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千里眼99

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:白日の下に 呉欣蔚は庭園にたたずみ、國家告密的人を名乗る男女が消えていったロビーへの扉を眺めていた。「載緑帽子《タイリユ
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 白日の下に

 呉欣蔚は庭園にたたずみ、國家告密的人を名乗る男女が消えていったロビーへの扉を眺めていた。
「……載緑帽子《タイリユーマオツ》」呉はつぶやいた。「あの男は平気でミドリの帽子をかぶった。中国人ではないな」
載緑帽子は、妻を寝取られた男を意味する。中国人男性なら侮辱されたと思われて怒りだすだろう。あるいは、これもテストだと気づいて、その旨を告げてくるにちがいない。
側近がきいてきた。「如何なさいますか」
「日本在住の國家告密的人となら私の立場でも直接会うという慣わしは、日本でもさほど知られているわけではない。たぶん政府筋か、国家公務員でなければ知りえないだろう」
「国家公務員……」
「そう。内閣情報室から警視庁、防衛省の幹部自衛官までを含む連中のことだ。そういう人種の息がかかった工作活動の可能性があるな」
「こちらの内情を探りに来たのでは?」
ありうる、と呉は思った。
中国大使館が入手したという防衛統合司令本局所在地の情報、それを確認すべく来日したのだが、表向きは産業や貿易の見学視察ということになっている。そのため大使館に行くのを三日も遅らせ、攪乱《かくらん》を図ったのだが、すでに日本側には怪しまれているようだ。
「尾行しろ」と呉はいった。「素性を全力で調べあげろ。そして、どんな人間が背後で糸を引いているのか、白日の下に晒《さら》せ」
 美由紀は舎利弗の部屋のベッドで、電話にでていた。
舎利弗の声が告げてくる。「成功だよ。呉欣蔚と会った。本当にもう、ひやひやしたよ」
「よかった……無事に帰ってくれて。それでどうなったの?」
「情報はメールでくれってさ。これで可能性がみえてきた」
「ありがとう。藍にもお礼を言っておいて。それから、充分に気をつけて」
「ああ。わかってる。でも終わってみれば、なかなか心地いいスリルだったよ。……ところで、美由紀」
「何?」
「これからどうするんだい? まさか、また中国大使館に行くつもりじゃないよな?」
「どうしてそんなふうに思うの?」
「いや、ただ、そう感じただけで……。無謀なことはしないでくれよな。動体視力を発揮しようと意識するだけでも目に悪い。取り返しがつかなくなっちゃうよ」
「脅さなくても、だいじょうぶよ。無茶なんてしないから」
「……そうか、じゃ、いいよ。仕事をしてから帰るから。ゆっくり休んで」
ええ、またね。美由紀はそういって、電話を切った。
しかし、美由紀はこのまま寝ているつもりはなかった。ベッドから起きだして、身じたくを始める。
部屋にいた由愛香がきいてきた。「どこに行くつもりなの?」
「ずっと世話になってるわけにはいかないから……。でもわたし、いまじゃ家なしだしね。安いアパートにでも泊まるわ」
「……でも貯金、ぜんぶ使い果たしたんでしょ?」
「藍が一万円貸してくれたから……。知り合いの大家さんに頼んで、三日だけ入居させてもらうわ」
「三日って……。その後はどうするつもりなの? まさか、大使館に乗りこむつもり?」
「ほかになにがあるの?」
「馬鹿なことよしてよ。その呉さんって人に直談判したところで……」
「ただ訴えるわけじゃないの。すべてを取り返してくる。わたしのぶんも、あなたのぶんもね」
「……あなたってヘンよ、美由紀。いったいなんのためにそんなことするの?」
「さあ。わたしは、信念に従ってるだけよ」
「かっこつけないでよ」由愛香はまた泣きだした。「わたしを……馬鹿にしてるの? 無力で、なにもできないわたしを……。藍がいったように、わたしなんてクズよ。わたしのためにこんな目に遭ったのに、なんで怒らないの? わたしに怒りをぶつけないの? ぶってくれたほうがましよ!」
