手術室に四回運ばれたほかは、あおむけに寝たきりの五カ月間がありました。見舞いに来た友だちが「ハイ、オルゴール。曲は枯れ葉、エンギをかつぐあなたでもないでしょ」と置いてゆきました。そうです。すっかりよくなった今でも、枯れ葉の曲をきくと、生き死にの境の思いが切なくよみがえって、悲しみさえ甘くなることを知りました。
同室の患者が夜、出前のラーメンをすするとき、私は思いました。いつ食べられるかしら? ラーメンはあおむけのまますすれるものではありませんでした。元気になってしまうと「きょうは節約してラーメンにするか」などといいます。値段は安くても健康という高い代価を支払って食べるのに。