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千里眼67

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:再会のとき 常磐《じようばん》自動車道の千代田石岡《ちよだいしおか》インターチェンジを下りて、国道六号線を水戸《みと》方
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再会のとき

 常磐《じようばん》自動車道の千代田石岡《ちよだいしおか》インターチェンジを下りて、国道六号線を水戸《みと》方面に、さらに三五五線、県道五九号線へとガヤルドを飛ばす。古くからある商店街を抜けて、トヨタ系ディーラーがある角を折れて、ひとつめの信号を左折。
ナビなど見なくても、道筋は美由紀の頭に入っていた。クルマで何度も都内と往復しただけでなく、このナビ画面にあるような俯瞰《ふかん》の視点から地上を何度も眺めたことがある。
田舎の平野に存在する広大な敷地。百里《ひやくり》基地の正門が見えてきた。
「着いたぁ」助手席の藍がいった。「思ったより早かったね」
美由紀は思わず笑った。わたしのほうは、地上を走らねばならないもどかしさのせいか、ずいぶん長い道のりに感じたのに。
かつての職場に舞い戻った後ろめたさはなかった。きょうの基地は、いつもとは様変わりしている。
航空祭の日の基地を、美由紀は現役時代にいちども目にしたことがなかった。その日、首都圏防衛を担う九部隊二千人の隊員たちの大半は、近隣の別の基地で普段どおりの業務に就くことになっている。いつスクランブル発進を命じられるかわからないアラート待機中のパイロットたちも、一時的にその居場所を変えているにすぎない。
そんな主力部隊の留守どきの基地は、まるで遊園地に生まれ変わったようだった。色とりどりの巨大バルーンがそこかしこに揺らぎ、青空には花火とともにブルーインパルスのアクロバット飛行が繰り広げられている。
駐車場にガヤルドを停めたとたん、藍はドアを開けて飛びだした。頭上を見あげて藍は叫んだ。「わー、すごーい! あんなにくっついて飛んでる! 飛行機雲で星とかハートとか描いてるよ」
美由紀もクルマを降りながら空に目を向けた。「スタークロスにバーティカルキュービッドかぁ。懐かしいね。タッククロスもデルタループもさらに腕があがったみたい。もう世界有数のレベルね」
「ねえ、美由紀さんもああいうことやれたの?」
「わたしはデモンストレーション・フライトの専門家じゃなかったし……」
つぶやきは自然に途絶えた。駐車場から会場につづく人波のなかで、美由紀の注意が喚起された。
一般客のなかに、見覚えのある人がいた。頭に白いものが混じった四十代後半の男。ややふっくらした顔つきになったようだが、それでも精悍《せいかん》さが感じられるあたり、現役のころの面影がある。カジュアルな服装だが、制服姿と同じ威厳が感じられた。
美由紀はその男を追って声をかけた。「板村《いたむら》三佐」
航空自衛隊の上官には珍しかった、温和で控えめな性格で知られる板村|久蔵《きゆうぞう》元三等空佐が、なぜかびくついたようすで振り向いた。
目を丸くして、板村は美由紀を見つめた。「まさか……。岬美由紀か?」
「おひさしぶりです。ここにおいでだったなんて……」
「岬」ようやく板村の顔に笑いが浮かんだ。「きみが航空祭に来るなんてな。予想もしなかったよ」
「板村さんも。お元気そうですね。きょうは、おひとりなんですか?」
「ああ。妻も娘も、戦闘機には興味がないからなぁ。女に理解を求めるのは無理ってもんだよ」
「そうでもないですけど。わたしの女友達は早くもブルーインパルスに興味津々だし」
「ふうん。友達のつきあいで、ここに?」
「いえ……。それだけじゃなくて、広報のほうから講演のために呼ばれたので……」
「講演?」
「このところ米軍パイロットの不祥事がつづいたから、地域住民に安心を与えるために、パイロットが心身ともにいかに強靭《きようじん》であるか説明してくれって。ようするに、操縦ミスはめったに起きないっていう広報活動に、力を貸してくれっていう依頼があって」
