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千里眼88

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:テリトリー テーブルについた美由紀は、ゲーム中に身体をかがめたり、伏せた手札をこっそり覗《のぞ》き見る姿勢をとったりはし
(单词翻译:双击或拖选)
テリトリー

 テーブルについた美由紀は、ゲーム中に身体をかがめたり、伏せた手札をこっそり覗《のぞ》き見る姿勢をとったりはしなかった。常にしゃんと背筋を伸ばし、カードを保持した。
それでも美由紀は、タワーから監視されることはないと判っていた。対策はすでに講じてある。
美由紀と崇禧の対戦。第十五局を終えた時点で、美由紀の前に一千万円相当のチップが積みあげられていた。
連敗を喫したの顔には焦燥のいろが浮かんでいた。ときおり額ににじみでる汗を、ハンカチでしきりに拭っている。
勝てる、と美由紀は思った。は余裕をなくしてきているせいか、表情に感情が表れやすくなっていた。カードをだす順序にも、無意識のうちに偏りが生じているようだ。予測もしやすくなってきている。
審判人を務める特命全権大使、謝基偉が美由紀のカードを重ねて集め、慎重に逆方向から表向きに配っていく。
「五枚的中です」謝大使は笑顔を浮かべた。「あと一枚で役がつくところでしたな。美由紀様の二十一万六千元の勝ちです」
美由紀が連勝し、しかもその勝ち幅も大きくなっているにもかかわらず、テーブルの周りは沸かなかった。ただ重苦しい緊張感があるだけだった。
蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]も由愛香も、固唾《かたず》を飲んで勝負の行方を見守っているようすだった。美由紀も、一瞬たりとも隙を見せない覚悟だった。
対戦相手のはいよいよ焦燥を募らせてきたらしく、ハンカチの動きもあわただしくなってきている。
そんなの肩を、蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]がぽんと叩《たた》いた。
はそれが、お役御免の合図だと悟ったらしい。少なからず落ちこんだようすで席を立った。
「美由紀様」蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]はサングラスの眉間《みけん》を指で押した。「ディーラーを交代させていただきたい」
「誰がやるの? ひょっとしてあなたが?」
「いいえ。私はこのパーティー全体を取りしきる立場でしてね。新しいディーラーは、いまこちらに向かっております。そろそろ着くころでしょう。東京ミッドタウンからここまではそう遠くはないが、雨のせいか道路が混んでいるみたいでね」
「東京ミッドタウン? 次のディーラーはそんなところから?」
「ええ。タワーの三十六階にいるとか言ってましたな。なぜそんなところにいたのかは定かではないですが」
美由紀はじっと蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]を見つめた。蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]はとぼけた顔をするばかりだった。
むろん、嘘つき特有の表情が見てとれる。しかしそれは、彼が口にした言葉の最後の部分についてだけだった。
ミッドタウンタワー三十六階にいた人物が、こちらに向かっている。そして美由紀の対戦相手を務める。それらは事実に違いなかった。
三十六階。蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]のほうからそう告げてきた。監視係が潜んでいる場所をみずから口にした。いまさら隠していても意味はないと悟ったうえでのことだろう。
ぎりぎりの駆け引き。どこまで手の内を晒《さら》すべきか、細心の注意を払いながら相手を挑発する。カードのみならず、会話でも勝負は始まっていた。
「ああ」と蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]が声をあげた。「来たようです」
黒服たちを割ってテーブルに近づいてきたのは、これまでになく異様な雰囲気を漂わせた男だった。
