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国盗り物語68

时间: 2020-05-25    进入日语论坛
核心提示:蝮《まむし》の子 寝よ、といわれるから、濃姫は、仕方なく夜具のなかに入った。さすがに、身のうちがふるえている。「なあお濃
(单词翻译:双击或拖选)
蝮《まむし》の子

 寝よ、といわれるから、濃姫は、仕方なく夜具のなかに入った。さすがに、身のうちがふるえている。
「なあお濃よ」
信長は、褌《まわし》ひとつの素っぱだかのままでなにやら妙な竹筒をとりだした。
四尺ばかりあるだろう。
「これはなんであるか、知っているか」
「存じませぬ」
「笑い絵よ」
信長は笑いもせずにいった。この時代の武士のあいだに流行した縁起モノである。春画を竹筒に入れ、それを背負って戦場にゆくと下手《へた》な怪我はしない、と信じられていた。
竹筒には、肩に背負えるように古びた革ひもがついている。信長はおそらく城内の蔵かなんぞで、見つけてきたのであろう。
(ああ、あれか)
と、濃姫も城中で成人したむすめである。そういうものが世に存在する程度には知っていた。
「どうじゃ」
信長は、パラリとひろげた。絹に極彩色の男女がえがかれている。
「お濃、このとおりするのじゃ」
と信長は、ぶらさげて濃姫にみせ、自分も小むずかしい顔でそれをのぞきこんだ。
濃姫はさすがに顔だけはむけたが、目だけは、
(みまい)
とつぶっている。
「見ろ」
「いやでございます」
後年、この夜の信長を思いだすごとにたまらぬほどの可笑《おか》しみを覚えるようになったが、濃姫のみるところ、要するに信長という男の風変りな性格が、こんなところにもあらわれている。なにごとも自分の手で研究し、自分で考え、自分なりの方法で行動せねば気のすまぬ、という、いわばこの男の異常さが、初夜の行動にも出ていた。
しかしこの夜の濃姫は、そこまで信長がわかっているわけではない。
(狂人か)
と、実のところ、こわくなった。やることも奇矯《ききょう》だし、面《つら》つきも、蛙《かえる》のように大まじめだった。蛙は、笑わない。そういえば、濃姫はここ三日間、この若者の笑顔をみたことがない。
それに、やることなすことに情感がないのである。
なにぶん、こういうことは男女の事柄《ことがら》だから、自然な情感がにじみ出てもよさそうなものだが、信長は右手にぶらりと笑い絵をぶらさげ、
「このとおりにやる」
と宣言しているだけである。
濃姫は、父の道三や母の小見の方のこのみで、早くから和歌を学ばされ、古《こ》今《きん》、新古今に集録されている名歌はほとんど暗誦《あんしょう》し、自分でも各務《かがみ》野《の》といっしょに架空の恋人を想定して恋歌などをずいぶんつくってきた。
(それとはずいぶんちがうなあ)
と、濃姫は頭のすみでおもった。しかし意識のほとんどは白っぽく混濁していて、体だけがむしょうにあつい。
ところで、信長にすればこれは親切のつもりだった。
(おれは、平手の爺《じい》におしえられてわかっておる)
と、自信もあり、落ちついてもいた。
ただ事前に笑い絵をみせてやれば、濃姫もあああのとおりにするのかと思い、気も落ちつき、やりやすくなるだろうと相手本位に考えてのことである。
この男なりの愛情だった。
やがて信長は掻巻《かいまき》をめくり、濃姫の横へ入ってきた。
「わしの首の根を抱け」
ときびしく命じたが、濃姫はくびをふってはずかしゅうございます、といった。「しかしお濃」と、信長はいった。
「笑い絵ではそうなっておる」
「厭《い》や、厭や」
「そなた、美濃を出るときになにも教わらなかったのか」
「いいえ」
「どう教えられた」
