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千里眼04

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:ミラノ イタリアのフィレンツェにある�ノイロサッピアーモ�は、遊園地用のアトラクションを製造する大手企業の子会社にあたる
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ミラノ

 イタリアのフィレンツェにある�ノイロサッピアーモ�は、遊園地用のアトラクションを製造する大手企業の子会社にあたる。
業務内容は、それらアトラクションに使用されるさまざまな|仕掛け《ギミツク》を開発することだった。社名はイタリア語で、我々はそれを知っている、という意味になる。世間をあっと言わせる方法を熟知している会社、そんなさりげない主張をこめた名だった。
しかし、東大の理工学部を卒業してイタリアに渡った小峰忠志《こみねただし》にしてみれば、その会社は想像を超えた発想を生みだすどころか、ただ時代に乗り遅れただけの烏合《うごう》の衆にみえた。
面白そうなギミックが開発できれば買いあげてやる、親会社がそう告げているにもかかわらず、ノイロサッピアーモはメリーゴーランドや観覧車といった古式ゆかしい設備の改良案でお茶を濁すばかりだった。
日本の一流メーカーへの就職試験にことごとく失敗した小峰だったが、それなりの勉強は積んできたのだ。巨大テーマパークの呼び物になるぐらいの斬新《ざんしん》な仕掛けを生みだし、再起への道に第一歩を踏みだしてやる、そう心にきめていた。
にもかかわらず、現状のノイロサッピアーモでは予算の確保どころか、開発チームすら満足に組織できない。仕方なく、定年まぎわで干されていた営業部の男と、電子機器の修理課にいた若者を仲間に加えて、自発的に開発に取り掛かることにした。
小峰が着目したのは、|お化け屋敷《ホラーハウス》やそれをモチーフにした屋内ジェットコースターなどに必要とされる、�存在するものを無いように見せる�技術だった。
世界のテーマパークでは、いまだにこの幻想《イリユージヨン》の実現のためには、鏡を使ったトリックが用いられている。
立方体の箱の中に鏡を斜めに立てておくと、側面の内壁が鏡に反射して奥の壁に見え、なにも入っていないように見えるという古典的なトリック。テーブルの下が透けてみえるようにするときにも、お化けに扮《ふん》したキャストが突然現れる場合にも、すべて鏡の屈折が現象の要《かなめ》になっていた。
「鏡のトリックなんてもう古い」と小峰は、やる気のなさそうな経営陣の前でプレゼンテーションをした。「百年以上前のロンドンの見世物小屋でも、目の肥えた観客から野次を浴びせられていたしろものです。私はこれを根本的に変えてみせます」
小難しい幾何光学の屈折率の求め方や色収差、ザイデル収差の理論などをホワイトボードに書き連ねて粘るうちに、経営陣は耐えきれずに折れた。意味はさっぱりわからんが、きみに賭《か》けてみよう、でっぷりと太った取締役はそういった。ただし開発に失敗したら、その赤字の責任は身をもって償ってもらう。
一年がかりで小峰のチームが作りだしたのは、アクリルとゴムの樹脂を混ぜて作られた柔軟な固体を素材とした、直径三十センチ、長さ四メートルの円筒だった。
透明なこの円筒は、まっすぐにした状態で上部の切断面を覗《のぞ》くと、当然のことながら下部の切断面の向こう側が見える。ところが、この円筒を直角に捻《ね》じ曲げても、やはり下部の切断面から直進した光景を上部切断面が映しだすのだ。すなわち、どんな形にも曲げられる潜望鏡のような物質だった。小峰はこれをフレキシブル・ペリスコープと名づけた。
フレキシブル・ペリスコープは、バッテリーも機材も必要とせず、チューブ自体の光学特性でその現象を発生させる画期的なものだった。光線が異なる媒質の接合面で折れ曲がるという、幾何光学の初歩の定理を生かしたもので、薄いアクリル・ゴム合成樹脂の透明な円盤状凹レンズ、および凸レンズを各二十万枚、交互に重ね、その隙間に水の三・五二倍の密度がある液体キセノンを封じこめ、周囲をゴムで密閉して作られていた。これにより、円筒の端から入った光は、円筒がどう曲がっていようとその内部に沿って屈折して進み、反対側の端に抜ける。
このフレキシブル・ペリスコープ自体は、小峰がめざす開発のまだ初期試作段階にすぎないものだったが、結果を待ちきれなかった経営陣は早急にこれまでの開発実績をしめすように指示してきた。小峰は仕方なく、フレキシブル・ペリスコープの試作品を彼らに見せた。
経営陣は、それが自由に曲げられる潜望鏡という新発明であることは認めながらも、いったいどんなアトラクションの役に立つのだと苛立《いらだ》ちをあらわにした。フレキシブル・ペリスコープ自体で人を驚かせられるのはわずか数秒で、ほどなく観客は、そういう物質もあるのだろうと納得してしまう。遊園地より学者の研究発表会向けだと揶揄《やゆ》する声もあった。
これがゴールではないと小峰は力説したが、経営陣はフレキシブル・ペリスコープ一本を製造するのに七千万ユーロもの巨額の費用がかかるとわかった時点で、どんなかたちであれ、これをアトラクションに活用して元がとれる計算にはならないと判断を下した。小峰の開発チームの三人はいずれも解雇を言い渡された。
