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千里眼02

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:新たな人生 会議が終わり、ざわめきとともに内部部局の職員たちがホールから廊下へと吐きだされていく。岬美由紀は、その隙間を
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新たな人生

 会議が終わり、ざわめきとともに内部部局の職員たちがホールから廊下へと吐きだされていく。
岬美由紀は、その隙間を縫うようにして小走りに駆けた。
行く手に、ひとりうな垂れて歩いていく板村の背がみえた。美由紀は歩を早めながら声をかけた。「板村三佐」
板村は足をとめ、ためらいがちな素振りでゆっくりと振りかえった。
その表情はいつものように、穏やかなものだった。板村は空自の上官にはめずらしく、目をいからせて見かえすことがない。その父親のような優しいまなざし。美由紀はふいに、強い罪悪感にとらわれた。
思わず声が詰まる。美由紀は囁《ささや》きのように漏れた自分の言葉をきいた。「申しわけありません……」
と、板村はそっと片手をあげて美由紀を制した。「なにを謝るんだね?」
「わたしの身勝手な行いのせいで……」
「それは違うだろ、岬二尉。私ときみとでやったことだ。きみが救難ヘリを飛ばそうとしたときには心底驚いたが、私はきみが功名心や安っぽい正義感で行動したとは思っていない。規則に反してはいたが、きみは正しいことをした。いまでもその思いは揺らいではいないよ」
「ですが……。板村三佐は、わたしをかばったがゆえに……」
「規則に反した時点で、罰則は覚悟のうえだったよ。それよりだ、岬二尉。楚樫呂島の小学校から届いた葉書、覚えているか」
「はい……。救難隊のパイロット待機所に貼りだされてますから」
「そうだったな。十二歳の女の子が児童を代表して、お礼を書き連ねてくれた。色鉛筆で隊員の絵が描いてあったが、とても上手《うま》かったな。あれは救難隊の新田二尉と山本一尉、それにきみだな」
美由紀は思わず苦笑した。「ええ。三人ともよく特徴をとらえてました」
「きみの操縦したUH60Jは、倒壊寸前の校舎に唯一駆けつけることのできた機体だった。海底火山が爆発した影響で水蒸気が噴煙状となって噴きあがっていたし、気流も不安定だった。並のパイロットでは近づけなかった。きみの腕があればこそ、あの児童たちは救われたんだ」
「板村三佐……でも……」
「私にも同じ年頃の娘がいる」板村は微笑した。「きみはよくやってくれた。直属の上官ではなかったが、誇りに思う」
それだけつぶやくと、板村は敬礼をして踵《きびす》をかえし、歩き去っていった。
これ以上、話しかけられることを拒む沈黙の背が遠ざかっていく。美由紀にはそう思えた。
美由紀のなかにこみ上げてくるものがあった。板村三佐に小学生の娘がいる、そのことは何度も聞かされていた。妻にも娘にも会う時間がない、かつて彼はよくそうこぼしていた。
これからは充分な時間がある。充分すぎるほどの時間が。板村の微笑は、そう告げていたようにも感じられる。
責任はすべて俺がとる、あのとき板村はそういった。だがわたしは、その言葉に甘んじてよかったはずがない。わたしは、理解をしめしてくれた上官を失職に追いやってしまった。
恩を仇《あだ》で返した。入隊して二年、それがわたしの自衛隊に残した結果だった。
すでに会議の参加者たちは廊下を去り、辺りは閑散としていた。美由紀はその静寂のなかにたたずんでいた。
そのとき、背後から笹島の声が飛んだ。「本気じゃないんだろう?」
美由紀は振りかえった。笹島の澄ました顔がそこにあった。
こちらを気遣うような、わずかに憂いを帯びた目。そのまなざしに、かえって憤りが募る。
「なんの話?」と美由紀はぶっきらぼうにきいた。
「いま会議で発言したことだよ。除隊するとかなんとか」
「もちろん本気よ。わたしは上官の前で公言したことを、撤回したりしない」
笹島は頭をかきながら、ため息まじりにいった。「頭に血が昇って、はずみで口にしてしまったことを訂正するのは、けっして恥ではないよ」
