した。普段血圧が高く、近くの医師にかかっていた。脳溢血に違いないから、早く治療をしてくれるようにと妻は訴えた。しかし、一時間足らずで夫は死亡してしまった。
医師は初診の患者が急死したので、死因は果たして妻の言う脳溢血なのかどうか、診療時間が短いので、わかりかねるとして、警察に変死届けをした。正しい判断であった。
警察官立ち会いで監察医の検死が行われた。急病死のようであるが、遺体の外表所見から病名を特定することはできなかったため、監察医務院で行政解剖することになった。
病死だろうと思って解剖したところ、意外や胃の中から青酸が検出されたのである。解剖室から直ちに警察に連絡がとられ、捜査は振り出しに戻った。
三日後、その家の使用人が事件の全ぼうを供述した。酒乱の夫を殺すため、妻がビールに青酸を入れたのである。目撃した使用人は、口止め料をもらっていたため嘘《うそ》をついていたのだった。医師が妻の言いなりに脳溢血、病死という死亡診断書を交付していたら、事件は闇に葬られていたであろう。
 仕事中、棚から工具を降ろそうと踏み台の上に乗ったが、足場が悪かったため前のめりに転倒した。はずみがついて倒れ、床にあった石ノミがわき腹に刺さってしまった。すぐ病院に収容され、開腹手術が行われた。小腸に小さな刺創があって、腸内容がもれ、治療をしたが経過はおもわしくなく、腹膜炎を起こして六日目に死亡した。
医師は、災害事故による急性化膿性腹膜炎と診断して、死亡診断書を発行した。業務中の事故であるから、労災保険の適用になるので、事故の確認をとるため警察に届け出た。捜査の結果、事故の発生状況に間違いないと判断された。
しかし、このケースは単なる病死ではない。石ノミが腹に刺さって腹膜炎を起こした外因死であるから、監察医制度のある地域では監察医の死体検案を受けなければならない。つまり、臨床医の死亡診断書ではなく、監察医交付の死体検案書になるのである。
翌日、検死をする手はずになった。その夜、警察に、
「本当は、けんかで刺されたのだ」
との匿名の電話が入った。検死、解剖の結果と合わせ、厳しい調査をしたところ、同僚と口論けんかとなり、果物ナイフで刺されたことが判明した。臨床医はもちろん、警察までだましていたのである。
法医学の専門家が手術前の腹部の刺創をみれば、凶器が果物ナイフか石ノミかの区別はついていたであろう。しかし、患者は外科医によって緊急手術を受けている。創傷を観察して、凶器の区別などしている暇はない。とはいえ、凶器は着ているシャツなどの上から刺している場合が多いので、刺創が手術によってわからなくなっていても、着衣の切れ具合を観察すれば、凶器を割り出すことも可能である。
病院によっては、血だらけで不衛生であったから、着衣は焼却してしまったなどという場合もある。しかし、その着衣には犯人の返り血が付着している可能性もある。いかに汚く不衛生であっても、犯罪捜査上きわめて重要な物的証拠になるので、病院が勝手に処分すべきものではない。ビニール袋などに入れて保管し、警察に手渡すべきものである。
このケースは真夏のことで、上半身は裸であった。警察へのたれ込みがなかったら、この事件は、わからずじまいであったかもしれない。嘘というものは、事実をつくりかえているから、どこかつじつまの合わない部分がある。たとえ、たくみにカムフラージュしたとしても、その行為の不正義を許せない人などによって、たれ込みなどという別の形で、あばかれていくこともある。
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