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千里眼21

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:栽培 吉野律子は、植物管理センターのA7棟で仕事をしていた。このビニールハウスのなかはアフリカの亜熱帯地方、および温帯地
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栽培

 吉野律子は、植物管理センターのA7棟で仕事をしていた。このビニールハウスのなかはアフリカの亜熱帯地方、および温帯地方の植物が集められている。そのせいで気温も高く保たれていた。上着を脱いでタンクトップ姿で立ち働いていても、額から汗がしたたり落ちてくる。
人工畑の樹木の高さを巻尺で計っては、クリップボードの書類に記入する。仕事そのものは難しくないが、ひとりでこなすのは骨が折れる。この部署に配属されているのは律子だけだった。増員は当面のあいだ、ありえないと正社員がいっていた。
もっとも、わたしはそれゆえに成立するサイドビジネスを抱えている。いや、そちらのほうがメインビジネスなのだろう。多大な収入は、そこから得ているのだから。
いつまで続くのだろう。律子は不安になった。すぐにでもやめたい、そう思いながら数週間が過ぎている。通報しようとたびたび携帯に手が伸びる。
それでもやめることはできなかった。断ったりしたら、どんな報復がなされるかわからない。
と、足音がきこえた。がやがやという男の声が聞こえる。
またあいつらか。律子はため息をついた。いちど味をしめたら、何度もやってくるようになった。いい迷惑だ。
「律子」ろれつの回らない舌で、若い男が告げた。「りっちゃん。遊びにきたよ」
振りかえると、前よりも連れが増えていた。きょうは四人だ。リーダー格のキヨシという男と同様、池袋のチーム崩れの不良といういでたちをしている。いや、もっと悪い。シンナー遊びの常習なのだろう、とろんとした目に涎《よだれ》をしたたらせていた。まともな神経とは思えない。
新たに加わった仲間はずいぶん図体《ずうたい》のでかい男だった。プロレスラーのように厚い胸板、たくましい二の腕が黒いシャツから浮きあがってみえる。
配送を受け持つC棟は、人手不足がわざわいしてこんな危なげな連中までも大勢雇い入れている。たいてい日雇いの労働者だが、キヨシのように連日勤める常連も多い。過酷な労働に見合わない低賃金のせいで、きちんと働ける人間は寄りつかない職場になってしまった。労働時間内にもかかわらず持ち場を離れて、敷地をうろつく輩《やから》も少なからずいるのだが、監視側の正社員の数も極端に少なくて目が届かないらしい。
キヨシは、身につけた銀製のアクセサリーでじゃらじゃらと音をたてながら歩み寄ってきた。「仲間、連れてきたからさ。きょうも例のモン、分けてくれよな」
「……もうないよ」と律子は答えた。
「あ? 馬鹿いうなよ。山ほどあっただろうが」
「ほんとだって。やばくなって撤去しちゃったから、一本も残ってないの」
律子を見つめるキヨシの目が、怪しく光った。半笑いで仲間を見やる。
三人の仲間たちは、ふいにパソコンの載せてあったキャビネットをひっくりかえした。機材がけたたましい音をたてて散乱する。さらに、畑の樹木を引きちぎったり、枝を折ったりしはじめた。
「やめてよ!」律子はキヨシに駆け寄った。
ところが、キヨシの右手が律子の喉《のど》もとをつかみ、絞めあげてきた。
激しい痛みと、呼吸のできない苦しみ。律子はむせながら暴れたが、キヨシはその脆弱《ぜいじやく》そうな見た目にもかかわらず、万力のような握力を発揮していた。
「ふざけんなよ」キヨシは低い声でいった。「さっさと出せ。待ちきれねえんだ」
「無理……だってば」律子はかろうじて、かすれた声を絞りだした。「あれは、売り物だし……あまり数が減ったら、怒られちゃうし……」
「しったことかよ。出せ」キヨシは仲間たちを振りかえった。「おめえら、捜せ」
好き勝手に暴れるキヨシの仲間たちを見て、律子は制止に駆け寄ろうとした。が、不可能だった。キヨシの手はなおも律子の首を絞めあげている。
息ができない。意識も朦朧《もうろう》としてきた。
どうしてこんなことになったの。ずっと状況が改善されずに、悪い方向にばかり傾いていく。わたしがいけなかったのか……。きちんと生きてこなかったから。優柔不断に、気ままに暮らしてばかりいたから……。
と、その瞬間、弾《はじ》けるような音が耳をつんざいた。