ふたたび行くあてのない放浪の旅が始まった。しかも今度は、大いなる挫折《ざせつ》を背負うかたちで。意気消沈した小峰は、ナポリ郊外の安酒場で毎晩のようにウィスキーをあおった。
そんなある日、身も心もぼろぼろになった小峰の隣に、ひとりの女が座った。
その女は小峰のみならず、酒場にいた全員の酔いを醒《さ》ますほどのルックスの持ち主だった。すらりとした長身はスーパーモデル並み、一九五〇年代のヴァカンス・スタイルを思わせる優雅なドレスの着こなし、耽美《たんび》そのものの顔には寸分の狂いもない完璧《かんぺき》なメイクが施され、金髪のロングヘアに縁どられていた。
ミラノ・コレクションのモデルが迷いこんできたのか。小峰は呆然《ぼうぜん》とその女を眺めていた。よくみれば顔はイタリアというより北欧系だ。白い肌は透き通るように美しい。まるでフレキシブル・ペリスコープのように。
「小峰忠志さんね」と女は妖《あや》しげな微笑を浮かべて、声をかけてきた。
驚いたのは、女が小峰の素性を知っていたせいばかりではなかった。彼女が発した言語は、流暢《りゆうちよう》そのものの日本語だったのだ。
「あんた……誰だ?」
「申し遅れたわ」女は名刺を差しだしてきた。「ジェニファー・レイン。マインドシーク・コーポレーション特殊事業課、特別顧問という役職ですの」
「マインドシーク……?」
「ご存じない? 売上高は前年同期比十八パーセント増の三十五億ドル。純利益は四十二パーセント増えて七億六千五百万ドル。急成長の企業ですのよ」
「あいにく、アメリカの会社についちゃ馴染《なじ》みがなくて……」
「そうでしょうね。ノイロサッピアーモに入社以来、一日も休むことなくフレキシブル・ペリスコープの開発に携わってきたんですもの。経済紙に目を通す暇《いとま》すらなかったでしょうね」
「な……」小峰は衝撃を受けた。「どうして知ってるんだ。社内秘扱いだったのに……」
「小社に見抜けない秘密なんてないんですのよ、小峰さん。あなたほどの優秀な人がアトラクション開発業に追いやられ、しかもその業績を無視されるなんて。ノイロサッピアーモも見る目がない会社よね」
「……そうとも。奴らはビジネスの需要のことなんか考えちゃいない。昼間からワインを水がわりに喉《のど》に流しこんで、夜にはなにを食おうか、そればかり話してる連中さ」
「でも彼らは、遊園地に自社のアトラクションが採用されて初めて金を手にできるのよ。どんなアトラクションに転用可能か、思いつかなかったんじゃないかしら」
「それは連中の想像力の欠如だよ。いいかい、フレキシブル・ペリスコープは実験用の試作品にすぎない。たしかにそこまでの開発に時間も金もかかりすぎたが、成功した以上はさらなる画期的な発明につながるはずだった。フレキシブル・ペリスコープは直径三十センチもあるが、これを〇・五ミリにまで極細にする。大量生産ラインをつくって、数百万本を製造する」
「そんなことが可能なの?」
「ああ、素材はグラスファイバーにすべきだけどね。どんなに曲がっていても、内部を光がまっすぐに進んでくれる直径〇・五ミリのファイバー。これをびっしりと隙間なく並べたら、どうなると思う?」
「ハリー・ポッターの消えるマントね」
「そうなんだよ!」小峰は声を張りあげた。「無数のファイバーの端を集めて物体の表面を埋め尽くし、もう一方の端は物体の背後に展開する。もちろんその中間のファイバーは物体を側面から迂回《うかい》する構造だ。このようにすると、光はその物体の向こう側にそのまま突き抜けるため、物体はないように見える。ほんの四、五メートルも離れれば、そこになにかが存在しているなんて疑いもしないはずだ」
「画期的ね」ジェニファーは微笑を浮かべつづけていた。「レーダーに映らないステルス機も目には見えるけど、それで表面を覆えば視認もきかない。パーフェクト・ステルスね」
不穏な空気を感じとり、小峰はジェニファーを見つめた。「軍事面への転用は困る。人の集まるテーマパークで大衆にお披露目して、あとは特許料で儲《もう》けていくビジネスだ」
「もちろん、わかっているわよ。あなたの遊び心に溢《あふ》れた開発精神に乾杯したいわね。そして、これからのわたしたちの未来に」
「なんだって? 僕らの未来?」
「そうよ。あなたの開発、わたしたちが資金提供するわ」
「あ……あの、申し出はありがたいんだが……極細のフレキシブル・ペリスコープ一本を作るだけでも、とんでもない予算が……」
「どうってことないわ。小社はグループ企業なの。あなたの発明にはグループ全体が支援を約束してくれるでしょう」
「そんな」小峰は落ち着かない気分になり、苦笑してみせた。「とても信じられないよ」
「けど、このままじゃただ酔いつぶれているだけでしょ? 将来をみずから閉ざすことになるけど、それでもいいの? あなたの才能は、あなた自身がいちばんよくわかっているはずよ」
しばらく沈黙があった。ウェイターはそ知らぬふりをしてグラスを拭《ふ》いている。店内のほかの客も同様だった。
日本語だ、彼らにわかるわけもない。だが、もしイタリア語だったとしても、誰もが一笑に付す話だろう。泥酔者呼ばわりされてからかわれるのがオチかもしれない。
俺はこいつらとは違う。それをわからせてやる。全世界に。
小峰はジェニファーにきいた。「それで、いつ始める?」
ジェニファーの目が鋭く光ったが、まだ表情には笑みが留《とど》まっていた。
ゆっくりと立ちあがりながら、ジェニファーは静かに告げた。「こちらから連絡するわ」
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