「なにごとも婿殿《むこどの》の申されるようにせよ、とそれだけでございます」
「ではないか」
信長はだんだん不機《ふき》嫌《げん》になってきた。自分の言うとおりに人がせぬと諸事、癇《かん》が立つのである。「せよ」といった。
濃姫はやむなく、白い腕を出し、信長の頸《くび》にからませ、
「こうでございますか!」
と、悲しげにいった。信長はふむ、と得意げにうなずき、「されば自分もこうだ、こう抱く」と右手を寝床のなかでのばし濃姫の腰のくびれにもって行ったから、濃姫はきゃっとからだを曲げた。
「どうした」
と信長は手をとめた。
「くすぐっとうございます」
「我慢せよ」
信長は、容赦なく事を進めてゆき、やがて眉《まゆ》を詰め、眼をつぶり、渋面《じゅうめん》をつくった。
濃姫も、渋面をつくっている。たがいにわけもわからぬうちに、平手中務政秀がおしえてくれたことの一切がおわったようであった。
そのあと信長はふとんの中からごそごそ這《は》い出ると、部屋のすみにあった革袋をとってきて、いま一度、ふとんへ入った。
腹ばいになって革袋をあけ、中から干し柿《がき》を二つ取り出してきて、
「お濃、たべろ」
と、一つくれた。どうやら噂《うわさ》にきく信長は、腰に革袋をぶらさげている、という評判の実体はこれらしい。
(べんりなものだ)
と濃姫はおかしくなった。
「革袋は、いくつ下げていらっしゃいます」
「二つか三つだ」
「どの袋にも、干し柿を入れていらっしゃるのでございますか」
「馬《ば》糞《ふん》のときもある」
「えっ」
この袋ももとは馬糞入れだったのか、と濃姫はおどろいたが、信長は、「ちがう」と言い、
「あたらしい袋だ」
といった。聞けば、この干し柿は濃姫にやるために数日前、城下の農家に忍びこんで盗《と》っておいたものだという。
「ありがとうございます」
「礼はいわんでもよい」
干し柿をむしってうまそうに食いはじめたあたり、どうみてもまだ十六の齢《とし》だけのものでしかなかった。
「お濃」
「帰蝶《きちょう》とよんでいただきます」
「どうでもよい。美濃から嫁《き》たからお濃だ」
(変な子)
腹が立った。そんな眼で信長をながめるだけの余裕が、濃姫にできはじめている。
「そなたの父親は、蝮《まむし》だそうだな」
「…………」
「美濃ではどうか知らんが、尾張ではもっぱらな評判だ。下民でも蝮、蝮とよんでいる。やっぱりあれか、まだらまむし《・・・・・・》のような顔か」
「ちがいます」
濃姫は、いやな顔をした。
「父は乱《らん》舞《ぶ》などさせると、背も高く、容貌《かお》も舞台に映えて、ゆゆしきお顔だ、と人は申します。わたくしもそう思います」
「なるほど」
信長は、蝮面をした怪物を空想していただけに、すくなからず落胆した。
「ただの顔か」
「はい。尋常以上のように思いますけれど」
「しかし、強いだろう」
「さあ」
濃姫は、父の評判が尾張ではよくないことを知っているから、こういう話題をできれば避けたかった。
「おれのお父《でい》は強い。尾張半国を切りなびかせて隣国の三《み》河《かわ》では安祥《あんじょう》まで切りとった。駿《すん》府《ぷ》の今川義元が駿遠参《かんえんさん》三国の大軍をこぞって攻めてきたが、お父のために苦もなく撃退されている。東海一の弓取りだな」
「左様でございましょう」
「ところが」
信長は口中の干し柿をのみこみ、
「そなたのお父のほうが強い。おれのお父は何度挑《いど》みかかっても、そのつど叩《たた》きつけられている。強い。日本一だな」
「そんなこと」
「おれは事実をいっている」
信長は、熱っぽい眼を濃姫にむけた。
「おれは強い人間が好きだ。そなたのお父をおれは好いていた。美濃の蝮というやつはなんと素敵なやつだと思っていた」