「なるほど。いまのきみの仕事は臨床心理士だからな、適任だよ。噂はかねがね聞いてるよ。なんでも……千里眼だって?」
「知らない間にそんなニックネームが広がっちゃっただけです。ここで培われた動体視力をもってカウンセラーに転職して、人の表情筋の読み方を学んだら……どうやらベテランの臨床心理士よりも早く、人の感情を読みとれるようになってたみたいで」
板村は笑った。「そりゃ、怖いな」
美由紀は調子を合わせて笑ったが、心のなかには翳《かげ》がさした。
眼輪筋の収縮がない。板村はつくり笑顔を浮かべている。のみならず、片方の頬《きよう》筋がわずかに吊《つ》りあがって、嫌悪や警戒心を働かせた兆候がみえる。一瞬の変化だが、美由紀の目は見逃さなかった。
感情が読める美由紀に顔を向けまいとするかのように、板村はふいに踵《きびす》をかえした。「すまないが、私も古巣の仲間と語りあいたいのでね。もし会えればまた後で」
「ええ。そうですね……」
歩き去り、人ごみのなかに消えていく板村の背を、美由紀は見送った。
藍が近づいてきて声をかけた。「美由紀さん。いまの人、誰?」
「現役だったころの上官。いろいろお世話になった恩師なの」
「へえ。そうなんだ。やさしそうな人だったね」
同感だった。それゆえに、美由紀のなかでいまだに癒《い》えない過去の傷が、また疼《うず》きだした。
板村三佐は、美由紀が命令違反を承知で救助活動に出動した際、唯一理解をしめしてくれた上官だった。彼は美由紀をかばい、救難ヘリの発進を許可し、結果として除隊の憂き目にあった。美由紀もその後、自衛隊を辞め、板村には落ち度がなかったことを証明しようとしたが、彼の復職はかなわなかった。
父親のように温かい心で接してくれた板村の心には、ひとかけらの曇りもなかった。当時、わたしはまだ他人の感情を読むことはできなかったが、それでもわかる。彼は正しく、真っ当な人物だった。
けれども、いまひさしぶりに板村と接した瞬間、かつてとの違いを悟った。彼はなにか隠しごとを抱えていた。わたしに知られたくないなにかを。
考えすぎだろうか。由愛香にしろ板村にしろ、人として生きているからには、内に秘めておきたいこともあるだろう。わたしが千里眼の持ち主と信じるからには、距離を置きたいと感じるのもやむをえないことかもしれない。
孤独感と猜疑《さいぎ》心が混じりあった微妙な感情が渦巻く。もう昔のように、人を信じて生きることはできないのだろうか。
「ねえ。美由紀さん、行こうよ」藍が会場の入り口へと手をひいた。
「そうね……。行きましょう」
悩んでいても始まらない。美由紀はメイン会場となっているエプロン地区へと歩を進めていった。
広々としたエリアの一帯に、無数の自衛隊機が展示してある。美由紀にとって馴染《なじ》み深いF15DJもあれば、偵察機RF4の姿もある。当然のことながら、兵装は外されていた。どの機体も黒山の人だかりで、近づくのも容易ではない。
そんななかで、自衛隊に属していない海外からのゲストの機体が目をひく。入り口にほど近いところにある、迷彩柄の機体。美由紀は歩み寄っていった。
藍がきいてきた。「これ、どんな飛行機?」
「ミグ25フォックスバット……。ロシア空軍の戦闘機」
「ふうん。速いの?」
美由紀は黙って尾翼の赤い星を見つめた。
たしかに速い。日本海上空を領空侵犯してくる、定期便と呼ばれる確信犯的な機体の接近に対し、こちらも何度となくスクランブル発進し、空で遭遇した。F15のマッハ二・五に対しミグ25はマッハ三近い速度で飛ぶ。性能はたいしたことはなかったが、スピードだけは群を抜いている。追いまわすほうも楽ではなかった。
妙なことに、ロシア人パイロットらしき男が機体の近くにいる。整備士らも駆けずりまわって、プリフライトチェックに余念がないようだ。飛ぶつもりだろうか。
そのとき、男の声がした。「安心しなよ、きょうは敵機じゃないぜ。午後からのデモンストレーション飛行の準備に入ってるだけさ」
聞きたくなかった声。いや、聞きたかった声かもしれない。どちらともとれない。自分がこの再会を期待していたのか、それとも拒んでいたのか。それすらもはっきりしない。
