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千里眼49

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:ウェルダン 芝生の丘を歩きながら、美由紀は香苗にきいた。「いつからここにいるって認識してる?」「きのうから」香苗は並んで
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ウェルダン

 芝生の丘を歩きながら、美由紀は香苗にきいた。「いつからここにいるって認識してる?」
「きのうから」香苗は並んで歩を進めた。「目が覚めたら、噴水の近くにいて……。あちこちさまよって歩いたら、さっきの家に行き着いたの。厳島咲子先生の家に」
「それで悩みを打ち明けたのね」
「有名な先生だったし、ひと晩泊めてくれるって言ったから……。岬先生とも離ればなれだったし、不安で……」
「いいのよ。これからはずっと一緒にいるから、心配しないで」
「ここって……いったいどこなの?」
わからないと告げたら憲兵隊に連行される。美由紀は慎重に言葉を選んだ。「チェチェンやその周辺国でないことだけはたしかね。ロシア大使館の人が嘘をついていた気配はなかったけど、結果的に説明とは異なる場所にいざなわれたことになる。ほかの人たちも同様なのかな」
「厳島先生は、テレビ局から自宅に帰る途中、クルマのなかで眠っちゃって、目覚めたらここにいたって話してた」
「そう。拉致《らち》された経緯はみんな似たり寄ったりなのね」
「岬先生……」香苗は足をとめた。「やっぱり……気になって仕方がないの。厳島先生と会話してるうちに、はっきりと頭に浮かんだのよ。たしかにお父さんのマンションの部屋だったの。品川の武蔵《むさし》小山《こやま》、カーサ小山台ってマンション。いまでも、お父さんは独りでそこに住んでる。玄関を入ってすぐの廊下だった。間取りもなにもかも、間違いないのよ。お父さんは、まだ幼稚園に入ったばかりのわたしを……暴行したのよ……」
「香苗さん……」
「ぜったいに、記憶違いじゃないの。思いだしたのよ」香苗は目を潤ませ、声を震わせながらつぶやいた。「変な話だけど……暴行されている自分を、少し離れたところから見ていたような記憶があるの。本来なら、わたしの目線で記憶しているはずなのに……。厳島先生によると、それは一時的に幽体離脱みたいなものが起きて……」
「そんなの、ちがうわよ。いわゆる離人症性障害の可能性がある。それほどありえないことじゃないわ」
「離人症性障害……?」
「重大な心的外傷を体験した人にはときどき起きうるとされてる症状で……自分があたかも外部の傍観者であるかのように感じたりする体験のこと。暴行が事実だったとすれば、そんなふうに記憶の変異が起きてもおかしくないかも」
「やっぱり……。わたし、あの出来事が人生を変えてしまったように思えてならないの」
「だから、そこまで思い詰めないで。PTSDとトラウマ論は似て非なるものなの。わたしが力を貸すから、結論は急がずに、症状を少しずつ……」
ふいにファンファーレが鳴った。美由紀の携帯ゲーム機が大音量を発している。
いやな予感がする。美由紀はゲーム機の液晶画面に目を落とした。
�第三章�と表示が出ていた。
�逃げ延びて、渓谷の近くの館《やかた》に辿《たど》り着け�とある。
香苗の悲鳴がきこえ、美由紀は顔をあげた。
いつの間にか背後に、槍《やり》と盾を手にした兵士が五人ほど身構えていた。
弓兵も三人、その後ろには貴族を乗せた馬車がある。
兵士たちは槍で威嚇してきた。香苗は泣き叫びながら、四つん這《ば》いになって逃げ惑っている。
こみあげる怒りとともに、美由紀はつかつかと兵士たちに歩み寄っていった。
兵士のひとりが美由紀にも槍を向けてきた。掛け声のように兵士は告げた。「ほら、走れ。逃げ惑え!」
「悪いけど」美由紀は低くいった。「逃げる必要なんて感じないの」
美由紀はしばし黙ってたたずむと、素早く槍をつかんで手前に引いた。