キヨシの仲間のひとりが放物線を描いて飛び、畑の樹木をなぎ倒しながら転がった。ふざけてダイブしたのかと思ったが、違ったようだ。その男は大の字になって横たわったまま、失神したのかぴくりとも動かない。
律子の首からキヨシの手が離れた。律子は両|膝《ひざ》をついて、呼吸しようとあえいだ。
顔をあげると、キヨシと残るふたりの仲間たちが、凍りついたように戸口を見つめて立ちつくしていた。
彼らの視線の先に、ひとりの女が悠然とたたずんでいる。畑に伸びている男を吹き飛ばしたのは、彼女らしい。
律子は衝撃を受けた。見覚えがある。さっき正面入り口で声をかけてきた女だ。たしか名前は、岬美由紀といった。
美由紀は不敵な態度でいった。「渋谷にまだこういうのがいたの? ここで栽培されてる天然記念物って、木や草だけじゃなかったのね」
 美由紀は三人の不良をひとりずつ眺めた。どの顔も目が異常なほど血走っている。
薬物作用かと美由紀は思った。三人はシンナーを摂取しているのだろうが、リーダー的立場にあるらしい痩《や》せた男は、おそらくもっと強烈な陶酔作用にさらされているようだ。
巨漢の男がリーダーにたずねた。「キヨシ、どうする?」
キヨシは吐き捨てるようにいった。「遊んでやれ」
すでに倒した男も含めた四人のなかでは、最も腕っぷしの強そうな巨漢が美由紀めがけて突進してきた。
しかし美由紀は素早く体《たい》を入れ替え、後ろ足を跳ねあげて身体を海老《えび》のように反らし、男の顔面に後蹴腿《こうしゆうたい》のキックを浴びせた。男は空中で半回転して、背中から地面に叩《たた》きつけられた。
もうひとりが鎖を振りまわしながら襲いかかってきたが、美由紀は身体をひねりながら旋風脚で男の手首をしたたかに打ち、鎖が宙に舞った瞬間、そのがらあきの手を握って相手を引き寄せ、横っ腹に手刀を浴びせた。
その男が床に崩れ落ちるころには、美由紀はひとり残ったキヨシに向き直っていた。キヨシは怯《おび》えきった表情でたたずんでいたが、やがて虚勢がみえみえの態度で近づいてきた。
「おまえ。俺がこいつらと一緒だと思……」
最後まで聞いている暇はなかった。美由紀は素早くキヨシの腕をつかんで捻《ひね》りあげた。
「痛い」キヨシは情けない声をあげてのたうちまわった。「痛い痛い痛い……」
「あなたたち、誰?」美由紀はきいた。「好摩って人にお金でも貰《もら》ったの?」
ところがそのとき、律子がいった。「ちがうの……。その人たちは好摩さんとは関係ない。そのう。わたしがいけないの……」
妙に思った美由紀が手の力を緩めると、キヨシは地面を這《は》うようにして逃れた。
起きあがった巨漢が、ふらつきながら畑のなかの男を助け起こす。美由紀がにらみつけると、四人はすくみあがったように静止した。
美由紀は告げた。「さっさと消えて」
キヨシとその仲間たちは、足をもつれさせ、顎《あご》を突きだしながら戸口へと駆けていった。
と、ちょうど笹島が駆けこんできたところだった。笹島はぶつかりそうになり、あわてたようすで脇にどいた。四人が逃げ去っていくのを笹島は呆然《ぼうぜん》と見送り、それから美由紀に目を向けた。
「捕まえたほうがよかったかい?」笹島はきょとんとした顔でたずねてきた。
事情を把握できていないのはその表情を見ればわかる。美由紀はいった。「別にいいわ。っていうか、まだデニーズにいるんだとばかり思ってたけど」
「ぜんぜん律子さんが現れないんでね。ひょっとして臆測《おくそく》が違ってたんじゃないかと思って、しのびこんできた」
律子が呆然としてたずねた。「わたし? デニーズに行くなんて約束したっけ」
「気にしないで」美由紀は散らばったパソコンの機材を拾いはじめた。プリンターの蓋《ふた》が開いて、インクカートリッジがばら撒《ま》かれてしまっている。
「あ、わたしがやるから」律子が走ってきて、美由紀の近くにしゃがんだ。「その……助けてくれてありがとう。警察の人?」
「いいえ。でも安心して。味方だから」
「こんなに広い敷地なのに、どうしてここが……」
「通路のあちこちで鉢植えが倒れてたの。傍若無人な振る舞いの人たちが、それらをなぎ倒しながら歩いたってことね。そして、鉢が長いこと横になってたのなら、植えてある茎は光に向かってまっすぐ伸びようとして直角に折れる。寝ている茎ほど倒れてからの時間が短いってこと。つまり、通っていったルートがわかるのよ」
笹島はまだ腑《ふ》に落ちないようすで、ぶつぶつ言いながら樹木の位置を正していた。「ちゃんと働いているのなら、どうして爪のなかがあんなに綺麗《きれい》だったんだろ」
