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千里眼81

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:ギャンブル ゲームは開始された。美由紀は油断なく由愛香の対戦相手を見つめていた。蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523
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ギャンブル

 ゲームは開始された。
美由紀は油断なく由愛香の対戦相手を見つめていた。
蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]世賓は引きさがり、代わって|崇禧《トンチヨンシー》という大使館員がディーラーとして、由愛香の向かいに座った。
という男は四十歳前後の鋭い目つきの男で、痩身《そうしん》の蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]とは対照的に、猪首《いくび》の鍛えられた体型をしている。頬がこけていることからも、無駄な贅肉《ぜいにく》はほとんどついていないようだ。自衛官にもこのタイプの男性は多くいた。中国人民軍くずれのチャイニーズ・マフィアという表現がしっくりくる、そんな男だった。
無駄口を叩《たた》かず、淡々とゲームに興じる姿。感情は表にださず、表情筋の動きさえ微妙な変化にとどめている。
おそらくはプロの賭博《とばく》師だろうと美由紀は思った。これほどまでに殺気を放つ男が大使館員、あるいは外交官であるはずがない。
ほかのテーブルに目を転じても、愛新覚羅で客の相手をしているのはと似たり寄ったりのタイプばかりだ。
本国からギャンブラーたちを動員し、一分の隙もなくゲームをコントロールするつもりなのだろう。彼らの腕と、ミッドタウンタワーに潜む監視係からの連絡。このカジノに足を踏みいれた日本人は、まさしく四面楚歌《しめんそか》の状態にある。
それも、単純でだまされやすい者ばかりが客としてあしらわれているわけではない。隣のテーブルには、東大の名誉教授として知られる人物が座っていた。さらにその向こうでは、第二東京タワーを施工すると噂されている、大功《だいこう》建設グループの総裁の姿が見える。いずれもグラス片手ながら、真剣な顔で愛新覚羅に臨んでいた。
由愛香がふいにいった。「ああん……。また三枚どまりかぁ」
カードを表にかえした謝大使が肩をすくめた。「当たった三枚に張られたチップを除いて、親の勝ちは二十万五千二百元です」
テーブルのわきのホワイトボードに、勝敗表があった。そこに金額が書きこまれる。
一元を十五円と単純に換算しただけでも、いまのワンゲームだけで三百万円が失われたことになる。身の毛もよだつほどの大金がやり取りされながら、人々はいたって冷静に見える。むろん、それも表層だけのことだ。由愛香が焦燥にとらわれていることを、美由紀は感じていた。
今晩もまた、由愛香は負けはじめている。やはり新しい監視の目が用意されていると考えるべきか。
美由紀はちらと、背後の窓の向こうに見えるミッドタウンタワーを眺めた。
そのとき、近くに立っている蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]がいった。「どうかされましたか、美由紀様」
「いえ。べつに」
「窓の外を気にかけておられるようですが。あの東京ミッドタウンのビルの窓から、由愛香様の手札を覗《のぞ》いている者がいるとでも?」
さしておかしさを感じてもいないような笑い声が、テーブルを囲む男たちから沸き起こった。
も口もとを歪《ゆが》めている。
つくり笑いだと美由紀は思った。この場で本当に笑ったのは謝大使だけだ。おそらく、監視係の存在について知らないのは彼だけなのだろう。
謝は首を横に振りながらつぶやいた。「あんな遠くから手札を覗き見るなんて、よほど視力の強い人でしょうな」
ジョークのつもりだろう。美由紀はあえて蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]を挑発することにした。
「視力ね」と美由紀はいった。「高精度の望遠鏡なら可能かも」
一同はふいに静かになった。謝大使の顔だけに、ぼんやりとした笑いがとどまっている。
蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]が告げてきた。「望遠鏡で覗いている人間がいたとして、由愛香様の手札情報をわれわれにどう伝えますか。いにしえの手旗信号なんて方法は使えないでしょうからね。こちらも相当な視力を要求されますから」
また耳障りな笑いが辺りに響く。
美由紀はひとりごとのようにささやいた。「携帯電話かな。イー・リウ・アール・リウ。イー・バー・ジー・ウー……」
かすかに緊張を漂わせながら、蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]が真顔できいてきた。「なんです?」
「いえ。一六二六に一八七五と、あなたの国の言葉でいってみただけ……。一六二六年はホンタイジの即位年ですよね? それと一八七五年は光緒帝の即位の年」
「ふうん。清朝の歴史にお詳しいんですな、美由紀様は。それがどうかなさいましたか?」
「即位年を使えば、どの皇帝のカードかを四ケタの数列で伝えることができるっていう……。ああ、どうでもいい想像でしたね。失礼」
「……美由紀様。このカジノ・パーティーは慈善事業であり、謝大使立ち会いのもと、全国人民代表大会に誓って公正を期しております。この大使館のなかはあなたにとって外国と同じ。あなたは中国に来た日本人ということです。わが国にも、威信や名誉を守る法律がありましてね。あなたがいまここにいる以上、その法律の適用範囲内となります。そこをどうかお忘れなく」
まわりくどいが、脅しに違いなかった。
