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千里眼98

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:メール 二日後、正午すぎ。舎利弗はしきりにネクタイの結び目を気にしながら、銀座《ぎんざ》の並木《なみき》通りに歩を進めて
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 二日後、正午すぎ。
舎利弗はしきりにネクタイの結び目を気にしながら、銀座《ぎんざ》の並木《なみき》通りに歩を進めていた。
「ねえ」藍もシックなスーツを着て、歩調を合わせている。「せかせか歩きすぎじゃない? なんだかあわててるみたいに見えるよ」
「そんなこと言っても……」舎利弗はたちまち不安になった。「ああ、やっぱりやめときゃよかった。帰ろうか」
「いまさら何いってんの? 舎利弗さんがやるって言ったからきまったことなのに」
「けどさ……。やっぱ無理だよ。きのうもスパイ映画のDVDとか観て予習しようとしたんだけど……。偽の情報屋が出てきて、どうなったと思う? さんざんいたぶられたうえに、頭に銃弾を一発食らって即死……」
「もう。映画の観すぎじゃん。ホテルの一室でいきなりそんなことにはならないでしょ」
「どうしてわかる? 現に美由紀も酷《ひど》い目に……」
「その美由紀さんのためにやることだよ。舎利弗さん、臆病風《おくびようかぜ》に吹かれたの? なら、足手まといになるから帰って。わたしひとりでいくから」
「わかった、わかったよ。きみひとり置いてとんぼ返りなんて、それこそ美由紀になんて言われるか……」
國家告密的人に成りすまして政治局常務委員の呉と接触するという計画を、美由紀は最後まで反対した。それでも、ほかに有効な手段がないとわかったらしく、美由紀は辛そうにいった。わたしの考えたとおりに動いて。それ以外の言動は一切、控えなきゃダメよ。
そういう美由紀も、中国共産党の上層部について精通しているわけではない。防衛大で習った知識や、自衛隊にいたころに小耳にはさんだ噂話を元に人物像を推測するしかない、美由紀はそういっていた。
会ったこともない人物との心理戦。それも実働部隊は臨床心理士ながら人ぎらいな自分と、ごくふつうのOLにすぎない雪村藍だけだ。果たしてこれがうまくいくだろうか。
帝国ホテルのロビーを入るころには、喉《のど》がからからに渇いていた。
舎利弗は藍にきいた。「き、喫茶店でお茶をしていこうか」
「そんな暇ないって。ほら、あそこにいる人たち、側近っていうか関係者じゃない?」
黒いスーツ姿の、いかめしい顔をした集団。東洋人ながら、どこか日本人のホテル客とは違うぴりぴりした雰囲気を漂わせている。
映画にでてきた殺し屋たちとほとんど変わらない外見。舎利弗は足がすくんだ。
しかし、藍のほうはいっこうに気にかけないようすで、男たちに近づいていくと、美由紀に教わった付け焼刃の中国語で告げた。「|すみません《チンウエン》」
ああ、ちょっと。呼びとめようとしたが、言葉は声にならなかった。
舎利弗はどきどきしながら、男たちと会話している藍の背を眺めていた。
男がちらとこちらを見る。鋭い目つき。舎利弗は身体を凍りつかせた。
やがて、男が告げた。「好的《ハオタ》。請等一下《チントンイーシア》」
歩き去る男たちを、舎利弗はぽかんと口を開けて眺めた。
「……どんなこと話したの?」と舎利弗は藍にきいた。
「決まってるじゃん。三菱グループの者ですが、呉さんにお伝えしたいことがありますって、そういったの」
「ずいぶんストレートだね……。中国語で話したの?」
「まさか。でも、三菱って言葉は聞き取れたみたい。あ、呼んでるみたい」
見ると、さっきの男がロビー脇の扉で手招きしている。
舎利弗はいった。「なんだかようすが変だ……。部屋に行くんじゃないらしい。あれはホテルの庭につづくドアだよ。まさか裏につれていかれて、ズドンと……」
「大げさだって。ほら、いくよ」
先に歩いていく藍を追いかけながら、舎利弗は頭をかいた。女性は大胆だ。あいにく、女性とろくに付きあったことのない自分にはよくわからない。
 ホテルの庭園は広大で、さまざまな木が植えてある。呉欣蔚を迎えるホテル側の配慮か、木の説明の看板は中国語だった。
ひときわ屈強そうなボディガードたちに囲まれて、その庭園のなかの歩道を散策している人物がいる。
舎利弗は面食らった。呉その人だ。こんなにあっさりと面会が叶《かな》うなんて。
呉は木を眺めていたが、男が駆け寄って耳うちすると、鋭い視線をこちらに向けてきた。
心臓が張り裂けそうになる。思わず悲鳴をあげて逃げだしたい気分だ。
だが、そんな隙さえも与えず、呉のほうからこちらへと近づいてきた。
呉は新聞の写真よりも老けていて、外見は痩《や》せた老人にすぎない。しかし、異様なほどの威厳を漂わせている。目つきも険しかった。小国の指導者なら裸足《はだし》で退散させてしまうだろう。
「はじめまして」呉はわりと流暢《りゆうちよう》な日本語でいった。「三菱《みつびし》重工本社への訪問は明日のはずですが、なにか事前に御用でも?」