不意を突かれた兵士が前かがみになったところに、軽く跳躍して顔面に膝蹴《ひざげ》りを浴びせる。兵士が仰向《あおむ》けに倒れる寸前、美由紀はその腰の剣の柄《つか》を握り、鞘《さや》から引き抜かれるにまかせた。
鎖《くさり》帷子《かたびら》が地面に叩《たた》きつけられて、騒々しい音を奏でる。兵士たちがいっせいに振り向いた。
彼らの時代のヨーロッパの剣は両手で扱うが、正確な構え方は知らない。美由紀は日本刀のように�手の内�で保持し、五行の下段の構えで油断なく立った。
「防衛大の学友会で剣道部にも所属してたけど、忙しくて全国大会に出れなかったのが心残りでね。ここで不満を解消させてもらうわ」
四人の兵士たちは美由紀を取り囲み、同時に襲い掛かってきたが、美由紀はすでに四方斬《しほうぎ》りの構えに入っていた。
剣を斜め前方に打ち抜き、兵士の鎧《よろい》の胸部を突く。振りかぶりながら九十度まわってふたり目の肩を打ち、真後ろを振りかえって兜《かぶと》に剣を振り下ろす。さらに直角に向きを変えて正面から挑んできた敵を水平に打ち抜いた。
両刃《もろは》の剣《つるぎ》では峰打ちはできないが、鎖帷子や鎧の部分を狙って打撃を与えた。敵に激痛を与えて一時的に麻痺《まひ》させるには、それで充分だった。
四人の兵士は、ばたばたと倒れていった。
間髪を入れずに剣を構えて弓兵の懐に飛びこむ。と、矢を弾《はじ》く余裕さえない弓兵らは武器を投げだし、逃走をはかった。
唯一取り残された貴族が、馬車の上から緊張した面持ちでこちらを見下ろしている。
美由紀は剣を投げ捨てると、一本の矢を拾って逆さに持ち、馬車を引く馬の尻《しり》を思いきり叩《はた》いた。
馬は前足をあげて甲高い鳴き声を発すると、駆足《ギヤロツプ》で全力疾走を始めた。貴族は馬車から降りることさえできないようすで、悲鳴とともに遠ざかっていった。
静寂が戻ると、美由紀は香苗を見た。
香苗は尻餅《しりもち》をついたまま、呆然《ぼうぜん》と美由紀を見あげていた。
「立てる?」と美由紀は手を差し伸べた。
「ええ……」ゆっくりと立ちあがってからも、香苗はまだ信じられないという顔をしていた。「岬先生、こんなに強いなんて……」
「そうでもないわよ。鎧なんか身につけてるせいで、みんな動きが遅かったし」
そのとき、背後から男の声が飛んだ。「いや、兵士たちは精鋭ぞろいだよ。剣道というより剣術だな。実戦的な動きが身についている」
日本語か。美由紀は警戒しながら振りかえった。
ところがそこに立っていたのは、燕尾服《えんびふく》を身にまといながら、鶏の頭部を模したゴム製マスクをすっぽりと被《かぶ》って顔を隠した、背の低い男だった。
また妙なのが現れた。
美由紀はひそかにため息をつきながらたずねた。「日本人?」
「ノーコメント」と男はいった。「私のことはウェルダンと呼んでもらいたい」
「ウェルダン……。焼き鳥になるつもり?」
「いいや。よくできた参加者の前に現れるという、それだけの役割だ」ウェルダンはまだ地面に横たわっている兵士たちに声をかけた。「ほら、撤収しろ。これ以上の醜態をさらすな」
兵士たちは呻《うめ》き声をあげながら起きあがり、びくついた目を美由紀に向けながら立ち去っていった。
美由紀はウェルダンを見た。「わたしの評価が上がったってことかしら」
「そうでもない。いうなれば、予想以上の強靭《きようじん》さを発揮したというだけだ。本当なら峡谷の近くまで逃げてほしかったんだが、追っ手を撃退するとはね。だから私はきみらを、行くべき場所までいざなうために出てきた」
「そのふざけた鶏のマスクはなんのために被ってるの?」
「当然、きみに本心を見抜かれないようにするためだ。きみは表情の変化から感情を読むのが得意らしいからな」
「嘘をつく気でもないかぎり、感情を隠す必要もないと思うけど」
「そうは思わんね。本来は姿を見せない私の感情をきみが知った時点で、ほかの参加者より優位になってしまう。それでは不公平というものだ。さあ、こちらへどうぞ」
ウェルダンはさっさと歩きだし、丘を下っていく。
美由紀は香苗の手を握った。香苗はただ呆気《あつけ》にとられているようすだったが、美由紀がうながすと、歩調を合わせてついてきた。
