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千里眼13

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:現在 あれからもう、一年以上が過ぎた。いろいろなことがあった。神宮|外苑《がいえん》の銀杏《いちよう》並木、傾きかけた春
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現在

 あれからもう、一年以上が過ぎた。いろいろなことがあった。
神宮|外苑《がいえん》の銀杏《いちよう》並木、傾きかけた春のおだやかな夕陽の下、二十八歳の美由紀は道端に停めたメルセデスベンツCLS550に寄りかかり、空を見あげていた。
石川県での�白紅《しらべに》神社�の一件の後始末を終えて、東京に戻ってしばらく時間が過ぎた。なんの因果関係もない場所で、どうしてあのころのことを思い起こしたのだろう。たぶん、肌に感じるそよ風、気温、黄昏《たそがれ》のせまるこの光景が、あのときとよく似ていたからだろう。記憶はそんなふうに、思いも寄らないタグに引っぱられて表層に浮かびあがってくる。
美由紀は苦笑した。あのとき自殺を図ろうとしていた男性は、いまでは青山通りで最も目立つ瀟洒《しようしや》なビルにオフィスをかまえる、IT業界のエリート社長だ。彼のカウンセリングはほかの臨床心理士が受け持ったが、日増しに心の安定を取り戻し強くなっていく過程は聞き及んでいた。いままで頑張れたのは、彼のおかげでもあるかもしれない。同じとき、同じような不安にさいなまれて生きていた。それが両者ともにスタート地点だった。そして、それぞれの現在がある。
パーキングメーターにコインを投入して、その場を離れようとしたとき、聞き慣れた女の声がした。「美由紀」
振りかえると、待ち合わせの約束をしてあった高遠由愛香《たかとおゆめか》が、質のいいスーツ姿で小走りに駆けてくるところだった。
「ああ、由愛香。早かったね」と美由紀は微笑みかけた。
「このへんにはいくつか店を持ってるから。来やすいのよ」由愛香は派手なアイラインを施した目で、美由紀をいたずらっぽく見た。「もっと稼ぎのいい仕事に転職したら? わたしがオーナーをしてる飲食店の店長なんかどう? 店名も千里眼に変えたら大繁盛」
美由紀は苦笑して、道の向かいにある喫茶店のテラスに歩きだした。「お客さんが嫌がるわよ、なにもかも見透かされる店なんて」
千里眼、か。いまは亡き友里佐知子に代わって、自分がそう呼ばれるのは必然の運命だったかもしれない。占い師のようなあだ名は迷惑ではあっても、わたしは運命を受けいれる。この技能で多くの人の命を救ってきた。これからも、それがわたしの生きていく道なのだろう。
歩調を合わせながら由愛香が嘆いた。「残念ね。あなたが店長になったら、売り上げをごまかすアルバイトもいなくなるのに」
「ああ、そっちの話か」
「そう。あなたも人の顔見て心のなかがわかるなら、経営者の苦悩ってのを理解してくれるでしょ。税金より頭にくるのが従業員の業務上横領。ほんとむかつく」
「お金持ちの家に生まれて、いまも複数の店舗で年商二十億以上を稼ぐ立場で、アルバイトの不祥事がそんなに気になる?」
由愛香は目を丸くした。「コソ泥を容認しろって?」
「そうじゃないけど……バイト料をもう少し増やすとかさ、やり方があるかも」
「冗談じゃないわよ。この手の商売は経費が際限なくかかるの。従業員には角砂糖一個無駄にしてほしくないわね。それが経営者の心理ってものよ」
テラスに着くと、若いウェイターが小走りにでてきた。「こんばんは。きょうもおふたりさまで?」
由愛香がうなずいた。「ええ。いつもの席で」
ウェイターは美由紀ににっこりと笑いかけて、うやうやしく進路を手でしめした。「どうぞ」
その背につづいて歩きだしたとき、由愛香が耳うちしてきた。「彼、あなたに気があるわよ」
「どうしてよ」と美由紀は面食らってささやきかえした。「たぶんあの人、年下じゃない?」
「あなたも若く見えるから。ほんと、女子大生みたいで羨《うらや》ましい」
「ひやかさないでよ」
「とぼけちゃって」由愛香はそういうと、マガジンスタンドから女性向けの雑誌をいくつか手にとってから、ウェイターの薦める席に座った。
美由紀が腰を下ろすとき、ウェイターはその椅子をひいてくれた。座ってから美由紀はウェイターの顔を見あげたが、彼はそそくさと立ち去ってしまった。
「駄目ね」由愛香は雑誌をぱらぱらとめくりながら苦笑した。「女のほうから男に目を合わせちゃ、避けられるにきまってるじゃない」
「でも……真意をたしかめたくて」
「それで、なにかわかった?」
「いいえ……」
由愛香はため息をついて雑誌をテーブルに置いた。「千里眼が、自分に惚《ほ》れてる男の気持ちもわからないの?」
「それは、そのう……恋愛感情だけは読み取れないのよ。男の人の……」
