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千里眼90

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:動体視力 蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]が先導し、魏がその後につづき、美由紀はさらにその背後に歩を進めていた
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動体視力

 蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]が先導し、魏がその後につづき、美由紀はさらにその背後に歩を進めていた。周りを黒服たちが囲み、歩調を合わせてくる。どこにも逃げ場はない。
大使館の廊下を突き進み、蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]は突き当たりの扉を開け放った。
そこは、ホールに見劣りしないほどの豪華な部屋だった。金箔《きんぱく》に包まれた窓のない室内に、由愛香ひとりだけが座っていた。
美由紀を見て、由愛香は立ちあがった。怯《おび》えてすくみあがったようにも見える。
「由愛香……」美由紀はつぶやいた。
一同が室内に入ると、蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]が扉を閉め、鍵《かぎ》をかけた。
「では」蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]が美由紀に向き直った。「負債をどう支払っていただけるのか、おふたりで話しあっていただきましょうか。とりあえずハンドバッグ、アクセサリ、手持ちの金、クルマのすべてをいただいても、まだ完済にはほど遠いのでね」
「……話し合いだなんて」美由紀は憤りを抑えながら、由愛香に告げた。「なぜあんなことをしたの? 由愛香。目薬のビンをすりかえたのはあなたでしょ? いったいどうして……」
しばし黙っていた由愛香が、ぼそりといった。「どうして、って? 別に、かまわないと思うけど」
「え……?」
「だってさ……。美由紀、普通の人間じゃなかったでしょ。相手の感情が読めるんだから。そんなの、賭《か》け事の席じゃアンフェアよ。あの目薬の中身がなんなのかは知らないけど、これで公平になったわけでしょ? あなたはわたしたちと同じ条件でテーブルについた。それだけのことじゃない」
「そんなふうに考えろって、この人たちに言われたの? あなたはそれで納得したの? よく考えてよ。イカサマを働いているのはこの人たちのほうなのよ」
「でも、美由紀だって同じでしょ? 自衛隊の友達に頼んで、ヘリで妨害したりとか、やりたい放題じゃないの。自分の特権を行使しすぎじゃない?」
怒りがこみあげて、美由紀は語気を強めた。「あなたが失ったぶんを取り返せなかったら、あなた自身も破滅の道をたどるのよ。それなのに、どうして……」
「知らないわよ!」由愛香は顔を真っ赤にして怒鳴った。「なんでこうなったかなんて、そんなの、もう聞かれてもわからない。けど、これしかなかったのよ」
「由愛香……。拒否しなかった理由は何なの? ほかになにを強要されそうになったの?」
「……従わないと、ほら穴送りになるって……」
「ほら穴?」
蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]がいった。「救済措置ですよ。お客様が負債額を支払えなかったときのためのね」
不穏な空気が辺りを支配している。
そういえば、謝大使の姿はここにはない。この場で権限を振るっているのは蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]だ。特命全権大使の目を盗んで、彼は由愛香になんらかの代償を強要した。
「いったい何よ」美由紀は不快感を覚えながらきいた。「ほら穴って何のこと?」
「中国人の一部男性に対し、夢を売るためのビジネスでね。女性は美人であるほど高値で取り引きされるが、とりわけ日本人は特に好まれる」
「それって、まさか……」
「最高に値がつくのは富裕層の日本人女性、つまりあなたがたのような人たちですよ。これまでの供給方法は香港やマカオのブティックにおける誘拐が主流でね。試着室の奥に隠し扉を設けておいて、洋服の試着のために服を脱いだ日本人女性をそのまま拉致《らち》する。会員登録している中国人男性たちが、思い思いに楽しむことになる。何日も、何週間も……場合によっては何年もね」
「なにをいってるの? 気は確か?」美由紀は蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]をにらみつけた。「外交官が凶悪犯罪に手を貸すつもりなの?」
