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食味歳時記14

时间: 2020-04-20    进入日语论坛
核心提示:美しき五月01「フランスへ行きたいんですが、何月ごろがいいでしょうか」私は、よく、そういう質問を受ける。昔とちがって、近頃
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美しき五月01

「フランスへ行きたいんですが、何月ごろがいいでしょうか」
私は、よく、そういう質問を受ける。
昔とちがって、近頃の渡欧者は、長逗留をしないから、なるべく、いい時季を狙って、出かけたいのだろう。
「それァ、もう、五月ですよ」
その答えは、いつも、きまってた。私ばかりではない、フランス人の答えも、恐らく、同じだろう。
美しき五月——それは、一日の鈴蘭《ミュゲ》の祭りから、始まるだろう。メーデーに無関心な人も、街角に立つ、鈴蘭売りの娘から、一束を買うだろう。空は晴れ、微風が流れ、春の装いの女たちが、胸を反らし、緑濃き街路樹の下を、初聖体拝受の少女の白衣が、清々しいだろう。
そして、美術展覧会と、演劇のシーズンも、始まるのだが、何か、パッと、幕が引かれ、眩しいほど、明るい舞台が、展ける感がある。それというのも、あの暗い冬の長い幕間があったからだろう。フランスにしても、イギリスにしても、気候からいえば、北の国であって、冬はまったく灰色である。それが、百花一時に開く春を迎えるのだから、五月に対する考えも、東京人とはちがうわけである。
もっとも、四月から春はくるが、五月になって、春が安定し、爛熟する。そして、日本流には、春と呼ぶよりも、初夏の気分も、混ってくる。フランス人に、春と夏との区別は乏しい。少くとも、彼等は夏を嫌わない。五月に、初暑と呼ぶ三十度の日があっても、彼等は、その暑さを、いい陽気でございますと、いわんばかりである。
とにかく、万物成育の時であって、食べ物がマズい道理がない。しかし、牛豚肉にシュンというものはないし、魚をそれほど賞美しない国であるし、結局、五月の佳味といえば、野菜である。
フランスは、農の国であるが、地味がいい上に、野菜づくりが、上手なのであろう。フランスの野菜は、まったくウマい。フランス人も、野菜好きである。普通のレストオランへ行っても、数種の野菜の皿が、献立ての中にある。
その野菜が、五月になると、ドッと、出てくる。まず、ジャガ芋——その新芋がウマく、それを食うと、五月になった気がする。普通、フランス風のフライド・ポテトといえば、縦切りに、面取ったものだが、新芋に限って、小粒のせいか、丸揚げである。味は、無論、この方がいい。そして、白ブドー酒と、よく調和する。
次ぎに青豆。つまり、グリーン・ピースのことだが、フランスでは、プチ・ポアと呼ぶ。これが、非常にウマい。鳩のローストの添え野菜として、出てくるが、プチ・ポアばかりの皿もある。そして値段も、肉一皿に匹敵するほど高い。もし、比較的安かったら、それは、輸入ものの缶詰を用いたと、思っていい。フランス人はものの味を知ってるから、自国産を賞用し、従って、値段も高いのである。
その他、|いんげん《アリコ・ヴェール》も、ウマくなる。さや・いんげんだが、細長い、緑の濃いやつを、サヤのまま、バタいためする。しかし、日本とちがって、色の変るほど、長くいためる。フランス人は、日本人のように、サッといためるとか、ゆでるということを、好まない。見た眼は悪くても、柔かになるまで、火を通すのである。しかし、これは惣菜料理である。
|朝鮮あざみ《アルティショオ》も、五月の食卓に出る。葉の根元についてる食用部分は、日本の里芋に似た味に過ぎないが、フレンチ・ソースだけで、食べると、まったく風雅な味であり、あれを喜ぶフランス人は、日本の懐石料理を、理解する資格ありと、思われる。また、日本のお茶人も、アルティショオだけは、そのまま献立てに入れても、奇矯の譏《そし》りはあるまい。
そして、美しき五月のアスパラガス。
フランスでは、アスペルジュと呼ぶが、五月の野菜の王者だろう。日本のナマのアスパラガスも、近頃は、市場を賑わすが、どうして、あんなに痩せて、筋張ってるのだろう。何だか、食べるのが、気の毒になってしまう。フランスのアスペルジュは、豊満な美人の観があり、ルーベンスの絵の女体に近いから、ガブリと、食いつくことができる。
