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死体は語る44

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:異なる結論戦後の混乱期、国鉄の下山総裁が常磐線北千住・綾瀬間で轢断《れきだん》死体となって発見された。検死後、司法解剖と
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異なる結論

戦後の混乱期、国鉄の下山総裁が常磐線北千住・綾瀬間で轢断《れきだん》死体となって発見された。検死後、司法解剖となった。鑑定結果は、死後轢断、つまり殺人事件と認定された。当時の社会情勢、死亡前の足どりなどからも、殺人の可能性は大きかった。
しかし、角度を変えて見直すと、必ずしも殺人とは言いがたいという専門家の意見もあって、この事件は自殺か他殺かをめぐり、社会的論争をまき起こした。一つの事件、一つの現象が見方により、解釈によって全く異なる結論を引き出すことがある。
大正末期の小笛《こぶえ》事件も、まさにこれであった。大学を卒業し、社会人となり、結婚することになった男が、それまで深い関係にあった小笛(四十五歳)に別れ話をもちかけた。翌朝、小笛は首つり死体となって発見され、しかも男と心中するとの遺書があり、二人の捺印《なついん》があった。しかし、男の姿はなく、小笛の解剖結果と相まって、偽装殺人の容疑が深まった。
小笛の手足には擦過打撲傷が散在し、前頸部上方とその直下に横に平行して走る索溝(紐などで絞めた痕跡)があった。また、現場はマル火鉢が転がり、座敷は灰だらけで、襖《ふすま》は破れ傷んで、敷居から外れて倒れている。なぜかまな板まで散乱していた。
小笛は男と乱闘の上、絞殺されたのち、首つり自殺のように鴨居《かもい》にぶら下げられたものであろうとの結論に達した。その証拠に前頸部下方の索溝は生活反応が強く絞殺時のもので、上方の索溝は死後首つり状態にぶら下げたものであるから、生活反応は弱いと、鑑定した法医学者は説明していた。
この鑑定の是非を三大学の教授に検討してもらうため、再鑑定となった。二つの大学から、やはり偽装殺人であるとの肯定的意見が出されたが、一大学からは自殺で説明がつくという予想外の鑑定結果が提出された。
それによると、小笛はマル火鉢にまな板をのせ踏み台にして、鴨居から首つりをした。しかし、完全な宙づり状態にならず、わずかに足が床につくなどの姿勢(非定型的縊死)となったため、頸部圧迫による無呼吸状態から痙攣《けいれん》発作を生じ、手足をばたつかせた。その痙攣で襖が破れ、敷居から外れたり、火鉢やまな板を蹴とばす結果となって、現場は灰だらけになった。小笛の手足の外傷はそのためである。また、頸部の索溝は下方で紐を巻き、首つりをしたが、死の直前の痙攣のため、紐が上方にずれたので、上方の索溝は下に比べて生活反応は弱いのだと解説した。
小笛の死体所見は、非定型的首つりの自殺の際の痙攣発作を考慮すれば、なにも偽装殺人と考えなくても、すべて説明はつくというのである。
自殺か他殺か──異なる結論に、世間も注目した。
裁判長は、さらに二つの大学にどちらの鑑定が妥当なのか、再々鑑定として意見を求めたのである。結果は二大学とも、自殺説を支持した。そのため、自殺とするもの三、他殺とするもの三と三対三の同率になり、この鑑定は終わっている。裁判長は結局、自殺説を採択して小笛事件は終結した。
失恋した小笛は、男に殺されたように見せかけ、狂言自殺をしたのであった。鑑定結果が人の運命を大きく左右することを思うと、日々の研鑽《けんさん》をないがしろにすることはできない。
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