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千里眼103

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:タワーの迷宮 美由紀は六本木通りから一本入った裏路地を飛ばしていた。大江戸線の終電の時刻を過ぎているせいで、辺りにひとけ
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タワーの迷宮

 美由紀は六本木通りから一本入った裏路地を飛ばしていた。大江戸線の終電の時刻を過ぎているせいで、辺りにひとけはない。それなりに順調だった。このままいけば、タワーには間もなく到達できる。
そのとき、ヘリの爆音を耳にした。聴きなれない音だ。自衛隊に属するいかなる機種のメインローターとも異なる。それも、これだけはっきりと聞こえるからには、よほどの低空飛行にちがいなかった。
サーチライトが路地を走る。まばゆいばかりの光が頭上から車体を照らしだした。
だしぬけに、耳をつんざく銃撃音が響きわたった。ごく少数ながら往来していた人々が、悲鳴をあげて逃げまどう。路地のゴミ袋がちぎれて、中身が散乱した。
着弾の火花が電柱に、塀に、アスファルトに走る。空からのバルカン砲による掃射にちがいなかった。
美由紀は速度を緩めず、蛇行する道を駆け抜けた。左の電動ミラーを上に向けて、後方斜め上を確認する。
追っ手のへリ。アパッチをやや小ぶりにした直線が主体のフォルム。黒光りするそのボディは美由紀の遭遇したことのない最新鋭の機種だった。
カウアディス攻撃ヘリ。大使館の敷地内か、そのすぐ近くに隠してあったのだろう。
目を凝らすと、操縦席にひとりの男の姿がある。さっき大使館のホールから逃げのびた魏炯明に相違なかった。
外交官が聞いて呆《あき》れる。もはやなりふり構わず、こちらを始末しようというのだろう。兵装がなかったはずのヘリに武器を積んで追撃とは、蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]世賓の差し金ではあるまい。人民軍パイロットとしての意地を賭《か》けて独断で出撃したに違いない。
ひたすら面子《メンツ》にこだわり、状況を省みない。そんな魏の操縦するヘリはまさしく移動する凶器にほかならなかった。バルカン砲の銃撃は激しさを増し、着弾も近くなってきた。ボンネットに小さな爆発が起きて、火柱が噴きあがる。何発か当たったらしい。エンジンがガリガリと嫌な音を立てだした。
それでもまだコントロールが利く。美由紀はステアリングを切り、ガヤルドを大通りに差し向けた。
首都高のガード下に飛びだし、空車タクシーの列のなかを突っ切り、外苑東通りの反対車線にでて逆走する。たちまちクラクションの渦が沸き起こったが、それも一瞬のことだった。上空に迫る黒い陰がバルカン砲を掃射しはじめたとき、一帯はパニックで騒然となった。
車道に溢《あふ》れかえる人々、スピンしてガードレールに激突するタクシー。阿鼻《あび》叫喚の地獄絵図に至る寸前の状況が広がっている。このままでは直接か間接かを問わず犠牲者がでる。路上に留《とど》まるのは賢明ではない。
歩道に乗りあげ、街路灯と並木をなぎ倒して突き進んだ。低い階段を昇って東京ミッドタウンの敷地に入る。突きあげる衝撃は相当なものだ。由愛香をちらと見やった。出血がひどい。早く病院に運ばねば。
飛びこんだ場所は、オークウッドプレミアというレセプション・センターの脇だった。由愛香が出店を計画していたガーデンテラスをかすめ、芝生の上を走り抜けていく。砂ぼこりがひどい。この時間になるとここも無人に近いが、明かりも消えているせいで前方を視認しづらい。一瞬の判断ミスが命とりになる。
ふいにヒューンという甲高い音が響いた。その直後、大地を揺るがす轟音《ごうおん》とともに真っ赤な火球が膨れあがった。由愛香が悲鳴をあげる。
爆発の火柱はさらに数本あがった。スピードを緩めることなく炎の壁を突き抜ける。まわりこもうとするヘリの動きを見たとき、それがミサイルによる攻撃だと悟った。
手段選ばずか。カウアディス攻撃ヘリには詳しくないが、ミサイルの軌跡からすると熱源を感知するのではなく、対象を捕捉《ほそく》しロックオンすることで命中に至るセミアクティヴ・ホーミングだろう。対地より対空に向く攻撃システムであるがゆえに、こちらもなんとか命脈を保っていられる状況だ。
しかし、幸運は長くはつづかない。このままでは狙い撃ちにされるのがおちだ。
タワー方面に向かってアクセルを踏みこむ。全面ガラス張りの壁面が迫った。そこを突き破り、プラザと呼ばれるショッピングモールを突っ切っていく。タワーの反対側、ミッドタウン・ウェストを前にしてUターンした。
ヘリの爆音が響く。高度をあげたのがわかる。こちらの位置を見失ったのだろう。しばらくは時間が稼げる。
スロープを降りて、地下駐車場にガヤルドを乗りいれる。藍と舎利弗はもう立ち去ったはずだ。監視係はおとなしく三十四階に閉じこめられたままだろうか。できればもうしばらく囚《とら》われていてほしい。
駐車場に面したメディカルセンターの夜間救急用入り口前にガヤルドを停車させる。美由紀は車体から飛びだすと、すぐさま助手席側にまわってドアを開けた。
瀕死《ひんし》状態の由愛香の身体を助け起こしながら声をかける。「由愛香。無事? あと少しだけ辛抱して」