「会員たちは裕福な日本人の女を陵辱できることに無類の喜びをしめす。わが国を支えるのは残念ながら政府のみではなく、こうした闇の市場の経済力によるところも大きい。合法とまではいかないが、私としては一種のビジネスとして容認すべきことだと考えている。ほら穴なら、おふたりも二年か三年身を預けることによって、巨額の負債を返却することができるでしょう。商品として価値があるのは、しょせん身体だけということです」
「奴隷制度も同然のビジネスを認めるなんて、時代に逆行してるわよ」
「奴隷? とんでもない。……もっと下だよ。売春婦ほどの扱いも受けない。強いて言うなら、家畜です。豚のように這《は》いつくばってブヒブヒと鳴く。あなたたちの生きる道は、それしかないということです」
瞬時に怒りがこみあげた。美由紀は蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]に挑みかかった。「ふざけないで!」
ところが、美由紀が得意とする斧刃脚《ふじんきやく》というローキックを、蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]は身を引くことであっさりとかわした。
距離感がつかめていない。敵の動作も正しく見極めてはいなかった。
その失策を悟ったとき、魏が素早く割って入ってきた。
魏は陽切掌《ようせつしよう》という水平のチョップを繰りだしてきた。美由紀は交叉《こうさ》法と呼ばれる防御の型で受けようとした。
だが、魏の手刀の動きに目がついていかない。相手の腕の位置を見失ったとき、腹部に切り裂かれるような激痛が走った。
息ができない。美由紀はその場にうずくまった。
さらに低い蹴《け》りが何発も浴びせられる。美由紀は避けようとしたが、またしても敵の脚の動きを正確に把握できない。美由紀はほとんど無防備のまま滅多《めつた》打ちされた。
骨を砕くような痛みが全身を覆い、痺《しび》れに包まれる。美由紀はむせたまま、床に転がった。
「美由紀」由愛香の声が聞こえる。由愛香は泣きながら魏に訴えていた。「やめてよ、お願い。もう許してあげて」
魏の手が美由紀の髪をつかみ、ぐいと頭部を引きあげた。頭皮が剥《は》がれるほどの痛み。思わず涙がこぼれる。
「己れを知ることだ」魏がいった。「空でも米軍のつくった高性能の戦闘機で、われわれの旧式の機体を圧倒したつもりになっている。パイロットの腕の差ではない、性能の差だ。いまも同じだよ。おまえは非力な女だ。体術にそれなりの自信はあったようだが、男に勝つことができていたとすれば、それは動体視力の賜物《たまもの》にすぎん」
蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]は腕組みをした。「相手の表情から先を読むという特技も、格闘技に生かせていたふしがありますね。鎧《よろい》を剥がされればこんなものですよ、美由紀様」
激痛をこらえながら美由紀はいった。「ほら穴とやらに送りこまれるぐらいなら……死んだほうがましよ」
「ふうん。あなたはそうかもしれないが、彼女はどうでしょう。高遠由愛香に、みずからの命を絶つ勇気はあるかな?」
由愛香は恐怖に身を凍りつかせている。
汚い連中だ。外交官だなんて、まったくのでまかせも同然だ。この男たちは私利私欲のために人命すら売買する、鬼畜に等しい奴らだ。
美由紀は蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]を見つめた。「由愛香には手をださないで」
「裏切られたのにまだ友達をかばおうとするなんて、泣けますね。美由紀様。あなたにその気があるのなら、ほら穴送りのほかの返済方法を考えてやってもいい」
「……なによ」
「自衛隊法第五十九条により、たとえ除隊しても職務上知りえた自衛隊の秘密は口外してはならないと定められています。しかし、ぜひとも教えてほしい。防衛統合司令本局はどこでしょうか?」
「なによそれ。防衛省の組織図をちゃんと見たら? そんなの聞いたことないわ」
ふいに蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]は美由紀の頬を張った。美由紀はその痺れるような痛みに耐えた。
「嘘をおっしゃらないでください。組織図には載っていない、日本の防衛力の要《かなめ》となる部署です。防衛参事官も内部部局も統合幕僚監部も、防衛統合司令本局に指示を仰いで初めて動くことができる。かつて防衛庁だったころ、六本木の庁舎内に存在していたことはわれわれも確認しています。しかし庁舎が移転、跡地は東京ミッドタウンとなった。そして移転先の市ヶ谷には防衛統合司令本局はない。どこに引っ越したのか、それをぜひ教えてもらいたいのです」