「わたしは冷静よ」
「どうかな」
「それって精神科医としての見立て?」
「まあそうだ。岬二尉、きみは幹部候補生学校の在学中に両親を亡くしたとき、その場にいられなかったことをしきりに悔やんでいる。一緒にいれば助けられたのに、とね。二度と同じ後悔を抱きたくないという強迫観念に駆られ、命令無視も厭《いと》わないと判断を下した」
「両親の死の悲しみなら乗り越えたって言ってるでしょ。笹島先生。航空機パイロットの心理分析に詳しいそうだけど、戦闘機乗りの気持ちもわかるの? わたしが生と死についてどう考えているか、本当に理解できるの?」
「きみ自身がわかっているつもりのことでも、実際には……」
「ああ、無意識ね。でもそれって、なんだかちょっと都合よすぎない? だって、本人さえもわからないのに、精神科医の先生だけが無意識の影響を見抜いて、占い師のように自分探しを手伝ってくれるなんて。あなたが間違っているかもしれないっていう可能性はどうして吟味されないの?」
「科学は独断ではないよ。アメリカ精神医学会には、DSMという手引き書がある。すべての理論はそこから導きだされる」
「そう。それなら、わたしにもその手引き書を繙《ひもと》くことで真実がわかるってことよね」
「精神医学は臨床も重視される。実際に患者を前にした経験がなければ困難だよ」
「それなら、次の就職先にそういう仕事を選ぶまでのことよ」美由紀はそういって、廊下を歩きだした。
困惑したような間をおいて、笹島が追ってきた。「待つんだ、岬二尉。医師免許の取得はそうたやすいものではないよ」
「医者になるときめたわけじゃないわ。あなたの理論の是非をたしかめる専門家は、精神科医だけじゃないもの」
「すると、カウンセラーとか? 臨床心理士の資格でもとるのかい?」
「悪くないわね。防衛大はふつうの大学と同じように、卒業とともに学士の学位も授与される。首席卒業の場合、臨床心理士の指定大学院制度から特別に除外されて資格取得条件を満たすって話も聞いたし」
「かなり難しい専門知識を試されるよ。試験も難しいし、そこでも臨床の経験を問われる」
美由紀はふたたび足をとめ、笹島を見つめた。「悪くないんじゃない? 試験に合格するころには、わたしのあなたを見る目も変わるかも」
「僕を疑っているのか? 心外だな」
「いいえ。ただ、真実を知りたいの。わたしはどう思われようとかまわない。でもあなたは、板村三佐までも精神面に問題があるかのように報告して、上官に不適格という印象を上層部に与えた。幕僚監部も異議を唱えなかったし、板村三佐は失職することになる。あなたのトラウマ理論とやらが、さももっともらしく受けいれられる土壌が整っていたせいで、板村三佐はクビを切られた。わたしには、そこが疑問なの。板村三佐は同僚の死をひきずるなんて、そんな弱い人であるはずがない」
「無意識というものは……」笹島は口をつぐんだ。あきらめたような面持ちで美由紀を見つめながら、笹島はつぶやいた。「どれだけ力説しても、現段階では受けいれてはくれないようだな」
「ええ。いまは漠然と感じている疑問を、理論を学ぶことによって証明してみせる。わたしにはその自信があるの。あなたが間違っていたことを上層部に納得させて、板村三佐を復職させる。それがわたしの当面の目標ね」
ふたたび歩きだす。もう立ちどまることはないと心にきめた。
制服をこの身にまとうのも、きょうが最後だ。明日からはまた、未知の荒野に新たな一歩を踏みだすことになる。
「岬二尉」笹島の声が静かに告げた。「幸運を」
それが皮肉だったのか、本心から勇気づけようとしたのか、たしかめるすべはなかった。振り向いてその顔を見たところで、わかることはなにもない。
けれども、いずれはわかるようになる。美由紀はそう思った。心理学なるものを極めれば、人の心について考えもしなかったほど深く精通することができるだろう。
きっとそうなる、美由紀はみずからに言いきかせた。その域に達しなければ、わたしは上官を救うことができない。
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