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千里眼89

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:勝負の行方 美由紀が異変を感じたのは、ゲームが第七局まで進んだころだった。なぜか視覚に違和感を覚える。周りははっきりと見
(单词翻译:双击或拖选)
勝負の行方

 美由紀が異変を感じたのは、ゲームが第七局まで進んだころだった。
なぜか視覚に違和感を覚える。周りははっきりと見えているのに、必要な情報が得られていない。そんな不安に似た心理にさいなまれつつある自分を感じた。
手札を持ち、背後からの監視を警戒して素早くカードを弾く。
ところが、ほんの一瞬ですべてを見切ることができたはずの美由紀の目は、カードの順序をとらえられなかった。指は途中でとまり、最後の数枚のカードは本のページを繰るように、ゆっくりと弾かれた。意識せずともそうしていた。
「おっと」対戦相手の魏が低くつぶやいた。「いまのは遠くからでも見えてしまったかもしれんね」
思わず硬直した。
またカードを切り混ぜて、今度は静止することなく弾く。
見えない。カードの順序がわからない。
顔をあげて、魏を見つめた。それから、わきに立つ蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]に目を移す。
蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]が平然と聞いてきた。「どうかしましたか?」
美由紀は言葉を失った。かつて味わったことのない感覚が全身を支配した。
表情が読めない。相手の感情の動きがわからない。
焦点はたしかに合っている。視力が衰えたとも思えない。それなのに、相手の顔に視線を向けた瞬間に見極めることのできた表情筋の微妙な変化が、いまは見えなくなっている。
謝大使がうながしてきた。「美由紀様。カードを」
仕方なく、震える手で一枚めのカードをテーブルに置く。
魏の一枚めが表に返された。美由紀の推測はまるで外れていた。
もういちど魏に目を向ける。しかし、魏は美由紀の視線を警戒して、ポーカーフェイスを装っていた。
いつもならば、目を合わせることで相手が表情を消してしまう、その寸前に、表情筋を瞬間的に読み取ることができるはずだ。
どうしてわからないのだろう。目は見えているのに、なぜ……。
呆然《ぼうぜん》としたまま、カードをテーブルに伏せていく。それはもう、魏の心理を読むという行為からは遠くかけ離れていた。ただでたらめに、直感を信じてカードを選択していったにすぎない。素人プレイヤーも同然だった。
最後のカードを置く。謝大使が美由紀のカード十二枚を重ねて回収していき、逆順にして表向きに置いていく。
「外れですな……。一枚も当たってません。七十八万六千三百元のチップは親の総取りで、魏のものです」
「まって」美由紀は思わず声をあげた。「なにか変よ」
魏が妙な顔をした。「どこが変だというのかね?」
怪訝《けげん》そうなその表情。しかし、その裏に隠れた真意は読めなかった。美由紀の異変を知りながら知らぬふりをしているのか、それとも本当に何も知らないのか。表情からは察知できない。
やがて、自分の身体に何が起きたかが、おぼろげにわかってきた。
動体視力が利かなくなっている。
視力は普通に維持されていても、眼球のあらゆる筋肉の反応が鈍い。だから対象を追うのも焦点を合わせるのも一瞬遅れる。
こんなことが起きるなんて。考えられない。きょう、目になんらかの負担を与えるような出来事があっただろうか。
まさか……。
美由紀はハンドバッグをまさぐった。目薬の小ビンを取りだして、キャップをはずす。
そのにおいを嗅《か》いでみた。
かすかに異臭が漂う。シンナーのようなにおいだ。むろん、本来の目薬は無臭だった。
焦燥が募る。心臓の鼓動が加速していくのがわかる。
「どうして……?」美由紀はつぶやいた。「こんなことって……」
自然に起きた事故とは思えない。何者かが意図したことだ。だが、大使館側の人間がこのハンドバッグに手を伸ばすことができただろうか。わたしの観察眼がまだ働いているうちに、その隙を突くことなどできただろうか。
ひとつの可能性がおぼろげに浮かびあがった。
いちどハンドバッグはこの床に落ち、中身はぶちまけられた。そのとき、それらを拾ってバッグに戻したのは……。そもそも、ハンドバッグを床に落とさざるをえなかった原因は……。
美由紀が由愛香を見たとき、由愛香はゆっくりと立ちあがり、背を向けた。
冷ややかなその横顔。こちらに目を合わせようともしない。
「由愛香……。まさか、嘘でしょ? あなたが……」
戸惑いのいろが浮かんだように見えたが、本心はどうなのかわからない。由愛香はささやくようにいった。「仕方なかったの。取り引きだったから……」
頭を殴られたような衝撃を受け、美由紀は愕然《がくぜん》とした。
勝敗表にあった、由愛香の最後の勝負。有り金を失ったはずなのに、彼女は三百万円相当のチップを得ていた。
あの代償に由愛香がおこなったことが、これだったのだ。美由紀の目薬に、動体視力を減退させるなんらかの薬物を混入させること。由愛香はそれを約束し、チップを受け取っていた。
憤りは沸き起こらなかった。ただ失意に似た、虚無感だけが押し寄せてくる。
「由愛香」美由紀は自分のつぶやきをきいた。「どうして……。なぜこんなことを……」
だが、その言葉は相手には届かなかった。由愛香は気まずそうに踵《きびす》をかえすと、そそくさと黒服や見物人たちの人垣の向こうへと姿を消してしまった。
なにも考えられなかった。ただ呆然としているうちに、視界が揺らぎだした。涙が頬をつたった。
それからの出来事はまるで、スローモーションの映像を観るように現実感を伴わないものだった。
第十局まで勝負の中座はできない規則だった。しかも美由紀は、さっきの負けで今夜|儲《もう》けたぶんをほとんど失ってしまっている。ゲームをつづけざるをえなかった。
親としてカードを裏向きに伏せて並べる。そこには、常に不吉な予感がつきまとっていた。
魏がにやりとした瞬間、美由紀は悪夢の始まりを悟った。
謝大使によって表に返されていく魏のカード。美由紀の嘉慶帝に対し嘉慶帝、乾隆帝に対し乾隆帝、ホンタイジに対しホンタイジ……。
最後の一枚、宣統帝に対し宣統帝。
「なんと」謝が甲高い声をあげた。「全カードが一致。辛亥《しんがい》革命だ!」
ホールを揺るがすほどのどよめきが、いつしか集まってきていた大勢の見物人から発せられた。
美由紀は、思索することさえできなくなっていた。
監視の目が美由紀のカードを注視している。その事実すら忘れていた。よって、たどり着いた運命は成るべくして成ったものだった。すべてのカードを読まれ、情報はひそかに魏に伝えられた。辛亥革命が成立した。
魏が静かにたずねてきた。「さて、美由紀様。チップが大幅に足りないようだが……。現金をお持ちかな?」
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