五月になれば、どこのレストオランでも、シュンのアスペルジュが、ハバをきかすが、八百屋の店頭でも、兄チャンの店員が、一キロいくらになったと、出盛りの値段を、大声で喚《わめ》き立てる。
私は、ある年の五月に、ゆで立てのアスペルジュというものを、食べて見たくなった。レストオランだと、どうしても、冷えたのを、持ってくるからである。
そして、自分の部屋で、時には、自炊をするので、アルコール・ランプと鍋ぐらいは、置いてあった。ただ品物を買ってくればいいのである。
私は行きつけの八百屋へ、出かけた。この店は主人も、店員も、女ばかりで、愛想がよかった。私は、一束のアスペルジュを買ったが、ふと、そのままゆでればいいものか、どうか、不安になった。
そして、田舎生れらしい、ズングリした、中年女の女店員に、訊いて見た。
「わけはないんですよ、ムッシュー、まず、外皮を剥いてね」
と、彼女は、ナイフを直角に持って、皮をコソげる所作を示した。日本でも、ウドの皮を剥く時に、そんなことをする——
「で、何分間ぐらいゆでたらいいの」
「十五分で、結構」
「それから?」
「それから、鍋の湯をこぼして……」
彼女は、恐らく、食いしんぼうの生れだったのだろう。そして、五月のアスペルジュは、誰の食欲をも、そそるのだろう。仕方話をして、教えてるうちに、彼女はヨダレを流さんばかりの顔つきになり、
「それから、皿にとって、こうやって、ソースをつけて……」
と、二本指で架空のアスペルジュを、口ヘ持ってく仕草をしたので、
「それァ、知ってる、教わらなくても……」
思わず、私がそう答えたら、聞いてた女主人が、まず笑い出し、女店員も、ゲラゲラになってしまった。
私は部屋へ帰って、彼女の教えどおりに、アスペルジュをゆでた。そして、熱いやつを、早速、ソースなしで、塩を振って、食べてみたら、そのウマいこと——パリで食ったアスペルジュのうちで、その時ほどの美味は、ついに知らなかった。
そのように五月の野菜は、愉しみなのだが、果物の方も、口福を感じさせるに、充分だった。
一体、フランスの果物は、秋の実りにロクなものはなく、林檎なぞ、普通売ってる品物は、日本でいえば、屑みたいなものだが、五月のイチゴ、桜桃、|木イチゴ《フランボアーズ》は、形も、味も結構で、誰も争って、食後にそれを食べた。その季節だけしか、食べれないからである。
イチゴや桜桃の味は、日本のそれと大差ないが、ただ、イチゴを食べる時に、スプーンでつぶすような人を、見たことがない。誰も、青いヘタをつまんで、少量の砂糖をつけて、口へ持ってく。女性の場合、ことに、似つかわしい。私はフランス人が、ああいう食べ方をして、自然や季節を、愉しんでるのではないかと、推測する。
フランボアーズは、日本の木イチゴのような、不味なものではなく、甘く、香りよく、私は好物だった。ナマで食ってもウマいが、その季節になると、フランボアーズとイチゴを用いた各種のパイが、菓子屋の飾窓に、見るから食欲をそそる姿で、列び始める。パリの五月の美しさは、菓子屋の店頭にも、充分なのである。
野菜と果物を除いて、五月の食物で、記憶に残るものは、セーヌ川の魚のグジョンである。ワカサギとダボハゼの中間のような、魚である。
私はグジョンのシュンが、五月であるか、どうかを知らない。年中釣れる魚であることは、確かである。
しかし、それを食いに、パリ郊外のレストオランへ行くのは、いつも五月だった。セーヌ下流の川岸の村に、ベル・ヴューというところがあって、そこに、居酒屋のような、小料理屋があった。二階のバルコンの食卓から、川が見えるばかりでなく、川岸の大木の上に、テーブルをつくり、そこでも飲食できるような、変った、古びた店だった。
その家は、グジョンのフライが名物で、フライといっても、パン粉なしで、テンプラ風に、オリーブ油で揚げたものだが、熱いうちに食うと、非常にウマい。レモンと塩だけで食うのが、一番である。
グジョンは、安い魚だから、皿に山盛りにして、持ってくるが、同じく安酒の白ブドー酒を傾け、満開のマロニエの花と、田舎びた、水郷風の景色を、眺めながら、時を過すのは、気が安まった。グジョンも、全部平らげ、デザートとコーヒーぐらいで、食事を終る頃は、宵闇が迫って、風情を増し、立ち去り難くなるのだが、セーヌ川の一銭蒸気船が、夜は運行しないので、最終便に間に合うように、急がねばならぬのが、残念だった。
もの皆美しき五月——食べ物も、例外でない。
フランスを訪れる人に、五月をすすめるのは、そんな理由からである。
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