中国大使館の行いにケチをつけるということは、中国政府に喧嘩《けんか》を売るのも同じことだ。根拠もなくイカサマ呼ばわりすれば名誉|毀損《きそん》罪や侮辱罪に似た法律で裁かれることになるぞ、蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]はそう警告を発しているのだろう。
「なるほど、よくわかりました」美由紀は平然といった。「でも、手札の見方を、友人にアドバイスする自由はあるはずよね?」
由愛香がきいてきた。「見方って?」
「手札をテーブルに伏せて、ほんのわずかに浮かせてから、身体をかがめるようにして覗き見て。後ろにも他人の目があると想像して、あなただけで見るのよ」
「こう?」と由愛香は、いわれたとおりにした。
向かいの席のが、咳《せき》ばらいをした。
いままで沈黙を守っていたが、低い声で日本語を発した。「ルール違反ではないが、度を過ぎた警戒心はカジノの主催者に対し失礼になる。ほかの客にもだ。淑女であられるなら、モラルもお守りいただきたい」
「モラル……ね」美由紀は笑った。「あいにく、賭博が禁止されているわが国に、カジノでのモラルという概念はなくて。お国柄の違いじゃないかしら」
「そうかな」
「ええ、そうよ。中国では店員がお釣りを投げ返すのを失礼と思わないでしょ? そういう価値観の違い」
ゲームがつづいた。由愛香が親をつとめた今回、子ののほうは一枚しかカードを当てられなかった。
「やった!」由愛香が両手をあげてはしゃいだ。「美由紀のアドバイスが効いたみたい! ……いえ、ただのジンクスかもしれないけど、やらないよりやったほうがいいわね」
またしても謝大使を除く全員が、一様に苦い顔を浮かべた。
と同時に、隣のテーブルでこちらを見ていた東大教授が、由愛香の真似をしてカードを伏せた状態で覗きみるという行為にでた。
それを見ていたほかのテーブルの客も追随しはじめた。客たちがテーブルすれすれに顔をうずめる、奇妙な光景が辺りにひろがった。
大功建設の総裁ひとりが背すじをしゃんと伸ばし、葉巻をふかしている。
「くだらんね」と総裁が吐き捨てた。「肩越しに覗く目を気にして、こそこそやるなんて、端《はな》っから勝負に負けとるよ。私は負け犬のように頭を垂れたりはせん」
その叱咤《しつた》のようなひとことが静寂のなかに響きわたり、客たちはみな戸惑った面持ちになった。
ひとり由愛香だけは、遠慮なく美由紀のアドバイスに従う道を選んでいた。
がたずねるような目を蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]に向ける。
蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]はふんと鼻を鳴らした。「まあ、仕方ないだろう。お好きになさってください、由愛香様。……どうも私もも、女性には甘くなりがちでね。女性の身体は曲線を帯びているので、その心理作用もあるんでしょう」
「それって」美由紀はいった。「丸いものは視覚的に攻撃欲求を鎮める働きがあるっていう作用のことですか?」
「そう。曲線は愛されるよ。われわれのように尖《とが》った男どもは嫌われる運命にある。美由紀様はどうやら、心理学にも精通しておいでかな?」
「さあね……。少しかじった程度ですけど」
「ご謙遜《けんそん》を。美由紀様、心理テストには興味ありますかな? あなたが福建《フーチエン》省生まれの中国人で、出稼ぎのため日本に来て中華街で女性店員を務めているとしましょう。その日の客は妻と子供を連れている、四十五歳の日本人男性でした。彼が紹興酒を頼むと、子供も飲みたいといいだした。父親は、十八歳になるまでは飲めないんだよといった。三十六歳の妻がそれを聞いて、飲酒は二十歳からよといった。さて、紹興酒を運んできた女性店員の年齢は何歳でしょうか」
「心理テストじゃないですね。答えは二十八。いまの話は冒頭で、わたしが女性店員だっていう仮定が提示されてる。よって、答えはわたしの年齢」
「ご名答。いや、これはたしかに心理テストなんですよ。……よい結果が得られました。ありがとう」
微笑を浮かべた蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]のサングラスを、美由紀はじっと見つめた。
わたしから年齢を聞きだすための罠《わな》だったのだろうか。いや、岬美由紀と名乗っている以上、あるていどの情報は開示されたも同然だ。いまさら年齢だけを探ろうとするはずもない。
なにがわかったというのだろう。あるいは、こちらの心理を揺さぶるブラフにすぎないのか。
美由紀は、大功建設の総裁のテーブルに動きがあることに気づいた。
総裁はややあわてたようすで、部下らしき男に耳うちしている。部下はひどく困惑し、躊躇《ちゆうちよ》しているようだ。しかし総裁が語気を強めると、部下は仕方がないというように、渋々テーブルを離れていった。
それを見送ってから、総裁はテーブルで頭を抱えた。
チップは全額、相手側に渡っている。総裁は負けたのだ。全額使い果たしてしまったのだろう。
またひとり、地獄を見た人間がいる。チップの山から察するに、損失は数十億円にのぼると思われた。いま立ち去っていった部下になにを命じたのだろう。
そのとき、由愛香が黄色い声をあげた。「きゃあ! また勝った!」
カードを伏せた状態で選ぶようになってから、由愛香は連勝していた。
蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]の冷ややかな目が、サングラスを通してこちらを見つめる。その視線を感じた。
美由紀も蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]を見つめかえした。由愛香との勝負は代理戦争だ、本当の対峙《たいじ》は、わたしと彼のあいだにある。そう思った。
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