「冗談でしょ。ねえ、美由紀。いまわたし、ちょっといい人見つけて、付きあおうかと思ってるんだけど」
「へえ。よかったじゃない」
「だから、その彼の顔見て、本気かどうか確かめてくれないかな」
「そういうのって困るんだけど……」
「いいから、会うだけ会ってよ。明日の昼、六本木ヒルズで待ち合わせしてるからさ。仕事抜けだして来てくれない?」
まいったな。どう断ろうかと視線がテーブルの上をさまよう。
と、ふと写真週刊誌の表紙の見出しが目をひいた。�旅客機墜落、全員死亡の日!?�
衝撃的な一文に緊張が走る。美由紀は雑誌を手にとった。「これって……?」
「あ、それ? 汚いよね。ショッキングな見出しで、なにかと思ったら、また好摩《よしま》でしょ」
「好摩?」
「知らないの。フリーライターで、売れない貧乏生活から脱却しようとなりふりかまわずでさ。未解決事件の真犯人と接触したとか、与党政権の弱みを握るメールを見つけたとか、捏造《ねつぞう》ばっかり。おかげで名前と顔は知られるようになったけど、胡散《うさん》臭さは満点ね。誰も本気にしないよ」
美由紀は記事のページを探し当てた。フリーライター好摩|牛耳《ぎゆうじ》(43)、またまたお騒がせ情報。今度は旅客機墜落。
顔写真とともに記事があった。美由紀は読みあげた。「ええと……あの好摩がまたもやトンデモな事件の情報を察知したと本誌記者に語った。今度は、十七日の国内便の旅客機が墜落、乗客は全員死亡をまぬがれないというもので……」
「ほんと、やな奴ね。テロや事故の被害者遺族の心情とか、なんにも理解してない。話題になりそうなネタをでっちあげては、マスコミが食いついてくるのを待ってる。自分が遊ばれてるだけってこともわかってないみたいで、すっかり有名人きどり。ああ、やだやだ」
だが、美由紀は思わず我を忘れてその写真に見いっていた。
茶髪で着崩した服装の好摩は、年齢とは不相応な子供っぽさを漂わせてみえる。自己顕示欲が強いのか、目をかっと見開いてカメラに指を突きつけるそのしぐさは、三流のタレント同然という印象だった。
写真に添えられたキャプションには、すべて事実だと本誌記者に豪語する好摩氏、そうあった。中立を装った文章だが、じつは読者とともに彼を小馬鹿にしようとする書き手の意地の悪さが垣間《かいま》見える。
気になるのは好摩の表情だ。下まぶたが緊張した状態で眉毛《まゆげ》を上げ目を見開いている。顎《あご》を下げて口を開け、唇を左右に伸ばす。これは、トラックなど大型自動車を運転するドライバーの表情だとよく心理学のテキストに記載されていた。いつ訪れるかわからない不測の事態に対する警戒心がこの表情をつくるのだという。つまり、目の前に恐怖の対象があるのではなく、漠然とした脅威を感じながら生きていることを意味していた。
好摩が本当に旅客機墜落の事実を知っていて、その秘密を暴露したのだとしたら、この表情は理にかなったものといえる。もちろん、写真がキャプションどおりの一瞬をとらえたものか否かはわからない。別の会話に移ったときに撮られた写真だった場合、表情は意味をなさなくなる。
けれども、美由紀は感じた。この男は真実を語っている可能性がある。
「十七日って」美由紀は店の壁にかかったカレンダーを見やった。「三日後よね」
「やめてよ。美由紀。あなたほどの人がそんなの真に受けないでよ」由愛香はうんざりしたように顔をしかめてから、角砂糖のビンの蓋《ふた》を開けて中を覗《のぞ》きこんだ。「へえ。この店、いい角砂糖使ってる……。家賃高いはずなのに、このクオリティの砂糖を使ってるなんて。よっぽど安く仕入れてるのね。店長呼んで、どこで買ってるか聞こうかな」
由愛香はいい友人だが、セレブを気取ることになんの躊躇《ちゆうちよ》もしめさないという、美由紀には理解しがたいところもある。自分の経営でない店でも、ただの客ではないという態度をとりたがる。もちろんそんなとき、美由紀が気にかけていることに関心をしめしてはくれない。
「ごめん」美由紀は腰を浮かせた。「ちょっと用事を思いだしちゃって」
「嘘? 銀座のレストランの予約は?」
「誰かほかの人、誘って。ほんとに無理いって、ごめんね。また明日電話するから」
「わたしの彼と会う約束、忘れないでよ」
そのことにずいぶん期待をかけているらしい。美由紀は困惑したままテーブルを離れた。由愛香がひさしぶりにわたしに会いたがった理由はそれだけか。
だが美由紀のほうにも、捨て置けない用事ができた。足ばやに店をでながら、美由紀は思った。浅い交友関係、深まらない友情。わたしの周りとのつきあいは常にそこにとどまる。仕方がないことだった。目をじっと見つめただけで、その人とつきあうことはできなくなる。傷つくことを回避するのなら、情を感じないていどの交流に留《とど》めておくしかない。
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