返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

死体は語る37

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:すばらしき提言一九三〇年代にアーサー・ハーストという人が、医師の診療中の態度、会話などの不注意から患者が自己暗示を受け、
(单词翻译:双击或拖选)
すばらしき提言

一九三〇年代にアーサー・ハーストという人が、医師の診療中の態度、会話などの不注意から患者が自己暗示を受け、そのために誘発されて病気になったものを医原病(Iatrogenic Disease)と呼び、医師を非難した。
たとえば、診療中医師が個人的悩みのために思案し、患者の胸に聴診器をあてまわし、苦悩に満ちた顔をしながら、一言の会話もなく首をかしげて診察を終え、薬をくれたとする。患者は自分の病気は医師が苦悩するほど悪いのかと思い込み、大した病気でもなかったものが悪化する。このようなケースを医師への非難を込めて医原病といったのである。
本来患者を救い、病気を治すべき医師が、逆に病人をつくり出している。そのうかつさは、患者にとって許しがたいものであり、医師にとっては大きな反省材料であった。
しかし、今日の進歩した医療の中で、その概念は整理され、たとえばストレプトマイシンは結核にきわめて有効だが、連用すると聴力障害を来す場合があるとか、サリドマイドはつわりによく効くが、奇形児が生まれる危険があるなど、医学的文明病を指すようになった。
ややもすると、医師は患者に対して傲慢《ごうまん》になりがちである。ハーストの提言は謙虚に受けとめ、反省しなければならない。
私の尊敬する知人に、中学の校長さんがいる。定年退職するとすぐ、奥さんのやっていたすべての家事を自分でやり出した。とくに奥さんの体調が悪いわけではない。炊事、洗濯、掃除、ごみ捨て、さらには買い物かごをぶらさげてスーパーにまで出かけた。奥さんは、古い習慣にこだわり、夫に家事をさせるのは世間体が悪いと反対した。
校長さんは、暇だからやるのではなく哲学を持っていたのである。男の沽券《こけん》にかかわるなどとは思ってもいない。ごく自然にやりだした。そして、人間生活の原点は家事にあり、職業はそこから発展したもので、これを大切にすることが生きることだという。
新聞、雑誌、テレビの取材はもちろん講演会まで開かれ、校長さんの人生哲学は、専業主夫として世にアピールされた。その都度、遠慮がちに語られる姿は、先生の人柄を一層引き立たせた。とくに主婦からは歓迎され、日本有職婦人クラブ連合からベスト・メン'85賞を贈られた。
ただ単に男性が家事を受け持つのではなく、女性がいろいろな分野に進出していくことが望ましい未来をつくると言うのである。素晴しい提言である。
夫婦という共同生活の中で、考え反省しなければならない事柄であろう。何事も原点に立ち返っての反省は、よりよい未来をつくり出すに違いない。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%