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千里眼94

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:孤独と虚無 美由紀は暗闇のなかで、列車が減速したことを感じとった。身体を起こそうとすると激痛が走る。歯を食いしばって、な
(单词翻译:双击或拖选)
孤独と虚無

 美由紀は暗闇のなかで、列車が減速したことを感じとった。
身体を起こそうとすると激痛が走る。歯を食いしばって、なんとか上半身を起きあがらせた。口のなかが切れているのか、血の味がする。
ワンボックスタイプのクルマに乗せられて駅まで行き、そこでこの貨物車両に放置された。列車はほどなく走りだし、すでに一時間ほどが経過していた。
周りに木箱が積みあげられている。なにを運んでいるのかわからないが、酸性のにおいがする。あるいは、美由紀が死ぬことも考えたうえで、その死臭をごまかすためにここに放りこんだのかもしれなかった。
列車は徐々にスピードを落とし、やがて停車した。
壁ぎわに手を這《は》わす。把手《とつて》らしきものをつかんだ。上下左右に動かし、やっとのことで水平方向にスライドさせる。
扉は横開きに開いた。まばゆい外の光が差しこんでくる。
それでもまだ時刻は朝の六時ぐらいのはずだ。暗闇にいたせいで目が痛い。扉にもたれかかるようにして立ちあがったが、身体はひどく重かった。古綿でできているかのようだ。
外に降りる手段を考えようとして、バランスを崩した。美由紀の身体は宙に投げだされ、一メートルほど下にある砂利の上に叩《たた》きつけられた。
汽笛の音がする。頬に風を感じていた。多少、潮の香りを含んでいるように思う。
線路のレールが顔のすぐ近くにあった。ここに寝そべっているわけにはいかない。
起きあがると、そこは昔の操車場のように複数の線路が集結した場所だった。貨物専用の駅かもしれない。美由紀が乗っていたのは十数両編成の貨物列車の最後尾だとわかった。
車掌か、駅員の姿を探したが、誰もいなかった。運転手はいるかもしれないが、はるか彼方《かなた》だ。
それよりも、目に飛びこんでくるものがあった。線路沿いに一見、ゴーストタウン化した商店が軒を連ねている。その店先には電話ボックスがあった。
起きあがって、そちらにふらふらと向かう。足もとがおぼつかない。何度も前のめりに転倒しそうになりながら、なんとか電話ボックスにまで達した。
十円玉一枚さえ持ち合わせていない。パトカーか救急車を呼ぶことはできても、その場合は警察に身柄を拘束されてしまうだろう。
わたしはもう売国奴も同然の身だ、保護を求めるなんて甘すぎる。実際、大使館が相手では、警察にも手の打ちようがない。
ボックスに入ると、電話機の硬貨返却口に指をつっこんでみた。だが、十円玉は残っていなかった。
ため息をついたとき、電話機の上に一枚のテレホンカードがあるのがわかった。
残り度数はいくらかあるが、もう何年も放置されているものかもしれない。かかるかどうかはわからない。
それでも、ためしてみるしかない。美由紀は、震える手でカードをとり、スロットに差しこんだ。
 藍はアパートの一室で、部屋の隅にちぢこまっている由愛香を眺めながら思った。
わたしはなぜ、こんな女を借金取りから助けてしまったのだろう。いっそのこと追っ手を呼んで、引き渡してしまえばよかった。
でも、そんなことはできない。わたしは友達を裏切ることなんてできない。
友達。どんな意味なのだろう。命がけで助けようとしなかったら、それは友達ではなかったことになるのか。そこまでの関係は、なかなか築けない。
美由紀だけは例外だった。彼女は命を投げだしてでもわたしを救おうとしてくれた過去がある。いまもまた、由愛香に対して捨て身の精神で臨んでいる。
その美由紀の意志があるから、わたしは由愛香を裏切れない。あくまで人を信じようとする美由紀に救われた命だから、由愛香のことが憎くても、助けなければならない。
わたしは正しいのだろうか。ため息とともにうつむいた。自信がない。美由紀のようには信念を持てない。
しばし静寂が続いた。
ふいに携帯電話の着メロが鳴り、静止していた時間が動きだした。
藍は電話にでた。「はい」
「藍……」
つぶやくようなそのひとことが、美由紀の声であることを藍は瞬時に理解した。
「美由紀さん!? いまどこに? 無事なの?」
由愛香が顔をあげたが、藍は身体ごと彼女に背を向けた。いまは聴覚に集中したい。
「……だいじょうぶ」かすれた声が告げてきた。「……藍。由愛香は……? 無事に帰ったかな」
鋭い針で胸を突くようなひとことだった。
「うん、無事。いま一緒にいるし……。それより美由紀さん、どこなの?」
「わからない。正確なところは……」美由紀の声は、いまにも消え入りそうなほどだった。「クルマで運ばれたのは上野《うえの》駅だと思う。そこから九十キロぐらい在来線を走ったところ」
「九十キロ?」
「線路って二十五メートル間隔でつながってるの。つなぎ目は一秒に一回来たから六十秒で六十回。太陽の位置から、だいたい一時間経ってる。だから計算すれば九十キロ。……それと、陽が昇る前は、列車の左側に風を受けてたみたい。いまごろの季節は陸の温度が海面の温度より早く冷えて、夜のうちは陸から海に吹く。だから右側に海がある線路を走ったんだと思う」
「わかった。上野から九十キロで線路の右がずっと海で……。いまはどんな感じ? 周りに何があるの?」
「ひとけのない場所。線路がたくさんあって……。山に囲まれてる。辺りは雑草だらけ」
「都内か、何県かだけでもわからない? 警察って、所轄が違うとなかなか捜査してくれないとかあるみたいだし……」
「駄目よ。通報はしないで。ぜんぶ、わたしの責任だから……」
「……そう、わかった。だけどわたし、探しに行きたくても原付しかないし……。貨物専用の路線だったりしたら、電車でも行けないし」
由愛香も無言のままだった。自慢の愛車はもう一台もないのだ、発言できなくて当然だろう。
美由紀の声がいった。「舎利弗先生に……お願いして……」
藍はその先を待ったが、美由紀の声は途切れたままになった。
「もしもし、美由紀さん? 返事をして」
しかし、そのまま電話は切れた。公衆電話からだったらしい、通話時間が終了したのだろう。
立ちあがり、原付のキーを手にとりながら藍はいった。「行ってくる。由愛香さんはここにいて」
「わたしも一緒に……」
「ダメ。借金取りに追いかけられるだけじゃない。ここでおとなしくしてて」
返事を待たず、藍は部屋を飛びだした。
思わず泣きそうになる。それでもできる限りのことをするしかない。美由紀がそうしてくれたように。
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