歩きながら美由紀はウェルダンにきいた。「公平を期するということは、この場はなんらかの競技なわけ?」
「ゲームではあるが、競技かどうかは微妙だな」
「超能力者を集めている以上、この土地に埋もれているなにかを探させようってことかしら」
「ご名答だ、千里眼。デンマークが五百近くもの島々からなる国であることは知ってるな? ここはその島のうちのひとつだと言ったら?」
「嘘でしょ。それなら日本との時差は八時間あるはず。正午ぐらいに電話をかけたのに、日本は勤務時間帯だった」
「そのとおりだ。しかし建造物を見ればわかるように、ここは紛れもなくデンマーク王国の領土だった場所でね。位置はロシアの近海で、日本との時差もほとんどない。ロマノフ王朝のピョートル三世の死後、息子のパーウェルがデンマーク王クリスチャン七世にホルシュタイン公爵位を譲ったとき、同時に譲渡された島だ」
「それが本当だとして、どこの国に属する島になるの?」
「現在はロシア政府が管理しているが、住人はいない。今回にかぎってレストランの従業員など世話係や警備員、監視員を送りこんでいるが、ふだんはゴーストタウンだ。ここにはロマノフ家の財宝が埋まっているんでね」
香苗が面食らったようすでいった。「財宝?」
「そう」ウェルダンの鶏の首が大きく縦に振られた。「ロシア革命時に埋蔵されたという、莫大《ばくだい》な量の金塊、もしくは骨董《こつとう》品や宝石の数々。ニコライ二世が文献に書き残している以上、その存在はたしかなものとされている。そしてロシア政府は長年の調査の結果、財宝はこの島に埋まっているとの有力な情報を得るに至った」
「くだらない」美由紀はつぶやいた。「財宝探しのために、透視能力のありそうなニックネームや肩書きを持つ人間を、片っ端から誘拐して集めたってわけ」
「誘拐したわけじゃないよ。ちゃんと事前に各国大使館員を通じ、了解を得ていたはずだ」
「チェチェン難民の救済活動って話だったのよ。どこが了解よ」
「嘘ではないんだ。難民救済のためにも莫大な資金が必要になる。ロシア政府が頼ることができるのは、嘆かわしい話、祖先の遺《のこ》してくれた資産だけでね。説明どおり、正当なボランティア活動にご協力を願ったまでだ」
「薬で眠らせて、こっそり国外に連れだしたことが、拉致《らち》じゃないっていうの?」
「島の位置や当局の目的を知られないために、やむなく用いた方法だ。決して悪気があったわけではない」
洋館が見えてきた。窓の外の風景を油絵に描いていた人々がいる建物だ。
その向こうに峡谷が広がっている。兵士たちに守られた橋が小さく見えていた。
と、その橋を渡っていく者がいる。
金髪の痩《や》せた男。背恰好《せいかつこう》からすると、美由紀が最初に言葉を交わしたフランス人青年かもしれない。
「ああ」とウェルダンも橋のほうを眺めながらいった。「またひとり合格者がでたようだ」
美由紀はきいた。「彼は財宝を見つけたってこと? それとも、見つけられる力があると証明できたってことかしら?」
「そのうちわかるよ。第四章をクリヤーしたら……」
ゲーム機のファンファーレが鳴った。
また液晶画面を見やる。表示があった。
�第四章・館《やかた》に入って指示に従え�
「で」美由紀はウェルダンに目を戻した。「この章をクリヤーしたら、どうなるって?」
「先のことは教えられん。私の役目はここまでだ。健闘を祈っているよ、千里眼。さらばだ」
ウェルダンはそう告げると、身を翻して走り去っていった。
美由紀は香苗を見た。香苗も美由紀を見かえした。まさしく狐につままれたような顔をしている。
たぶんわたしも同じ表情を浮かべているのだろう、そう思いながら美由紀は手を差し伸べた。「中に入りましょう」
「ええ……」香苗は不安そうに、美由紀の手を握った。
香苗の手をひきながら、美由紀は鼓動が波打つのを感じていた。ゲームは終わりに近づいている、そんな予感がする。このシュールな世界の真実とは何だろう。なにが待ち受けているのだろう。誰にもわからない。千里眼なら見通せるのだろう。あいにくわたしは、真の意味での千里眼ではない。
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