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千里眼03

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:カウンセラー 透き通った秋の午後の陽射しが降り注ぐ外苑《がいえん》東通りを、岬美由紀はオレンジいろに輝くランボルギーニ・
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カウンセラー

 透き通った秋の午後の陽射しが降り注ぐ外苑《がいえん》東通りを、岬美由紀はオレンジいろに輝くランボルギーニ・ガヤルドのステアリングを切って、本郷方面に向け駆け抜けていた。
納車されてからずっと忙しくて乗ることのできなかったこのクルマは、ランボルギーニというブランドは名ばかりで、中身を作っているのはアウディというしろものだ。だがそれだけに、ドイツ車特有の厳格な設計がドライブ中の安心につながる。eギアというセミオートマも運転しやすい。ディーラーは車体の大きさのわりに運転席が狭いと申しわけなさそうだったが、F15のコックピットにくらべれば充分なゆとりがある。
Tシャツにデニム地のジャケット、ジーパンにスニーカー。平日の昼間からこんな恰好《かつこう》でクルマを転がしていると、いまや自分は無職なのだと痛感する。当面は自衛官時代にほとんど手をつけなかった貯金を食いつぶしていけば、生活に支障はない。が、それにも限度はある。
早いうちに職に就かねば。それも人生において意義のある職に。
本郷通りに入ると、太陽の直射を真正面にとらえた。美由紀はフェラガモの淡いグリーンのサングラスをかけて、まばゆい光線を凌《しの》いだ。視界は若干見えづらくなっても、ほんのわずかな動きにも眼球が反応し、捕捉できる。マッハの速度は、日常生活には過剰なほどの動体視力を養成していた。法定速度を守って運転している身としては、あらゆるものの動きが目に飛びこんできてわずらわしい。
カーナビのしめす番地に着いた。やや古びた五階建ての細いビルの前に、ガヤルドを停める。看板には三階、日本臨床心理士会事務局とあった。
ここか。美由紀はクルマからでて車外に降り立った。街なかだというのに、閑静な環境だった。東大もすぐ近くにある。学ぶ場所としては適した立地のようだ。
ビルの玄関を入って、途方に暮れた。受付もなにもなく、ホールにエレベーターがあるだけだ。仕方なくそれに乗り、三階のボタンを押した。
上昇したエレベーターがほどなく停まり、扉が開く。そこは病院の待合室のように、いくつもの長椅子が並べられた空間だった。明かりは消えていて薄暗い。ひとけもなく、ひっそりとしている。
「こんにちは」美由紀は戸惑いながらも、歩を進めていった。「誰かいませんか」
奥には間仕切りがあって、いくつかの小部屋が存在しているようだ。物音がした。人の気配がする。
扉のひとつが開き、ひとりの男がでてきた。
その男は小太りの体形を茶いろのスーツに包み、髪は七三分けで、口のまわりにひげをはやしていた。不精ものにも見えるが、どこか上品な印象もある。知的な職業に就いている人間特有のオーラかもしれない。年齢は三十代後半ぐらい、手にした書類に目を落として、ぶつぶつとつぶやきながら歩いてくる。
てっきり呼びかけに応じて出てきたのかと思ったが、違うようだ。男は美由紀に気づいたようすもなく、ひたすら書面をにらみながら前進しつづける。長椅子を器用に避《よ》けて歩くことができるのは、ここに長く勤めていることの証明でもあるようだった。
「すみません」と美由紀は男に声をかけた。
髭《ひげ》づらの男はびくっとして顔をあげた。目を丸く見開いて、口をぽかんと開き、美由紀を眺める。
「あのう」驚いた顔のまま、男はつぶやくようにきいてきた。「なにか?」
美由紀は当惑を覚えながらいった。「ここ、日本臨床心理士会の事務局でしょうか?」
「ええ……。まあ、そうですけど。……どんな御用でしょう? ご相談があるなら、カウンセラーがいる時間でないと……。それとも急ぐとか? 家出してきたとか?」
「家出?」
「いや、あの。サングラスとか、してるから。そういう女の子は、ご家庭にいろいろあったんじゃないかと」
そういえば、まだサングラスをかけたままだった。美由紀はそれを外しながら、男を見つめた。「わたし、十代ってわけじゃないんですけど」
男は心底驚いたように、よりいっそう目を丸くしていった。「そうなの? いや、てっきり学生さんかと……。若く見えるね。その服装のせいかな」
少なくとも、この男が口べただということはよくわかった。
ただし、人柄は悪そうではない。嫌味も感じられないし、人と話すのが苦手というだけだろう。臨床心理士という職種の事務局で出会うにしては意外なタイプだった。