「ええ、あの」舎利弗はなんとか喋《しやべ》りだした。「そうなんです。どうしてもお伝えしたいことがありまして」
ふうん。呉は視線を逸《そ》らし、庭園を眺めた。「中国語の看板とは粋な配慮だが、看板を地面に突き立てるのは如何《いかが》なものかと思う。土の苦痛、ひいてはそこに根をおろす木の苦痛が伝わってくるようだ。そうは思いませんか」
「はあ……。まあ、どうなんでしょうね……」
「見るに忍びないので、何枚か看板は取り除かせてもらった」呉はプラスチック製のプレートをかざしながら、微笑した。「ところであなたは、三菱グループのどの企業からおいでになったんですかな」
「あ、ええと、いろいろ転々としてましてね。三菱電機に就職したんですけど、その後、三菱商事に異動になりまして。それから三菱鉛筆にも何年か……」
呉の目がふいに光った。笑いが消えて、その視線がボディガードたちに向く。
目の合図を受け取ったらしく、男たちがいっせいに動いた。舎利弗は両腕をつかまれ、背後から羽交い絞めにされた。藍も同様だった。
背筋に冷たいものが走った。やっぱり。僕たちは殺される。
咳《せき》払いして、呉が冷ややかに告げてきた。「無知のようだが。三菱鉛筆というのは、三菱グループではないよ。三枚のうろこを象《かたど》った会社のロゴマークも、偶然の一致にすぎない。まるっきり別会社だ。では、聞こうか。どこの何者かな。私になんの用だったんだね?」
返答しようとしたが、声がでない。口はかろうじて動かせるが、言葉にならなかった。
そのとき、藍がいった。「嘘をついて申し訳ありません。わたしたちは國家告密的人です。彼はわたしの兄です」
呉の眉《まゆ》がぴくりと動いた。「國家告密的人? 耳に馴染《なじ》みのない職業だな」
「そんなはずはないでしょう。今後、呉欣蔚委員のお役に立つべく、ご挨拶《あいさつ》したいと思いまして、こうして参りました」
「……もし國家告密的人なら、わが国の言葉で話すべきではないかな?」
「祖父の代から家族全員が日本在住ですので……。残念ながら、北京語はほとんど喋れません」
美由紀に教わったとおりのことを、藍は呉に告げている。
いまのところはうまくいっているのかもしれない。舎利弗はそう感じだした。
ふんと呉は鼻を鳴らした。「接触の方法を無視している。合図も暗号もないのかね?」
「……両親は詳しいことを教えてくれる前に亡くなりました。國家告密的人として人民および国家のために尽くすという使命だけ、遺書を通じて知りえただけでして……」
「よかろう。きみ」呉は舎利弗を見た。「このプレート、すまないが元の位置に戻してくれないか」
男たちの手が緩む。舎利弗はそのプレートを受けとった。
プレートには『椿』と書かれていた。
テストか。椿は日本ではツバキだが、中国ではチャンチンというニガキ科の木だ。本来のツバキは、中国では山茶と書くはずだった。
大学院まで進んで、それなりに得た知識も役に立つことがある。舎利弗は冷静を装いながら、シンジュに似た珍しい木の前にそのプレートを突き立てた。
振り返ると、呉はまだどこか疑わしそうな顔でこちらを見ていた。
「で」呉はいった。「國家告密的人として自分たちを使ってくれと売りこみに来たわけか。私になにか提供できるネタでも持っているのかな」
「いえ、それはまだ」舎利弗は美由紀に指示されたとおりに告げた。「よろしければ、大使館においでの際、私たちも同行して、祖父の代からいままでのいきさつなどをご説明しようかと……」
「いや。大使館に行くのは三日も先のことだし、それには及ばん。情報はメールで伝えてくれればいい。謝礼金の振りこみはいつもの方法で。天国銀行については知っているだろう?」
「は、はあ。まあ、そうですね。親の日記を見てみないと、なんとも……」
呉はボディガードに、中国語でなにかを告げた。
ひとりの男がうなずいて、銀いろのケースを取りだし、一枚の名刺を差しだしてきた。
舎利弗が受け取るのを待って、呉がいった。「そこに記載されてるアドレスにメールしてくれればいい。では、重大な事態が起きたらまた会おう」
「はい。どうも、お手数をおかけしました。では……」
藍とともに立ち去りかけたとき、呉が呼びとめた。「待ちたまえ」
呉はボディガードから受け取った緑いろの帽子を手にして、つかつかと歩み寄ってきた。「今後、私に会いにくるときにはこれを被《かぶ》るといい。私は人の顔を覚えられんのだが、それを被っていれば誰なのか判別がつく」
「感謝します」舎利弗は帽子をかぶった。「じゃ、失礼します……」
舎利弗は藍の手をひきながら、庭園を歩き去った。
ロビーに戻ったとき、舎利弗はようやくほっとひと息ついた。「心臓に悪いよ」
「ほんとね」藍も笑顔をみせた。「中国の人って、やっぱ変わった趣味だね。スーツにそんな帽子なんて、まるっきり似合わない」
「そう。でも、しばらくこのままでいるよ。見張られてるかもしれないからね……」
「舎利弗先生。やったね」
「ああ、やったよ。ようやく肩の荷が降りた……。やっぱり僕はメールでやり取りするのが性にあってるよ」
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