近くに立った、航空自衛隊の制服に身を包んだ背の高い男を、美由紀は見あげた。
「あいかわらず、いきなり声をかけてくるのね。不意打ちしかできないんだっけ?」
美由紀は皮肉めかせていったが、相手の精悍かつ端整な顔を直視したとき、思わずどきっとした。
冷静でなくなってしまう。そんな兆候をみずから感じとったからだった。
だが、藍のほうはもっと自然に感情をさらけだしていた。藍は顔を輝かせながらたずねてきた。「こ、この人、美由紀さんの知り合い? かっこいい……」
にやっと笑った男に警戒心を向けながら、美由紀は藍に告げた。「伊吹直哉《いぶきなおや》一等空尉。三十二歳。第七航空団、第三〇五飛行隊。まだF15に乗れてるんだっけ?」
「おかげさまでね」伊吹はいった。「まさかここに来るなんてな。百里は二度とご免だって言ってなかったっけ? かわいいお友達を連れてるね」
「よろしく」藍は満面の笑みを浮かべた。「わたし、雪村藍っていいます」
「藍。だめよ」美由紀は咎《とが》めた。「この人は……」
「なんだい?」と伊吹はおどけたように眉《まゆ》をひそめる。「彼女が俺とつきあっちゃいけないのか? 美由紀は藍ちゃんの保護者代わりなのかな?」
美由紀は伊吹にきいた。「大輝君は元気? 五歳だっけ?」
伊吹の顔がこわばる。
と同時に、藍が落胆したようにつぶやいた。「なぁんだ。お子さんがいるの」
「ま、まあね……」伊吹はうわずった声でいった。「ところで美由紀。なんか、午後から講演だって?」
「それがなによ」
「ちゃんと喋《しやべ》れんの? 聞き分けのない住民がいるからって、格闘戦に持ちこむなよな。ミグを見る目、獣のように輝いてたし」
「人を野蛮人みたいに言わないでよ。ただ、地上でミグ25を見るなんて初めてだから驚いただけ。それに……兵装を外してないように見えるんだけど」
「ああ、たしかに対レーダーミサイルが翼の下についてるな。もちろんダミーだろうぜ。少しでもサマになるように見た目を気にしてんだろ。あの胴体の下の発射管も……」
「知ってる。兵器とは関係ないんでしょ。大気圏外遺灰発射装置。通称KE1」
藍がきいた。「遺灰って……?」
「故人の遺言で、火葬後の灰を宇宙に散布したいって願う遺族が増えててね。アメリカだとスペースシャトルを使うけど、ロシアでのサービスは通常、このミグ25で灰を宇宙に運ぶの。一回につき百人ぶんの遺灰をカプセルに詰めて射出できる」
「宇宙に?」藍が目を見張った。「これ宇宙にまで行くの?」
「正確には成層圏だけどね。高度二万七千メートルから宇宙に向かって、ターボラムジェット・エンジンの推力とマクロファクター・ランチング・システムの併用で、発射管の中身を大気圏外まで射出できるの。対衛星ミサイルに似た仕組みね」
「ひょっとして……。プリンセステンコーが宇宙に飛んだってのをテレビで観たけど、これ?」
「そうだよ」と伊吹がうなずいた。「複座の後部座席にお客さんを乗せて、宇宙の入り口まで飛ぶサービスがあるんだ。モスクワからクルマで一時間ぐらいのジェコフスキー空軍基地ってところで受け付けてんだよ。料金は一回二百万円ぐらい」
「なんだ……さんざんすごいことみたいに言ってたから、どれだけセレブな話かと思ったら、そんなにバカ高くもないんだね。まあ、わたしはやんないけどさ。由愛香さんとかにぴったりじゃん。きっと自慢するよ」
「由愛香さんって? その人も美由紀の友達かい?」
「いいから」と美由紀は投げやりにいった。「講演の準備をしなきゃ。行きましょ」
歩きだしながら、美由紀は思った。かつて付き合っていた男との再会、それを不安に思っていた自分がいる。伊吹もわたしに心を閉ざしたらどうしよう、そんなふうに思い悩んでいたことを、いまは否定できない。
だが、すべては杞憂《きゆう》に終わった。伊吹はあきれるほど、裏表のない男だった。あいかわらず女好きで、飄々《ひようひよう》としている。
ほっとしながらも、美由紀は自分に言い聞かせた。彼との関係はもう終わった。いまさら、惹《ひ》かれあうような仲ではない。
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