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千里眼72

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:マルサ 東京ミッドタウン・メディカルセンターは、贅《ぜい》を尽くした近未来風の病院という印象だった。医療設備には最先端の
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マルサ

 東京ミッドタウン・メディカルセンターは、贅《ぜい》を尽くした近未来風の病院という印象だった。医療設備には最先端のテクノロジーが導入されているうえに、フロアも広く車椅子やストレッチャーの移動にも支障がない。休日の閑散とした院内は、その無機的な印象とあいまってより特異な空間に感じられる。
医師や看護師のいない精神科の診察室に、国税局査察部の小平隆《こだいらたかし》が待っていた。五十代半ば、額の生え際がかなり後退した小平は、飄々《ひようひよう》とした態度ながらも仕事熱心さの垣間《かいま》見えるタイプの男だった。
そして、徳永がなぜこの国税局の人間を苦手としているのか、美由紀は小平を前にして初めて察しえた。
「お会いできて光栄ですよ、岬先生」小平は口もとを歪《ゆが》めたが、目は笑っていなかった。「お噂はかねがねうかがっております。千里眼であられるとか。うらやましいですな。国税局にも、同じ特技の人間がいたらどれだけ仕事が早くなることか」
小平がやや皮肉を漂わせた目で徳永を見やる。
徳永は咳《せき》ばらいをして、顔をそむけた。
おそらく徳永が小平と会うのは、これが初めてではないのだろう。たしかに徳永は、趣味に派手《はで》に金を使うことで臨床心理士会のなかでは有名だ。グランドピアノをいくつも購入しているし、千葉の山奥にそれらを据え置くための家を建てたときく。
そこに目をつけた小平が、徳永は納税額を過少申告していると疑いを持ったのだろう。現在はまだ、その尻尾《しつぽ》を握ることができていないにちがいない。もしそうならば、ここでこわばった笑顔を交わしあっている場合ではないからだ。
美由紀のその直感を裏付けるように、小平がきいてきた。「岬先生もピアノをおやりになるそうですな。徳永先生と同様に」
「それよりも」徳永があわてたようすで口をはさんだ。「隣の面接室に、又吉光春《またよしみつはる》さんを待たせてるわけですから……早く本題に入ったほうが」
「ああ、そうでしたな。こりゃ失礼」小平はさらりといった。「又吉光春さん、三十二歳。独身。ご両親とともに暮らしています。父親が六本木通りから一本入った住宅街に一軒家をお持ちでね」
「六本木に家だなんて、贅沢だな。きっと資産家の息子にちがいないね」
徳永のその言葉は、自分以外のスケープゴートに小平の目を向けさせたくて仕方がないという、焦燥の表れに相違なかった。唇の端が片側だけ上がりぎみになっている。左右非対称になる表情は嫌悪の感情が生じている証拠だった。
小平はしらけた顔でつぶやいた。「六本木に住むのは金持ちとは限りませんよ。昔からそこに家があったというだけでね。ドン・キホーテ六本木店の屋上に作られた絶叫マシンが、騒音を苦にする住民の反対で運行停止になったとか、聞いたこともおありでしょう。すぐ裏手には民家があってね。相続税さえ払えれば、代々そこに住んでいられる」
美由紀は、徳永と小平の心理戦には興味がなかった。ここに来た目的はほかにある。
「小平さん」美由紀は穏やかにいった。「わたし、その又吉さんという患者さんの症状がはっきりしなくて困っている……と徳永さんに聞いて、来てみたんですけど」
「おっと、そうですな、これは失礼しました。又吉光春さんはこのミッドタウンタワー内で届け物をオフィスに運ぶ仕事をしているんですが、その収入のわりには豪華な暮らしをしていてね。恋人を次々に取り替えては、ファーストクラスのチケットでオーストラリア旅行に行ってるし、クルマも何台も持ってる。ポルシェにBMW、光岡《みつおか》のオロチまで所有しているんですよ。信じられますか、日に何度か荷物をエレベーターで運ぶだけで、年収二千万です」
「……あのう。又吉さんは精神面の疾患を疑われているわけじゃないんですか? ずいぶん元気そうな話ですが」
「いや、それで彼の収入源に疑問を持った税務署から報告が入って、われわれが追及に入ったんですがね。とたんに彼は体調を崩したといって、この精神科に通いだした。医師の見立てでは、どこにも悪いところはなかったそうですが、それでも具合が悪いというのでね。身体に原因がないのなら心因性の症状かもしれないということで、臨床心理士に相談すべきと思いましてな。私から又吉さんに進言し、かねてからの知り合いの徳永先生においで願ったと、そういうわけです」
徳永は苦い顔をした。「別に小平さんと知り合いだったから来たわけじゃないですけどね……。臨床心理士会経由でご指名があったから出向いてきたまでのことです」
「それで」美由紀は徳永にきいた。「又吉さんには、どんな症状が疑われると思う?」
「精神的に追い詰められたことによるストレス、不眠症かな。症状としては軽いものだ」
小平は徳永を横目で見やった。「経験者は語る、ですかね」
「どういう意味ですか」徳永はむっとした。
「いや別に。岬先生、われわれはそうは思っておらんのです。理想をいえば、又吉さんがあらぬ妄想を働かせる悪癖があるという裏づけがほしい。たしか、妄想性人格障害という症例があるそうですな。それが当てはまると証明していただけたら幸いなんですが」
美由紀は妙な気分になった。「それは……どういうことでしょう。小平さんのほうで先に結論づけておられるようですけど。先に症例ありきですか?」
「つまりだな」徳永がいった。「妄想性人格障害かそれに類する症例という、専門家の見立てがあれば、国税局として嬉《うれ》しいという意味だろうよ。又吉さんが嘘をついているという間接的な証明になるからね」
あきれた話だった。美由紀はたちまち、目の前にいるふたりの男に軽蔑《けいべつ》を覚えざるをえなくなった。
「すると、小平さんとしては、徳永さんならそういうシナリオに従った判断を下してくれると期待して、ここに呼んだわけですね? 負い目のある徳永さんなら、国税局に協力してくれるだろうと。で、国税局のほうは、徳永さんにいくらか手心を加えようという……」
徳永はひきつった表情になった。「な、なにを言うんだよ。僕に負い目なんてないよ」
小平もあわてたように告げてきた。「手心なんて、加えるつもりはないですよ。国税局はいつも公平ですから」
そうなのか? とたずねるような目で徳永が小平を見やった。
ふたりのいたちごっこに付きあわされるのは、もううんざりだった。それより美由紀は、隣で待っているという又吉の身の上が気がかりで仕方なかった。
「小平さん」と美由紀はいった。「精神面での疾患や心理面での異常が判りにくいものだからといって、症例をもてあそぶのは間違ってると思います。徳永さんは又吉さんという人を、ただの不眠症だと思ったわけでしょう? それを妄想性人格障害と判断しろだなんて……」
「いや、美由紀」徳永は急に真顔になった。「こじつけばかりでもないんだ。又吉さんの言っていることは、本当に理解不能なんだよ。妄想性人格障害でなくとも、なんらかの症状を疑うことはありえるかもしれない」
「その通りです」小平もうなずいた。「できれば慧眼《けいがん》で知られる岬先生に面接願えると助かりますな。私どもとしては、もう完全にお手上げなんで……」
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