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千里眼93

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:無防備と破滅 美由紀は大使館地階の厨房《ちゆうぼう》の冷たい床に、ぐったりと横たわっていた。殴る蹴《け》るの拷問はいつ果
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無防備と破滅

 美由紀は大使館地階の厨房《ちゆうぼう》の冷たい床に、ぐったりと横たわっていた。
殴る蹴《け》るの拷問はいつ果てるともなく続き、何度か意識が遠のいた。そのたびに水が浴びせられ、正気をつなぎとめられる。
やがて黒服たちも疲れたのか、美由紀の周りから去っていった。いまはただ、動かない身体を投げだし、無防備に寝そべるしかなかった。
携帯電話の着信音が鳴る。
近くに立っていた蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]が応答した。中国語で早口になにかをたずねている。冷静に耳を澄ませば聞き取れるはずなのに、美由紀はもうそんな集中力さえも残していなかった。
やがて蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]は電話を切り、美由紀を見下ろしてきた。「監視班が確認しました。港区芝大門西四—七—十六の崎山ビルに、たしかにそれらしき施設が入っているようです。乗りつけられたクルマから制服組が建物の中に入っていったそうだし、監視班が顔を知る防衛参事官も出入りしていることが確認された。さらに、ビルの屋上には通信用のパラボラアンテナが認められたとのこと。防衛統合司令本局に間違いないでしょう。美由紀様。よく打ち明けてくださった」
「……そう」美由紀はかろうじて声を絞りだした。「じつは関係ない施設かも……」
「この期に及んでハッタリですか? もっとうまくやるんですな。まあ、住所があきらかとなったいまでは、真偽をたしかめるのはたやすい。この施設を爆破して、本国から日本に長距離ミサイルを撃ちこめばいいのですから。防衛統合司令本局が失われていれば、ペトリオットによる迎撃はなく、ミサイルはすべて着弾するはずです」
「まさか……戦争を起こすつもりなの?」
「とんでもない。国をあげての破壊と殺戮《さつりく》など、愚鈍な政治家のやることです。私にとっては、政府などただの金づるでしかない。こうして豊かな国に治外法権を盾に陣取り、儲《もう》ける機会を与えてくれる。防衛統合司令本局の所在地を、連中は大喜びで買いあげてくれるでしょう。そうなったら巨万の富が私のもとに転がりこんでくる。日本ともおさらばです。その後、この国がどうなろうと知ったことではない。アジアの勢力図は大きく描きかえられることになるでしょうがね」
魏が蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]に告げた。「そろそろパーティーが終了する時刻です」
「そうだな、上に行こう」
「この女は?」
「始発の貨物列車にでも放りこんでおけ。ああ、美由紀様。あなたはもう防衛省にとって裏切り者であり、売国奴にほかなりません。古巣にも、警察にも助けを求められる立場ではない。口をつぐんでおくのが最良の策でしょう。無一文では弁護士を雇うこともできませんしね。身体が動くようになって、列車から降りても、歩いて帰るんですな。あなたの愛車は財産ともども、私どもに没収されているのですから」
また魏が髪をわしづかみにした。そのまま美由紀の身体は、床をひきずられていった。
涙がとめどなく流れ落ちるのは、痛みのせいばかりではなかった。
わたしは国家機密を売ってしまった。
この国を無防備にし、破滅へと向かわせてしまった。
 1DKのアパートの部屋、収納も少なくそこかしこに洋服がさがっている室内に、不相応なパーティードレスを着た由愛香が座りこんでいる。
由愛香が泣きながら語った一夜の出来事を、藍は黙って聞いていた。
信じられないような事態、そして現在の状況。まさしく頭を殴られたような衝撃だった。
藍はしばし呆然《ぼうぜん》としていた。由愛香が語り終えたあとも、無言のまま座っていた。
「それで」藍はつぶやいた。言葉が喉《のど》にからんだ。「美由紀さんを見捨てたの……?」
「見捨てたっていうか……。ほかに、どうしようもないでしょ。あんな場所で抵抗するなんて、誰だって無理よ。美由紀は自分で残るって言いだしたんだから、なにか考えがあってのことじゃない?」
平然とした物言い。しかも、かすかに笑みが浮かんだようにも見える。
そんな由愛香の態度を見るにつけ、藍のなかに憤りがこみあげた。由愛香に対する猛烈な嫌悪感が襲った。
ためらうことさえなく、藍は由愛香の頬を張った。
「痛っ!」由愛香は怒りだした。「なにするのよ。何度も何度も……」
「ふざけんなよ!」と藍は怒鳴った。
由愛香はびくっとして凍りついた。
藍は怒りをぶちまけた。「美由紀さんを置いてきただって? なに考えてんの。由愛香さんが残ればよかったじゃん!」
「けど……そんな状況じゃなかったし……」
「状況って何!? 由愛香さんのせいで、美由紀さんは酷《ひど》い目に遭ったんじゃん。由愛香さんを助けたくて、美由紀さんは大使館に行ったんでしょ? それを裏切るなんて……」
由愛香のほうも感情を昂《たか》ぶらせてきたようだった。「しょうがなかったって言ってるでしょ。ああでもしなければ、殺されてたかもしれないのよ」
「殺されればよかったじゃん! 由愛香さんなんか、死ねばいいのに! なんで美由紀さんが犠牲になって、由愛香さんみたいな女が生き延びるの!? 誰もそんなこと望んでないじゃん! 美由紀さんの身になにかあったら、首でも吊《つ》りなさいよ!」
とたんに由愛香は、顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくった。「なんでそんなこと言うの……。わたしだって、わたしだって努力したのに……。美由紀はわたしを助けてくれたけど、わたしは彼女を助けられないよ……。非力だもん。なにもできないもん」
子供のように号泣する由愛香を眺めながら、藍は押し黙った。
わたしも由愛香を責められない。わたしにも、美由紀さんを助けだす力なんてないのだから。
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