「……そんなことできない」
「どうして? また友達だからとか、そんなこと言うつもり?」
「いいえ。ぶてないから、友達なのよ」
かすかに表情を凍りつかせた由愛香が、なにを思ったのかは知らない。
わたしは、わたしの道を行くだけだ。美由紀はそう胸に刻み、黙って戸口に歩を進めた。
由愛香は制止しなかった。
靴を履いて外にでる。外気に触れたとき、独りだと悟った。そう、最終的に、わたしは独りだ。
そのとき、美由紀の携帯電話が鳴った。
まだ料金引き落としの日を迎えていないらしい。いずれこの電話も未払いとなって解約を余儀なくされるだろう。
美由紀は電話にでた。「はい」
枯れた女性の声が告げてきた。「岬……美由紀さんですか」
「そうですが……」
「わたし……板村|涼子《りようこ》といいます。板村久蔵の妻です……」
 美由紀のかつての上官、板村久蔵の自宅は、鎌倉市の閑静な住宅街にあった。
深夜。小さな一戸建ては通夜を終え、明朝の告別式を待つだけになっていた。辺りにひとけはない。線香の番をする未亡人と娘が、家のなかに居残っているにすぎない。
喪服を着ていきたかったが、美由紀にはもうそれすらも持ち合わせがなかった。藍に借りた黒いスーツ姿で家を訪ね、焼香をした。
遺影のなかで微笑む板村の姿。かつて自衛隊で見たままの、穏やかなまなざしがそこにあった。
板村涼子と会うのはこれが初めてだったが、美由紀は古くからのつきあいのように感じていた。板村久蔵という男を通じて、似通った人格の持ち主が出会うきっかけとなったのかもしれない。
「けさ、遺体で見つかったんです」涼子は静かに語った。「さっきまで、大勢の人が来てました。警察の人も、防衛省の人も……。主人を哀れんでいる人は少なかった。彼がどこにいたのか、最後に会ったのはいつだったかって、そればかり聞いてくるんです」
美由紀の胸が痛んだ。
彼が追われる身であることは、公にされていない。フランス製の軍用ヘリが奪われたことは、いまだ報道されてはいないのだ。
夫がかつての古巣から裏切り者とみなされていることを、妻は知るよしもなかっただろう。涼子の膝《ひざ》まくらで眠っている幼い娘も。
涼子はいった。「近頃、帰りが遅くて……。この子も心配してたんです。パパに会いたいって、いつも言ってたんだけど……。かなわない夢になっちゃったね」
「……板村元三佐は、なぜお亡くなりに……」
「首を吊《つ》ったの。医師の話では、まず自殺とみて間違いないって」
「自殺……」
鋭い刃で胸もとをえぐられる、そんな感覚が美由紀のなかにあった。
板村は追い詰められていた。奪ったヘリを担保にしてチップを借り、それすらも失った。さらに勝負をつづけ、進退窮まったのだろう。
そしてふと気づいたとき、国を裏切った自分がいた。初めは家族のためだったかもしれない。それでも結果的に、元自衛官として許されるはずのない罪に手を染めてしまった。
誰よりも温厚で、情け深かった板村。心に弱さがあったとは思いたくない。しかし、彼はすべてを失ってしまった。この国を守る立場だったはずなのに、逆に傷つけてしまった。
「岬さん」涼子は目を潤ませながら、微笑していった。「主人はいつも、あなたのことを話してました。あなたは誇りだって……。自衛官を辞めても、あなたは立派に臨床心理士を勤めあげた。大勢の人を救った。同じく除隊した俺も頑張らなきゃなって……いつもそういってました……」
耐えきれなくなり、美由紀はうつむいた。
大粒の涙がこぼれおちる。わたしは、板村の期待にすら応《こた》えられていない。同じ罠《わな》に嵌《はま》り、この国を破滅に向かわせている。
どうして板村と再会したとき、彼の苦しみに気づけなかったのだろう。見抜いていれば、助けることができたかもしれないのに。一度ならず二度までも、彼を裏切ってしまった。もう取り返しがつかない。
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