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死体は語る39

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:夢の殺人戦後の混乱期にヒロポン(覚せい剤)が出回った。習慣性があり、慢性中毒になると幻視、幻聴、被害妄想などが出現し、そ
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夢の殺人

戦後の混乱期にヒロポン(覚せい剤)が出回った。習慣性があり、慢性中毒になると幻視、幻聴、被害妄想などが出現し、そのための犯罪も多発した。
工員Aもひどい中毒になっていた。ある日、寝ている妻の首を絞め自宅に放火したが、大事に至らず殺人、放火未遂に終わった。
精神鑑定の結果、強度のヒロポン中毒による被害妄想と診断され、法律上は心神喪失と判定されて、責任能力なしということで不起訴処分になった。
心身耗弱と判断されれば、刑は減刑されることになっている(刑法第三九条)。それから十年、Aはヒロポンをやめ再婚し、会社に勤めていた。ある日、単車に乗り仕事中タクシーと衝突、下腿骨折を起こして右足は曲がってしまった。傷害補償金をもらい治療を打ち切ることにしたが、妻は一時金をもらったあと会社をクビになったら、歩行不自由な人を使ってくれる職場はほかにないと強く反対した。
貧しかったから、一時金には未練があった。Aは迷いに迷って精神不安状態になっていた。その晩、寝つかれないまま床に就いたが、突然三人の大男がAに襲いかかってきた。首を絞められ殺されそうになったので捨て身の反撃に出た。逆に相手の首を絞めつけたとき、
「ギャー」
という声を聞き、目をさました。Aは夢を見ていたのである。
しばらくして、頭がはっきりし意識がよみがえった瞬間、そばに寝ている妻が鼻から血を流し、死んでいるのを見て、自分が殺したことに気がついた。夢ではなかった。直ちに自首。
Aは殺人罪で起訴された。精神鑑定の結果、極度の神経質と軽度のヒロポン中毒後遺症がある。しかし、分裂病のような精神障害はない。夢について詳しく覚えているから意識はあったと思われる。とはいえ、周囲の状況を識別できるほどはっきりした意識ではない。さらに、殺されるという恐怖感が先に立ち、自己防衛のため慌てていたので、そばに寝ているのが妻であることすら分別する余裕もなく行動したようである、と分析された。
検察側は、精神障害はなく意識があったのだから、Aは心神耗弱に相当するとして、懲役四年を求刑した。
ところが、裁判長はこれを無罪と判決したのである。理由は、Aが妻を絞め殺したとき意識はあったが、周囲の状況や自分の行動の善悪を分別するだけはっきりした意識ではなかった。行動中自分が殺したという事実もわからず、また妻に対する殺意もないのでAに刑事責任能力があるかないかは問題ではなく、殺人という犯罪を構成するために必要な殺意がないから罪にはならない。さらに、意識を十分取り戻していないから過失致死罪のような過失もないとし、Aが殺したのは妻ではなく、夢に出て来た大男であると結論したのである。
裁きとは、ただ単に人間の誤った行動をとらえて罰するのではなく、行動を起こさせた思想、考え方、あるいは精神構造に焦点を合わせて評価するのであろう。裁きの難しさの中にも、ヒューマニティーを感ずる。
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