小柄だが、巨漢に見えるふしぎな体型だ。頭部が小さいわりにがっしりとした身体つきのせいかもしれない。その動作もしなやかで、運動選手もしくは軍人のようだ。日焼けした顔に、褐色の虹彩《こうさい》の目。それでいて健康そうに感じられないのはどうしてだろう。まだ三十代の若さに思えるが、頭髪は白く染まっていた。
男は挨拶《あいさつ》もなく、向かいの椅子に腰を下ろした。
視線の動きが気になる。テーブルに目を走らせたときの眼球運動が、パイロット並みの速さに思えた。航空自衛隊にはこんな人種がごろごろしている。位置関係を素早く把握して動作するため、普通の人からするとまるで鳥のように落ち着きなく見える。
美由紀は空を離れてから、この癖を指摘されることもなくなった。逆に対戦相手にはそれが顕著だ。
「彼は魏炯明《ウエイチオンミン》」蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]が紹介した。「中国人民解放軍の出身でしてね。けさ本国から外交官として来日した」
「人民解放軍?」美由紀はきいた。「もしかして、空軍パイロット?」
「ほう。わかりますかな。やっぱり空を飛んだ仲となると共通するものを見いだすらしい」
魏がぴくりと頬の筋肉を痙攣《けいれん》させ、こちらを上目づかいに見た。
空を飛んだ仲。蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]はやはり、わたしの身の上を調べあげたらしい。
蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]は告げた。「魏は第十一強撃機師団、第三十一航空連隊にその人ありと知られた優秀なパイロットでね」
「というと」美由紀はいった。「四平《スーピン》基地ね。戦闘機乗り?」
ふいに魏は日本語で答えた。「殲《せん》8Cを任されることが多くてね」
「……ああ。ミグ29の中国語読みね」
「あなたはF15に乗っていたとか。女に戦闘機をまかせるとは、航空自衛隊もよほど人材が不足しているのかな」
挑発には乗らない。美由紀は苦笑してみせた。「航空機レースならいざ知らず、パイロットどうしでカードゲームなんてね。滑稽《こつけい》ね」
ふんと鼻を鳴らして蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]がいった。「操縦|桿《かん》を握る人間は動体視力に優れていると聞きます。常人では見えないものも素早く見てとることができるとか」
それで監視係として引き抜いたわけか。由愛香が負けた理由がこれでわかった。伏せたカードをわずかに浮かせ、瞬時に覗き見たとしても、超音速で飛ぶ戦闘機のパイロットなら望遠鏡による監視で充分にカードの表を視認するだろう。
美由紀は魏を見据えた。「日本語、おじょうずですね」
「人民解放軍で教育を受けたのでね」
「動体視力と観察力を買われて呼ばれたんだから、ずっとミッドタウンタワーにいればいいのに」
「三十六階に留《とど》まっていても意味はない。ご存じのとおり、いくらパイロットでも障害物の向こうは見通せないので」
「障害物?」
「空中停止飛行《ホバーリング》しているヘリ。陸上自衛隊のOH6Jだな。いい位置にいる。三十六階から、ここの窓を結ぶ直線のあいだに入って、ぴくりとも動かない。空の事情に詳しい人間でないと思いつかない戦略だ。あなたの差し金かね?」
まわりくどい蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]と違い、魏は単刀直入にたずねてくる。
美由紀はとぼけてみせた。「さあ。わたし、もう自衛隊は辞めてるから」
「他国の利益を侵害するのは戦争行為に等しいよ。望遠鏡がロケットランチャーだったら撃ち落とすところだ」
「あいにくヘリが飛んでいる場所は日本の領土にほかならないと思うけど。危害を加えたら、そっちのほうが戦争行為よね」
「首都上空、それも二百メートルの低空が訓練空域とは知らなかった」
「第一ヘリコプター団には災害救助マニュアルに従って、いくつもの特例があるの。ある意味、これも人助けじゃない?」
「なるほど。面白い」魏は笑いもせずにいった。「偵察ヘリが妨害ヘリになるとはね。突拍子もないことを考える女だな、岬美由紀元二等空尉は」