「父がよろこびましょう」
と、濃姫はいったが、早くこの話題をうちきりたい。しかし信長は、その切れながの眼をきらきらさせて、話に身を入れだした。
「だがお濃、言っておくが蝮よりおれのほうが強いぞ」
「そりゃもう……」
と口ごもりながら、なんとこれはこどもだろうと濃姫はうんざりした。濃姫は年こそ一つ下だが、父の素養をついで恋歌の一つや二つ、いますぐにでも詠《よ》める。しかし信長は、このあえかなるべき初夜に、喧《けん》嘩《か》の強弱しか話題がない。
「お濃」
信長は、顔をむけた。意外なほど澄んだ眼をもっている。
「はい?」
お濃は微笑して、
「いくさの事なら、お濃はおなごでございますから、わかりませぬけど」
「うそをつけ、蝮の子のくせに」
「でも」
と、口ごもると、信長はくるくると頭をふって、「ちがう」といった。
「いくさの話ではない。おれという男についてだ。おれはばかにされている」
「…………」
「家中の者にもだ。いま城下の町衆までが、おれをたわけ《・・・》殿とやら申しているらしい。このうわさ、きいたか」
「いいえ」
濃姫はこわくなってかぶりをふった。
「うそをつけ。美濃でも大評判だというはなしだ。美濃の蝮の子が、尾張のたわけ《・・・》殿のもとに輿《こし》入《い》れした、よい夫婦になるじゃろ、と人は囃《はや》しておる」
「…………」
「おれは馬鹿《ばか》かどうか、自分でもわからん。ただ、おれが善いと思ってやることが、世間のしきたりでは悪いことになるらしい。袋にしてもそうだ」
なるほど、腰に袋をぶらさげておけば、いつでも食べたい時に柿が食えるし、石を投げることもできる。便利である。便利だからそうするのだが、世間ではそういう便利が馬鹿にみえるのであろう。
「おれが馬鹿か、世間が馬鹿か、これは議論をしてもなにもならん。おれのやりかたで天下をひっくりかえしてみてから、さあどっちが馬鹿だ、と言ってみねばわからぬ」
「まあ、天下を」
「おれの眼からみれば天下は馬鹿でできあがっている。鷹《たか》狩《が》り一つでもそうではないか。むかしからの鷹狩りのやり方では一日野山を駈《か》けて山鳩《やまばと》や鴨《かも》を二、三羽とれるだけだが、おれのやり方でやれば三十羽でも四十羽でもとれる。しかし世間はおれの鷹狩り姿を見て、アレヨ、タワケドノヨという。そういう連中の天下だ、くつがえそうと思えば、くつがえせぬことはあるまい」
「…………」
「おれがそなたに申したいのは、なんの、た《・》わけ《・・》殿でもかまわん、しかしそなただけは、正気でそう思ってもらってはこまる」
「…………」
と、濃姫は忍び笑っている。「こまる」という信長の言いかたが、いかにもこまるような表情に満ちていたからだ。
「よろしゅうございます」
「もう一つある」
「どんな?」
濃姫はこの少年のために微笑してやった。しかし少年は、容易ならぬことをいった。
「おれを殺そうとしているやつがいる」
「うそ!」
と、濃姫はあやうく叫びそうになった。
「いや、そういう気がするだけだ。ただ、おれは馬鹿にされている上に、きらわれてもいる。人間、そんなことはわかる」
「まあ」
「べつに人に好かれようとは思わん。おれは大名の子だ、好かれずとも大名になれる。しかし殺そうという奴《やつ》がいるのはこまる」
「うそでしょう」
「かもしれぬ。しかしお濃、そなたはそんな仲間には入るな」
「あたりまえのこと!」
と、濃姫はこの信長の話をきいていると気が変になりそうだった。婚礼がおわっての新《にい》床《どこ》に、人殺しの仲間に入るな、と念を入れる婿どのがどこの国にあるのだろう。
「でも、どなた様が、殿をおきらいあそばしております」
「まず、母上だ」