「そんなの……ただの二等空尉だったわたしが、知るはずないでしょ」
「いやいや。あなたはたんなる二尉じゃなかったでしょう、岬美由紀様。私も本国にあなたの名を問い合わせて、驚きました。ずいぶんご活躍だったんですね。英雄と呼ぶにふさわしい。航空幕僚長と直接対話されたのなら、当然、防衛統合司令本局の所在地もご存じでしょう」
なにもかも見透かされている、美由紀はそう悟った。
防衛統合司令本局は蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]のいったとおり、陸海空の自衛隊を動かすために唯一絶対の権限を持つ部署だ。内閣総理大臣によって任命された内部部局の局員らによって構成されているが、周辺国からのミサイル攻撃を恐れて現在の場所はあきらかにされていない。
その住所を美由紀が知りえたのは、恒星天球教に絡む事件で信頼の置ける元幹部自衛官と上層部に見なされたからだった。もちろん、その所在地にある施設はフェイクではない。防衛統合司令本局を案内した参事官は言っていた。この場所はわが国における最高機密だ。万一にでも破壊されたら、わが国の防衛力はゼロに等しいものになる。他国の侵略を容易に許してしまうことになるんだ。
美由紀は蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]にいった。「誰が教えられるもんですか」
蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]は表情を変えなかった。ただ黒服たちに、顎《あご》をしゃくって合図しただけだった。
黒服たちは由愛香をいっせいに取り囲んだ。由愛香の悲鳴が、その向こうで甲高く響く。
「由愛香」美由紀はあわてて呼びかけた。だが、返事はない。
「予行演習です」と蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]は告げた。「ほら穴に行ってから、なにが起きるかを先に知っておくのも悪くないでしょう。優良商品になりえますからね」
「やめてよ」美由紀は泣きながら訴えた。「やめて!」
だが、蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]はなにも答えなかった。黒服たちに静止の指示も与えない。
もう一刻の猶予もなかった。美由紀はつぶやいた。「わかったから……」
「なんですって?」と蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]がきいた。
「わかったって言ってるの。……防衛統合司令本局の住所を明かせばいいんでしょ」
しばし蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]は美由紀を見つめてから、ぱちんと指を鳴らした。
黒服たちが動きをとめ、ぞろぞろと散会する。由愛香はうずくまって、肩を震わせて泣いていた。
蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]は懐から手帳と万年筆を取りだし、美由紀に差しだしてきた。「住所を書いてください」
それらを受け取った。万年筆を持つ手が小刻みに震える。
嘘を書いたところで、どうにもならない。彼らはその住所を調べあげるだろう。そこに防衛統合司令本局が存在しなかったら、由愛香を絶望の淵《ふち》に追いやってしまう。
震える手で一字ずつ書いた。東京都港区|芝大門《しばだいもん》西四—七—十六、崎山《さきやま》ビル一階、二階。
書き終えた直後、美由紀はそのページを破りとった。それを折りたたむ。
蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]が眉《まゆ》をひそめた。「なんのつもりでしょうか」
「このメモを賭《か》けてもうひと勝負したいの」
「……ほう。愛新覚羅で?」
「ええ、そうよ。それから約束して。わたしがもし負けても、メモを受け取ったら由愛香を解放して。住所に防衛統合司令本局があるかどうか確認する気なら、わたしを人質にしておけばいいでしょ」
「なるほど。面白い。その住所が本物なら、おふたりがほら穴に行かずとも、充分にお釣りがきますからな。ほかにご希望は?」
「ホールじゃなく、別の場所でゲームをさせて。ミッドタウンタワーの監視の目が届かない場所で」
「いいでしょう。どうせ、事情を知らない謝大使やほかの客の目に触れさせるわけにはいきませんからな。お受けしましょう。魏《ウエイ》、|与※[#「女+也」、unicode5979]再次決勝負《イーターツアイツージユエシオンフー》」
魏は不敵な顔でうなずいた。
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