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千里眼74

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:新たなる視点 美由紀は又吉に案内されて、ミッドタウンタワーのオフィスフロアに通じるエレベーターに乗りこんだ。徳永と、国税
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新たなる視点

 美由紀は又吉に案内されて、ミッドタウンタワーのオフィスフロアに通じるエレベーターに乗りこんだ。徳永と、国税局の小平も同行していた。
シルバーメタリックの壁に包まれたエレベーターの内部は、デザインという観点で見れば洒落《しやれ》てはいたが、いくつか問題があるように思えた。
上昇するエレベーターのなかで美由紀はいった。「どの階になんの会社が入っているか、まったく表記がないのね。エレベーターホールにもなかった。ずいぶん不便ね」
又吉は肩をすくめた。「それも安全のためでしょう。入りにくくしてるんです」
「行き先を押すボタンも、押したら隣の小さなLEDランプが点灯するだけね。このランプが切れて点《つ》かなくなったら、その階に停まるかどうかわからなくなる。ほかにバックアップの表示がもうひとつかふたつ、必要かもね」
徳永が妙な顔をしていった。「ずいぶん神経質だな。出来たばかりのビルだよ。エレベーターがそんなに怖いかい?」
「ええ」と美由紀はうなずいた。「以前に怖い思いをしたこともあるから」
扉が開いた。その向こうには、装飾のない通路がつづいている。
「三十一階です」又吉は歩を進めながら告げた。「中層バンクと高層バンク用ロビーがあるほかは、六階から四十四階まで間取りはまったく同じでして。この通路に窓がないのも各階共通なので、よく間違った階で降りちまいます」
美由紀は歩調をあわせた。「階数の看板もないのね。オフィス受付まで行かないと、間違いに気づかないかも」
「そのうち各階の企業それぞれが廊下に物を置いたり、看板を出したりすれば違ってくると思いますが、まだどこも入居したばかりなんで。あ、これです。ここがセキュリティ・ゲート」
通路の行く手は鉄格子に阻まれていた。手前にテンキーがある。又吉は手もとを隠そうともせず、六ケタの暗証番号を打ちこんだ。386012。
鉄格子の扉は横滑りに開いた。
又吉は歩きだした。「この先に足を踏みいれた人間は、みな監視カメラに写ります。録画もされているし、テンキー操作もデータに残るんです。侵入者があればすぐ判明すると思いますが」
「そうかな」美由紀も鉄格子の向こうに歩を進めた。「侵入した疑いがなければ、企業側もわざわざデータはチェックしないんじゃなくて?」
直角に折れた通路の先に、モリスンのロゴの入ったガラスの扉があった。
その扉を開けるスーツ姿の中年男性がいる。軽く頭をさげながら男はいった。「モリスン営業部第二課長の渋北《しぶきた》です」
小平が真っ先に進みでた。「どうも、休日にご出勤恐れ入ります。ご連絡させていただいた国税局査察部の小平です」
「どうも……。あのう、きょうはオフィスのほうに泥棒が入った疑いがあるとかで、開けさせてもらったんですが……。企業への立ち入り検査ということじゃないですよね?」
「ご心配なく。モリスンさんの申告額に疑問があるわけじゃないですよ。あくまで強制ではなくお願い申しあげていることですから、ご協力いただけると助かります」
「はあ……。ええ、まあ、どうぞ」
強制ではないといいながらも、小平は自分の職場名を伝えることでかなりの場合フリーパスとなりうることに、利便性を感じているようだった。
オフィスに入ってみると、そこはどこにでもある企業の内部という感じだった。日曜なので誰もいないが、課ごとに机が並べられ、棚には資料や顧客名簿などがおさまっている。壁には業務成績のグラフが貼りだしてあるが、全体的には閑散とした印象を受ける。机の数に比して、フロアが広すぎるからかもしれない。
美由紀はいった。「ずいぶん空間にゆとりがあるみたいですけど」
「そうですね」と渋北がうなずく。「会社が成長して営業部が大きくなると期待してのことなので……。いまのところふたつの課しかないんですが、将来的には三つ四つと増やしていきたいところです」
「壁が全面ガラス張りになってるわりには、薄暗いですね」
「このフロアに限ってのことです。特殊なウィンドウフィルムが貼ってありますから」
「特殊?」
「外からの電磁波を百パーセント遮断して、室内に入れない窓なんですよ。これにより、高圧電線の近くなどでも健康を害さずに暮らせます。うちの新商品でして」
「ふうん……」
窓に近づいてみると、息を呑《の》むような光景が眼下に広がっていた。
六本木から西方向、目黒区や世田谷《せたがや》区方面の街並みが緻密《ちみつ》にして広大なミニチュアのように存在していた。かつて航空機の操縦|桿《かん》を握っていた美由紀は、その建物の大きさから地上二百メートルの高さだと直感した。
かつて防衛庁があった赤坂九丁目のこの高さから都心を見下ろす視点は、ミッドタウンタワー建設で初めて生じた。首都高速三号|渋谷《しぶや》線と、四号新宿線、その先の中央自動車道をたどっていくと、それぞれ八王子《はちおうじ》の向こうに見える山々や御殿場《ごてんば》、箱根《はこね》山までを望むことができる。手前に目を転じてみれば、日本赤十字社医療センターや有栖川宮《ありすがわのみや》記念公園、青山《あおやま》霊園などがいずれも小さく確認できる。代々木《よよぎ》公園も猫の額ほどの狭さに感じられた。
「まさに天然の地図って感じ」美由紀はつぶやいた。
徳永は近づいてきたが、すぐに後ずさりした。「足もと近くまでガラス張りなんて、落ち着かないな」
「へえ。徳永さんは、高いところ苦手?」
「平気でいられるほうがおかしいよ。そのガラスに寄りかかって、外れないっていう保証はどこにある?」
「おおげさね」と美由紀は苦笑したが、そのときふと、足もとのカーペットに奇妙な跡を見つけた。
その場にかがんで、カーペットの表面をなでる。「これ、なにかしら」
「どうかしたか?」
「縦二センチ、横六センチぐらいの直方体に絨毯《じゆうたん》の毛が沈みこんでる」
「……こっちにもあるぞ。あ、それからここにも」
美由紀は顔をあげた。徳永が指摘した二箇所は、美由紀の見つけた跡からそれぞれ一・五メートルほどの間隔がある。
いや、三つの跡いずれもが等間隔に開いている。ガラスの近くをひとつの頂点とし、正三角形を描くかたちに跡が残っていた。
「渋北さん」美由紀はきいた。「これらの跡は?」
歩み寄ってきた渋北が、床を見下ろして眉《まゆ》をひそめる。「さあ……。心当たりはないですな。こっちのほうには、何も置いたことがないので」
小平がいった。「会社が入居する前からあったんじゃないか? 内装工事の最中についたとか」
「いえ」と美由紀はいった。「そんなはずはないわ……。これはまだ新しいものよ。少なくとも一日か二日ぐらいしか経ってない……。ひょっとして……」
「なんです? どうかされましたか?」
美由紀は立ちあがり、窓の向こうに目を転じた。
何者かが必要としていたのはオフィスのなかではなく、ここからの眺めか。千八百万円を投じてまで手に入れたかった視点。いったいなにを見つめようとしていたのだろう。
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