と、信長はいった。
濃姫はもう驚くのには馴《な》れてしまって、
(そう、おかあさまが。——)
と、なにげなくうなずき、うなずいてからその異常な事柄《ことがら》にがく《・・》然とした。実の母が、わが子をきらったり殺そうとしたりすることが世にありうるだろうか。
母は、正室の土田御前である。濃姫はあいさつをして顔を覚えている。信長に似て面長《おもなが》の美人だが、どこかこわれやすい、感情が激すると自分で制限できないような、ある種の激しさをもった顔だった。
「勘十郎信行《のぶゆき》という弟がある」
濃姫は、婚礼の二日目にあいさつを受けて知っている。美《び》貌《ぼう》で行儀がよく、いかにも利発そうな少年だが、ちょっと小利口そうなにおいがあって、濃姫はあまり好きでなかった。およそ、信長とは似ても似つかぬ弟なのである。
「勘十郎は評判がいい」
と、信長はいった。濃姫は、その評判のほどは後日きいたのだが、家中でも城下でも非常なもので、母御前などは勘十郎を溺愛《できあい》しきっている。そのうえ、勘十郎付の守役《もりやく》である柴《しば》田《た》権六勝家《ごんろくかついえ》や佐久間大学盛重《もりしげ》が、
「勘十郎さまは、ゆくすえ御兄君をたすけてよい大将になり、織田家をいよいよ興されることでござりましょう」
と、正気で、つまりかれらは粗剛なほどに朴訥《ぼくとつ》な男どもだから、おべっかではなく、そう信じきって母御前にも申しあげている。
次弟の評判がよすぎる、というのはけっして好ましい現象ではない。
——ではいっそ家督は勘十郎様に。
という気持が、人にきざさぬともかぎらぬからである。
げんに土田御前はいつも、
「兄と弟とがふりかわってうまれていればよろしゅうございましたのに」
と、信秀にこぼしている。そのつど信秀は、
「賢《さかし》らなことを申すものではない。人のゆくすえなどわからぬ」
と、信長をかばってきた。
「いま城中で」
と、信長はいった。
「おれをおれと見てくれるのはお父《でい》のみだ。平手の爺も、どうかわからぬ」
「お濃は?」
と濃姫はせきこんでいった。
「お濃も、でございますよ」
「だから、わしも申しておる。おれぎらいの仲間に入るな、と」

それから二年。
濃姫には、あっというまに経《た》ったように思われる。ふたりは、体も心も未熟のままに、ただ遊び友達のようにしてすごした。
急変がおこった。
天文二十年三月三日、父の信秀がちかごろ築造した末森《すえもり》城で急死したのである。
四十二歳であった。
頓《とん》死《し》といっていい。
その前日の夕刻、城下の猫《ねこ》ケ洞《ほら》という池のまわりを駈けまわって馬を責め、夜はいつものように大声で笑いさざめきながら大酒をし、閨《ねや》にひきとってからちかごろあたらしく手をつけた女に腰をもませ、
「チクと頭がいたい」
と、いっていたが、やがて熟睡した。あけがた厠《かわや》に立ち、人が気づいたときは冷たくなっていた。
それを伝える急使が信長のなごや城に駈けこんだのは、朝の陽《ひ》も高くなってからである。
信長は、だまっていた。
終日ものをいわず、濃姫がくやみをいってもうなずきもしなかった。日が経っても、父の死について語ろうともしない。
それから八日後。——
美濃から濃姫のもとに使いがきて、こんどは濃姫の実母小見の方が死んだことを伝えてきた。このほうは三十九、死因は結核である。
このときだけは信長は、
「お濃、悲しいか」
と、ひとことだけ、それもどういうわけか、憎々しげな顔でいった。濃姫はさすがに腹が立った。人の親の死が、悲しからぬはずがないではないか。
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