「……そろそろゲームを始めたいんだけど」
「あわてないでもらいたい。あと七分三十秒もすれば開始するよ」
「七分半? どうして?」
「OH6の航続可能距離は四百四十七キロ。木更津駐屯地からここまで飛んできて、あとはホバーリングするだけにしても、帰還に必要なだけの燃料は残しておかねばならない。あと七分少々でヘリは退散せざるをえなくなる。その後、最大速度の時速二百八十一キロで基地に戻り、給油してから同じ速度で戻ってきたとしても約三十分かかる。その三十分間は、心おきなくゲームが楽しめる」
タワーからの監視の目が復活するまで待つ。それが魏の主張だった。
美由紀にとって不運なことに、魏の計算はきわめて正確だった。
熊井二等陸尉の操縦するヘリはたしかにそれぐらいで帰路に着かざるをえなくなる。そして、ヘリは魏の席からは、窓の向こうに目視で確認できる。きわめて小さいが、パイロットならば夜間でもその機体を見逃すはずがない。OH6Jが飛び去ったことを確認して初めて、ゲームを開始するつもりだ。
謝大使はわけがわからないらしく、途方に暮れたようすでいった。「監視とかヘリとか、意味がまるでわからんのだが」
蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]が肩をすくめた。「お気になさらずに。日本人のジョークに、こちらも調子を合わせて会話をしているだけですから」
ジョークではない。すべては事実だ。少なくとも、魏が強敵となることは間違いない。
「では」魏がいった。「待っているあいだに親を決めよう」
新しい愛新覚羅カードが卸される。赤と青のラストエンペラー溥儀《ふぎ》のカードを伏せて、魏と美由紀が交互に混ぜ合わせた。
魏は美由紀に告げた。「どうぞ」
「こっちが赤ね」と美由紀はカードを取りあげた。
当たりだった。第一局は美由紀が親になった。
ふんと鼻を鳴らし、魏がいう。「高度な動体視力の持ち主がふたり顔を突き合わせていて、この親の決め方は意味がないな。二枚のカードをいくら混ぜても、その行方ぐらい目で追える」
謝は笑った。「規則なのでね」
と、魏が美由紀の肩越しに、窓の外を眺めながらつぶやいた。「そろそろ邪魔者がいなくなったようだ」
美由紀も振りかえった。点のように小さく見えるヘリが、タワーの前から移動していくのがわかる。
「唯一の援軍を失いましたな」蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]がいった。「手札をご覧になるのもひと苦労ですな、美由紀様」
「そうでもないわ。あなたがここに来た以上、いまの監視係はパイロットじゃないでしょ」
そういって美由紀は赤の十二枚のカードを取りあげると、シャッフルした。それを素早く指で弾《はじ》いて鳥瞰《ちようかん》する。
普通の人間なら判別することのできない、一瞬の鳥瞰。だが美由紀の目はすべてを捉《とら》えた。
美由紀は告げた。「上から雍正《ようせい》帝、宣統《せんとう》帝、康煕《こうき》帝、光緒《こうしよ》帝、同治《どうち》帝、ホンタイジ、乾隆《けんりゆう》帝、咸豊《かんぽう》帝、道光《どうこう》帝、順治《じゆんち》帝、嘉慶《かけい》帝、ヌルハチ」
カードを表にしてテーブルに広げる。と同時に、見物人からどよめきが沸き起こった。
すべて一致している。美由紀にとっては当然のことだが、彼らにしてみれば違う。
魏がふっと笑った。「なるほど。それなら監視の目にも判別できんだろうな。私もやってみよう」
青いカード十二枚を手にとり、魏はシャッフルした。美由紀と同じく、カードを弾く。表が見えたのはまさしく一瞬のことでしかなかった。
「嘉慶帝、光緒帝、順治帝、雍正帝、ヌルハチ、宣統帝、道光帝、康煕帝、乾隆帝、ホンタイジ、咸豊帝、同治帝の順だ」
テーブルに広げられた青のカードも、魏の告げたとおりだった。
美由紀は魏を見つめた。魏も美由紀をじっと見つめかえしていた。
動体視力では互角だ。わたしに残されたのは心理学の知識しかない。一方、魏のほうには無数の見えない援軍が存在する可能性がある。ここは彼のテリトリーだからだ。
虚勢を張ったところで、不利に変わりはない。美由紀はひそかにため息をついた。
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