「岬美由紀といいます」美由紀は自己紹介した。「臨床心理士の資格取得をめざして勉強したいと思いまして……」
「え? ああ、そうなの? 勉強なら、指定大学院に入って各自がやることだけど……」
「そうなんですけど、臨床心理士の友里《ゆうり》佐知子先生の紹介できたんです」
「へえ、友里先生の……。どういうご関係なの?」
「楚樫呂島救助活動でお会いしまして。友里先生は東京晴海医大付属病院の院長もされてますから、医大に入りなおす道も勧めてくれたんですけど、なるべく早く資格を取得したいので。とりあえずは友里先生の世話にならずに、自分で学習できるところを探そうと思ったんです」
「ああ!」男は口をあんぐりと開けた。「あなたが岬さん? 防衛大を首席卒業したって?」
「はい……」
「こりゃあ、びっくりだ。いや、驚いたなぁ。連絡は聞いてたけど、まさか女の人だなんて」
「臨床に参加させていただけるうえに、資格試験のための指導もしてくださる方がいると聞いてきたんですけど」
「ええ、そうです。私が、そのう、引き受けるといいました。舎利弗浩輔といいます。どうぞよろしく」
「あなたが、舎利弗さん……?」美由紀は戸惑いながらいった。「失礼ですけど……臨床心理士、なんですか?」
「ええ。もう、長いことやってます。先日も五年の期限のIDカードを更新して、六年目に突入したところで。ああ、冷たいもの飲む? マックスコーヒーとかマンハッタン・ダイエットコーラとか、マイナーなものしかないんだけど」
「いえ、お構いなく……。さっき家出とおっしゃいましたけど、そういう少年少女がここに相談に来るんですか?」
「そうだね、たいてい病院や学校などから紹介されて、こちらにまわされてくる場合がほとんどだけど……。あの小部屋はカウンセリングブースで、一対一の対話でいろんな療法を試みるんだよ」
「へえ……」
しばしの沈黙のあと、舎利弗がきいてきた。「渋谷《しぶや》とか、行ったりするの?」
「え? 渋谷の、どの辺りにですか?」
「いや、どこってことじゃないんだけど……。買い物とか、そういうところに行くのかなって。この仕事してると、まともな女の人とはあまり会わないんで……。参考までに聞いておこうかな、と」
「わたしも、まともじゃないって自衛隊ではよく言われてましたけど」
「そうなの? 自衛隊で、どんなことしてたの? 戦車とか乗ったりした?」
「あのう。よろしければ、今後の勉強のために質問したいことがあるんですけど」
「どんなこと?」
「トラウマ論っていうのは、臨床心理学の世界で実在すると証明されてるんでしょうか」
舎利弗は唸《うな》った。「トラウマね……。まあ、そういう理論でもって分析することはあるけど……」
美由紀はため息をついた。やはり、あの百里基地の会議での笹島の発言をひっくりかえすには、みずから知識を身につける以外に方法はないようだ。又聞きというかたちでは、たとえ専門家であっても証明することはできないだろう。
「さっそく教えてほしいんですけど」美由紀はいった。
「いいけど」舎利弗は面食らったようにたずねてきた。「今すぐ?」
「ええ。早ければ早いほどいいので」
「わかった。……じゃあ、ちょっとそこに座って」
長椅子の端に美由紀は腰を下ろした。舎利弗は、何列も前方の椅子に後ろ向きに座った。
「なんでそんなに遠くに座るんですか?」
「あまり女の人に近づいたことがないんで……まともな女の人にはね」
まとも、という言葉を舎利弗はしきりに口にする。臨床心理学のプロの世界では小難しい症名が飛び交っているのではと推測していたが、そうでもないのだろうか。それとも、この舎利弗という人特有の物言いだろうか。
「まず」舎利弗は咳《せき》ばらいをした。「岬さん。心理学という言葉に、どんなものを連想する?」
「心理分析とか、精神鑑定……。インクのしみを見て、どう思うかっていうテストとか。ああ、よくある占いみたいなものも思いつく。何人掛けのテーブルかとたずねて、その椅子の数が将来の子供の数とか」
「それらの類《たぐ》いは、いっさい忘れてくれないか。世に出まわっている心理学という名を冠したもののほとんどは、こじつけじみたお遊びにすぎないんだ。心理学のみならず、大脳生理学とか、人間の感情や思考、人格面に関わる理論とされる事柄には非科学的な迷信が多い。目の動きで心のなかがわかるっていうのも……」
「ああ、ありますね。ええと、右上を見たら見覚えのないものを想像していて、左上を見た場合には以前に記憶したものを思いだしてるっていう……」
わずかに権威性の感じられる顔になった舎利弗が、きっぱりと言い放った。「それも忘れてくれ。非科学的だ」
美由紀は意外に思いながらきいた。「これも事実じゃないの?」
「そう」舎利弗はうなずいた。「臨床心理士になるには、そんなことを信じてちゃいけない」
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