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食生活を探検する15

时间: 2020-04-21    进入日语论坛
核心提示:ニューギニアのブタ ウオゴとは、ダニ語でブタのことである。西ニューギニア高地では、ブタは大変な財産である。ブタくらい、い
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ニューギニアのブタ

 ウオゴとは、ダニ語でブタのことである。西ニューギニア高地では、ブタは大変な財産である。ブタくらい、いくらでも増やせそうにおもえるかもしれない。しかし、ここではブタを飼う残飯はないし、森林のなかにブタの食糧となるものもない。そこで、ブタは人間とおなじく、サツマイモやサトウキビなど畑の作物をたべて生きている。だから、広い畑を持たなければ、ブタを飼うことができない。畑を耕し、ブタの世話をするのは、女の仕事である。そこで、妻をたくさん持つ者ほど、畑は広く、持つブタの頭数も多くなる。その妻をめとるには、子安貝とブタを結納にやらねばならない。これでは、堂々めぐりだ。娘一人の値段は、親ブタに換算して、三頭ぐらいである。
そんな貴重品のブタだから、親ブタの乳が足りないときなど、人間の乳を子ブタに飲ませて育てる。ブタ泥棒は、しばしば部族間の戦争の原因となる。
ブタをたべるのは、出生、結婚、葬式の人生で一番大切な儀礼のときと、一部落では数年に一度しか行なわれないブタ祭りのとき、それに、人に病気や災厄をもたらす悪霊をなだめるときだけである。約半年におよぶ、西ニューギニア山岳地帯調査のうち、わたしがブタをたべたのは、ただの一回きりであった。
「ウギンバ・ダニ、ウオゴ、ウオゴ!」
部落の背後の山に登り、地形測量をしていると、ダニ族の青年がとんできた。ウギンバ・ダニとは、ダニ族がつけてくれたわたしの名前である。ブタが盗まれたとでもいうのだろうか。若者について、山を駆けおり、川原に出ると、部落のダニ族が全員集まっていた。そこは、かれらの共同炊事場なのだ。
炊事場といっても、直径一メートル程の穴がいくつも掘ってあるだけ。その穴にザルと呼ばれるユリ科灌木の幅広い葉をしきつめ、そのうえにササゲ、ヒョウタン、セリ、サツマイモの葉などの食物を入れ、焚火で焼いた石ころをほうりこんで、むし焼きにするのだ。
「ウギンバ・ダニがきた」
わたしの姿を見て、ざわめきがおこった。ベタベタになるまで熱の加わったサツマイモの葉やササゲを木の葉にくるんだ包みがさしだされる。塩すらも使わない、調味料は一切なしの料理だが、木の葉でくるんでのむし焼きなので、材料の味が外へ逃げることがなく、材料の持味を最高にいかした、なかなかオツな味だ。
石焼き料理のコースが終ると、第五じいさんが立ちあがった。第五とは、わたしたちがつけたあだ名で、本名はカレング、推定年齢五十五歳くらい。性器から太股にかけて、ひどい潰瘍にかかっている。途中まで、わたしたちに同行したインドネシアの軍医によると、この地方には、第五性病が蔓延しているという。カレングじいさんは、第五性病の典型的な症状をしていたので、いつの間にか、わたしたちは第五というあだ名をつけてしまった。
かれが、薬をくれといって、物蔭でペニスケースをはずして、患部をみせてくれたが、見るも無残に、下腹部がただれ、今にもくずれ落ちそうだった。黄色い膿だらけで、そこへ蠅がむらがってきた。それまで五番目の性病があるなどとはわたしたちは知りもしなかったが、薬箱をかきまわしているうちに、クロロマイセチンの効能書に、第五性病の名があるのを発見した。抗生物質を素人療法で投薬するのがよいかどうか迷ったが、ほかに薬がないので、試みに飲ませてみた。しばらく抗生物質療法を続けるうちに、いくぶんは快方にむかったのだが、なにぶん症状がひどすぎ、かなりの長期投薬が必要であるし、そのうちに、薬を使いはたしたら、こちらが肺炎にでもなったときに困る。それに、部落には、他の第五性病患者がいるようであるし、われもわれもと診察に来られたら、いっぺんにクロロマイセチンがなくなってしまう。そこで途中から、第五じいさんの手当は、外用薬療法に切りかえた。軟膏を渡して、自分で塗らせるのだ。こちらが塗布してやるには、病気の種類と場所がわるすぎた。そんなわけで、第五じいさんは、患部がうずくらしく、いつも木の葉で股間をあおぎながら、大儀そうに、ガニ股であるいている。
そのかれが、別の穴のうえにかけた土をはらいのけ、そこから石焼きイモをとり出して、みなにふるまう。わたしにも四本のサツマイモの配給が終った頃、今度は穴の底から赤黒い、大きな物体をとりだした。
「あれはなんだい?」
けげんな顔つきでたずねると、
「ウオゴ、ウオゴ!」
みなが一斉に合唱する。ブタの丸焼きであった。手まね身ぶりをまじえて、何とか聞きだしたところによると、病気をもたらす悪霊をはらう為に、第五じいさんが、自分のブタを殺して、みなにおごるらしい。
じいさんは、竹のナイフをカミソリのように使って、肉を切りとっては分配する。ときどき脂肪のついた手を内股でぬぐいながら……。見ているわたしの顔には、どうこらえても、シワがよりそうになる。
「どうか、ワタシの番がきませんように」
と心で念じたとたん、
「ウギンバ・ダニ、オー」
第五じいさんの声がかかった。
かれはことさらていねいに、膿のしたたる、ペニスケースの付け根で両手をぬぐってから、ブタの頭の近くの肉を百グラム位切りとって、わたしに渡した。
「カオナ・カオナ!(ありがとう)」
といったん礼をいってから、
「オレは、さっきの野菜で腹がいっぱいだ。ブタは家へ持って帰って、晩にたべることにする」
手まねをまじえながら、逃げ口上をいう。だが、周囲の男達が承知しない。
「食え、食え!」「うまいぞ!」
わたしは観念した。ブタを食わせるのは、かれらの最大の好意だ。これを拒否して、いままでに築きあげた友情にヒビを入れてはならない。あとで予防のため、クロロマイセチンを飲んでおこう。
肉片をそっと手でぬぐい、ほおばった。どうせたべるなら、うまそうに食ってやれ。
「アベロム・ウオゴ・アベロム!(うまいブタだ)」
塩味もついていない焼肉には、第五じいさん特製のソースの奇妙な味がついていた。だが、うまそうにたべるわたしをみて、一同は本当に満足したような顔つきをしてくれた。
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