その他、元町の�※[#「几の中に百」]月堂�のコーヒーやアイスクリームの味も覚え、�ユーハイム�の菓子も、東京の同店よりも結構だと知り、一応、神戸の味覚に関することを、小説�バナナ�の中に書き込んだ。
すると俄然、私が神戸通である如く、買いかぶる人間が多くなった。
「神戸は、面白そうですね。一度、案内して下さい」
そんなことをいう人間が、出てきた。
そして、数年前に遂に、私は、神戸案内を実行せざるを得ない破目になった。
仲のいい新聞の連中二人と、私は明石の魚料理を食べに行くことになったのだが、その夜は、神戸のオリエンタル・ホテルに泊り、翌日は、神戸の食べ歩きという計画だった。
そして、おかしなことに、新聞の連中の一人は、神戸出身なのである。もっとも幼時を神戸で送っただけだというが、とにかく神戸人を私が案内することになったのだから、得意想うべしである。
まず、�キングズ・アームス�へ連れてって、アペリチーフを飲み、それから�青辰�という風に、こっちの知識は、一つ覚えだから、連れて行く先きは、きまってるのだが、先方は気がつかない。
「さすがに、よく知ってますね」
と、感心してる。
それに、神戸は東京のように、ダダ広くないから、方向オンチの私にも、どうやら道に迷わずに、案内できる。また、私の案内先きは大体、三ノ宮駅を中心として、そう遠くない地点だから、一層、始末がいい。
その時、好評を博したから、図に乗って、昨年の五月にも、神戸案内を敢行した。この時も、関西の取材を行い、神戸に足を伸ばしたので、同行者も、ジャーナリスト二人だった。しかし、案内した場所は、相変らず、ハンコで捺したような、同じ店ばかりだった。ただ、最後の仕上げに、夜更けてから、バーの�アカデミー�を訪れたら、もうあの老人の姿は見られず、元気のいい若い息子が酒を注いでくれた。
すると俄然、私が神戸通である如く、買いかぶる人間が多くなった。
「神戸は、面白そうですね。一度、案内して下さい」
そんなことをいう人間が、出てきた。
そして、数年前に遂に、私は、神戸案内を実行せざるを得ない破目になった。
仲のいい新聞の連中二人と、私は明石の魚料理を食べに行くことになったのだが、その夜は、神戸のオリエンタル・ホテルに泊り、翌日は、神戸の食べ歩きという計画だった。
そして、おかしなことに、新聞の連中の一人は、神戸出身なのである。もっとも幼時を神戸で送っただけだというが、とにかく神戸人を私が案内することになったのだから、得意想うべしである。
まず、�キングズ・アームス�へ連れてって、アペリチーフを飲み、それから�青辰�という風に、こっちの知識は、一つ覚えだから、連れて行く先きは、きまってるのだが、先方は気がつかない。
「さすがに、よく知ってますね」
と、感心してる。
それに、神戸は東京のように、ダダ広くないから、方向オンチの私にも、どうやら道に迷わずに、案内できる。また、私の案内先きは大体、三ノ宮駅を中心として、そう遠くない地点だから、一層、始末がいい。
その時、好評を博したから、図に乗って、昨年の五月にも、神戸案内を敢行した。この時も、関西の取材を行い、神戸に足を伸ばしたので、同行者も、ジャーナリスト二人だった。しかし、案内した場所は、相変らず、ハンコで捺したような、同じ店ばかりだった。ただ、最後の仕上げに、夜更けてから、バーの�アカデミー�を訪れたら、もうあの老人の姿は見られず、元気のいい若い息子が酒を注いでくれた。