美由紀は思わず苦笑して、笹島に告げた。「前もって石鹸《せつけん》をひっかいて、爪のなかを石鹸の破片で満たしておくの。そうすれば土は入らないし、洗ったらすぐに流せる。イギリスみたいなガーデニングの国じゃ常識。そうでしょ、律子さん」
「ええ」と律子がうなずいた。
面食らったようすの笹島が裏がえった声で叫んだ。「なんだよ。わかってたなら、教えてくれればいいのに」
「聞く耳持った?」美由紀はインクカートリッジを載せたトレーを手に立ちあがった。「ねえ、律子さん。さっきの人たちが襲撃してきたのはあなたのせいって、どういうこと?」
律子はためらいがちに口を開いた。「わたしね、十五のときに家出して、田舎からでてきて……。十八歳になる前はずっと年を偽って都内で生活してたの。いろんなバイトして、なんとか食いつないで……。けど、ずいぶん前から、悪い癖が抜けなくて……」
「レジのお金のことね」
「うん……。初めはここまでのバス代をちょっと借りるだけのつもりだったんだけど……。だんだん食費とか、ちょっとした買い物代とか、レジから持ちだすようになっちゃって……」
「好摩が現れたのは、それからしばらくしてからのことね?」
「なぜかレジ泥棒の話を知ってて……わたしだってことも気づいてたみたい。しかも、ここで働いていることまで知ってた。あの人、ばらされたくなかったら、言うことを聞けって……。ここでしかできないことだから、わたしに頼むんだって言ってた」
「なにを頼まれたの?」
また律子はわずかに抵抗の素振りをしめし、黙りこくった。
「安心して」と美由紀はいった。「ニュースまだ観てないの? 好摩は自殺したのよ」
「自殺?」と律子は驚きの声をあげた。
「ええ」
「そう……。こんなこと言っちゃいけないかもしれないけど……よかった」
しばらく沈黙があった。律子は意を決したようすで立ちあがり、畑の隅に歩いていった。
青いビニールシートに囲まれた一角がある。律子はシートを引っ張って取り除いた。
その向こうに現れたのは、深紅色の花を咲かせた、どこかエキゾチックな雰囲気を漂わせる植物の一群だった。
笹島が目を丸くした。「そいつは……?」
美由紀はすぐに気づいた。「ケシね。それもコーカサス・シベリア産のハカマオニゲシ。栽培が禁止されてる、麻薬の原料になる植物」
「そうなの」律子が憂鬱《ゆううつ》そうにつぶやいた。「好摩って人が持ちこんできたものを、ここで栽培させられたの」
「これだけの量があれば、かなりの阿片《あへん》が精製できるでしょうね。そこからヘロインが作れる。近ごろ海外ではケシ畑が宇宙から発見されることが増えて、摘発が進んでる。輸入も減って高価になってるから、国内で栽培すれば利益を独占できる」
おそらく好摩は、この施設にまず目をつけ、そこで働いているアルバイトのなかから利用できそうな人材を見つけだしたのだろう。それが律子だった。
こっそりと律子を尾《つ》けて監視し、中華料理店でレジの金を盗んでいるのを見た。取材の名目で店を訪ね、律子を精神的に追い詰める一方で、口止め料の代わりとしてケシ栽培を強要した。
笹島が腕組みをした。「警察にいうべきだろうな」
美由紀は律子に目を向けた。律子は目を閉じてうつむいていた。
「いえ」美由紀はいった。警察が動くのを待ってはいられない。「通報はもう少し先送りにするわ。律子さんは脅迫を受けていて、やむをえずケシを栽培しただけ。そのことを立証するためにも、売買ルートを洗いださないと」
律子が驚いた目で美由紀を見つめた。「わたしのために……?」
「いったでしょ。わたしたちは味方よ」と美由紀は律子に微笑みかけた。
「しかしなあ」笹島が頭をかいた。「旅客機とこれがどう結びつく?」
「まだわからないけど、好摩の細い線をたどるうち、どんどん太くなっていることはたしかでしょ。きっと手がかりは得られるわ。……律子さん、生長しきったケシはどうしろって言われてたの?」
「袋に詰めて横浜の関内《かんない》にある……ええと、ケインって店に持っていくようにって。日没後なら、常時受けつけてるって言ってた。わたし以外にも、栽培している人たちが大勢いるみたい」
すると、好摩につながっていた一味はいまもまだ勢力を保っているにちがいない。
畑に密集して茂るケシに目を向ける。美由紀はつぶやいた。「納入するふりをして、紛れこむのがいちばんね」
「本気かい?」笹島が呆気《あつけ》にとられたようにいった。「密売屋にケシをくれてやるってのか」
「ただあげるわけじゃないのよ」美由紀はインクカートリッジをつまみあげた。「三年前のこと、まだ覚えてる?」
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