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千里眼27

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:大久保駅 首都高四号線を中央道方面へ、朝のラッシュ寸前の道路状況を駆け抜けて、新宿出口で降り、山手通りから大久保通りへ。
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大久保駅

 首都高四号線を中央道方面へ、朝のラッシュ寸前の道路状況を駆け抜けて、新宿出口で降り、山手通りから大久保通りへ。ノンストップ、赤信号も突っ切った。美由紀にとっては充分すぎるぐらいの安全確認をしているつもりだったが、助手席の笹島には暴走以外のなにものでもないらしい。ときおりびくっと身をのけぞらせていた。
それでも笹島は、小言は口にしなかった。わたしを信頼してくれているのだろうと美由紀は思った。こんなふうに心が通うなんて、夢にも思わなかった。しかしいま、彼はわたしにとってかけがえのない存在となりつつある。
孤独に終止符を打つときが来たのかもしれない。この局面さえ、無事に乗りきれば。
古い商店街のなかを突っ走り、大久保駅のガード下でブレーキを踏みこむ。メルセデスは急停車した。
エンジンを切ってクルマの外に飛びだす。路上駐車もやむをえなかった。改札への階段を一気に駆けあがり、券売機の脇にいた駅員めざしてまっしぐらに突き進む。
正直に話していたのでは、時間がかかりすぎる。嘘はきらいだが、いまはやむをえない。
美由紀は駅員に大声で告げた。「鉄道警察隊新宿分駐所の岬です。埼京線のマグロの所持品がここに預けられているって話なので、至急調べてくれませんか。このままだと現場検証が長引いて、スジを寝かせたり殺したりしなきゃいけないんで……」
駅員はこわばった顔で駆けだした。「すぐ本屋、行ってきます」
ぜいぜいと息をきらしながら、笹島が追いついてきた。「なんだって? マグロにスジって?」
「信じてもらえるように駅員さんの慣用句を使ったの。マグロは轢死体《れきしたい》、スジを寝かせるってのは列車を遅くすることで、殺すっていうのは運休すること。本屋は駅長室」
「なんでも知ってるんだなきみは……。ただし、嘘はつけない性格なんだな。やたらと瞬《まばた》きが増えてる。心理学者ならすぐに見抜けるよ」
美由紀は思わず苦笑した。「そうかも……」
 大久保駅の駅員がマスターキーで構内のコインロッカーをあらかた調べ終えたころには、もう太陽は高い位置まで昇りつめていた。正午が近づいている。
美由紀はコインロッカーの連なる通路で時計を見あげた。十一時三十二分。暮子は邪魔が入ったことに気づいただろうか。先回りしたとは考えにくいが、いまに至って姿をみせないのも気になる。
「これでぜんぶですな」駅員はコインロッカーの扉を開けて、なかをしめした。
「ご覧のとおり、ヴィトンのバッグもなければ、怪しげなものひとつ見当たりませんが」
「へんね……」美由紀はつぶやいた。
笹島が硬い顔で歩み寄ってきた。「あの眼鏡の男は最後まで嘘をついてたってことか」
「いいえ。そんなはずはない。……爆弾の在り処《か》を告げたときの彼の顔は、まぎれもなく真実を語ってた」
「でも、それじゃ話が通じないだろ。さっき駅長も言ってたが、この駅で荷物を預かることができるのはコインロッカーだけだ」
「そうよね、でも……。嘘じゃなかったとすれば、わたしたちが聞き誤ったとか?」
「眼鏡の男はたしかに大久保駅と言ったよ。……あ、だけど……」
「なに?」
「ほかに大久保駅ってなかったんだっけ? JRじゃなく私鉄とかは?」
「新大久保駅なら隣にあるけど、同名の駅は……」美由紀のなかに浮かびあがる記憶があった。衝撃を受けながら美由紀はいった。「都内に限らなければ、ほかに二箇所、大久保駅はあるわ。秋田県の奥羽本線と、兵庫県の山陽本線」
笹島が面食らった顔をした。「秋田に兵庫だって!?」
そのとき、笹島の肩越しに、しかめっ面のふたりのスーツ姿の男たちが見えた。うちひとりが、駅員に話しかけている。鉄道警察隊の岩国だが……。
駅員が応じる。あ、いまちょうど、新宿分駐所の岬さんという女性のかたが……。
まずい。たぶん駅長が分駐事務係に連絡をとったのだろう。美由紀は笹島の手をひいた。
「どうした?」と笹島がきいた。
「いいから、走って」美由紀はそういいながら駆けだした。
「まて!」背後から野太い声が追いすがる。
美由紀は笹島の腕をつかんだまま、階段を駆け降りた。柱の陰に隠れてやりすごしてから、駐車中のメルセデスに急ぐ。
と、笹島が足をとめた。「手分けしよう。僕は兵庫にいく。きみは秋田をめざしてくれ」
「それなら、クルマで東京駅まで一緒に……」
「いいんだ、タクシーをつかまえてから最短ルートを考える」笹島は言いながら踵をかえし、走りだした。「きみも急いでくれ。あとで携帯で連絡を取りあおう」
「わかったわ」美由紀は怒鳴りかえして、クルマの運転席に乗りこんだ。
秋田か。東北道を全速力で北上しても、かなりの時間がかかる。どこかで別の移動手段に乗り換えねばならない。新幹線か、飛行機か……。
と、エンジンをかけようとした手が、ふととまった。
大久保駅に隣接した建物を、視界の端にとらえたからだった。
あれは……。美由紀は息を呑《の》んだ。
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