胡瓜は、その色と、匂いと、豊かな水分とで、最も初夏らしい野菜だが、私なぞ、東京附近の胡瓜を見て、そう思うので、フランスの胡瓜は、バケモノのように巨きく、べつに季節感を誘わない。あんな大型は、フランスだけかと思ったら、四国へ疎開した時に、大変巨きいのを見た。九州あたりでも、そうらしい。
関東の胡瓜は、頃合いの形で、色が青く、イボが沢山ある。匂いも強いようだ。それを見ると、今年も夏がきたなと思う。盆の精霊棚に飾るのが、初物だった。ところが、この頃は、年がら年中、八百屋の店頭にある。胡瓜の初物とか、ハシリとかいうものは、もう存在しなくなった。つまらぬことである。生活の歓びというものを、わざわざ壊してる。