「美由紀……。無理だってば……。こんな姿見られたら、拒否されるだけよ……」
「心配しないで」
そういって美由紀は由愛香に肩を貸し、引き立てて入り口へと連れていった。
固く閉ざされた自動ドア。小窓ひとつない。無愛想な監視カメラが一台、こちらに向けられている。
美由紀は赤いサングラスを取りだし、カメラのレンズに押しつけた。呼びだしボタンを押す。
インターホンで当直の医師とおぼしき声が応じた。「なんでしょう」
「友達の気分が悪くて。ちょっと診てもらえる?」
「……お待ちください」
由愛香が妙な顔をした。美由紀は、だいじょうぶと目で訴えた。
ほどなくして、扉は横滑りに開いた。
ぶらりと出てきた白衣姿の医師は、血まみれの患者を目の前にして仰天したようすだった。
「手伝って」と美由紀はいいながら、戸口のなかに入った。
もはや拒否ができるはずもない。医師は戸惑ったようすながらも手を貸してきた。「あ、あのう……。気分が悪いって……?」
「腹部を銃撃されたの。大至急、外科手術の準備をして。医師がいないのなら、近くの六本木赤十字センターから呼ぶのよ。設備が不足してるなんていわせないから。わかった?」
「あ、はい。ただちに……」
ストレッチャーの上に寝かされた由愛香は、呆然《ぼうぜん》とした面持ちをしていた。
「美由紀。どうして……? なぜ受けいれられたの?」
「暗視カメラって、たいていモノクロだから。赤いフィルターを通してみると、血のいろは飛ばされて映らないの」
「……すごい」由愛香はため息をついてつぶやいた。「あなたって人は……やっぱり……」
「もう喋《しやべ》っちゃ駄目よ。絶対に助かるから心配しないで」美由紀はそういって、走り去ろうとした。
「どこへ行くの?」と由愛香がきいた。
「決着をつけるの。殺人鬼を東京上空に野放しにはできないから」
 美由紀は地階の駐車場に駆けだして、エレベーターの扉へと向かった。
そのとき扉が開いて、ふたりの男がでてきた。黒いスーツを着た男。北京語でぶつぶつと会話を交わしていた。
ふたりと目が合った。凍りついたのは、向こうのほうだった。
監視係か。三十四階から脱出したのだ。だが、わたしの行く手を阻むことはできない。
相手が動くのを待つことなく、美由紀は猛然と突進した。ようやくふたりは目の前の女が敵だと察知し、懐に手を突っこんだ。
その手が引き抜かれるより早く、美由紀は跳躍して膝《ひざ》を曲げて反動をつけ、空中で二段|蹴《げ》りを放ってひとりめの顎《あご》を蹴り飛ばした。着地してから身体をひねり、旋風脚のまわし蹴りでふたりめの顔面を蹴る。骨の折れる鈍い音がした。ふたりはふらつきながら、ほとんど同時に床に突っ伏した。
怪我《けが》をさせて気の毒だが、すぐ近くは病院だ。這《は》ってでも訪ねていけば治療してもらえるだろう。もっとも、医師がドアを開けてくれるかどうかさだかではないが。
美由紀は倒れた男たちの懐をまさぐった。だが、内ポケットの中身は、美由紀の期待したものではなかった。
拳銃などの武器ではない。たんなるトランシーバーだった。
ノイズとともに、トランシーバーから音声が漏れ聞こえてくる。「遼、張、|立刻應答(応答せよ)」
そのトランシーバーを取りあげて、美由紀はいった。「|二人是不在(彼らはいないわ)。|他們已經不能説※[#「口+巴」、unicode5427](もう喋れないだろうしね)」
魏は息を呑《の》んだようすだった。「岬美由紀……」
「決着をつけてみる?」と美由紀はエレベーターのボタンを押した。「タワーに昇るわたしを仕留めてみることね」
バルカン砲の掃射音が聞こえる。エレベーターの扉が開いた。美由紀はなかに乗りこむと、三十一階のボタンを押した。
扉が閉じ、エレベーターは上昇を始める。
とたんに、轟音《ごうおん》とともにビルが激しく揺れた。エレベーターが静止するまでには至らないが、天井のライトはしきりに明滅を繰り返している。
闇雲にミサイルを放つとはどうかしている。まともな思考がなければ自制をうながすこともできない。
美由紀はトランシーバーにいった。「狙いもつけないうちに発射だなんて、人民軍の名折れね。ちゃんと操縦したら?」
「黙れ」魏の声が怒鳴った。「ロックオンした直後に貴様は消し飛ぶ。己れの無念を味わう暇もない。だからいま、じわじわと恐怖を与えているのさ」
「そう? ちっとも怖くないけど」
やはりセミアクティヴ・ホーミングか。百発百中の照準システム。だがそこに隙が生じる。
エレベーターが止まり、扉が開いた。美由紀はフロアに駆けだした。これが最後のチャンスだ。その思いを胸に刻んだ。
 魏炯明は操縦|桿《かん》を引いてヘリを上昇させた。ミッドタウンタワーのガラス張りの壁面に、ヘリの機体が映りこんでいる。サーチライトを消して目を凝らした。ガラスの向こうに、無人のフロアが見える。
二十六階、二十七階、二十八階……。岬美由紀の姿はない。
エレベーターに乗ったというのはブラフか。だが、地上で少しでも動きがあれば、俺の目は見逃さない。たちまち追って蜂の巣にしてやるだけだ。あの小娘と違い、俺の動体視力には寸分の狂いもない。
そう思ったとき、三十一階に人の動きを察知した。
フロアの窓を真正面にとらえる位置で、空中停止飛行《ホバーリング》に入った。窓を注意深く観察すると、たしかに人影があった。
いた。岬美由紀だ。窓辺にたたずんでこちらを見ている。トランシーバーを手にしていることも視認できる距離だった。
「ねえ」美由紀の声がスピーカーからコクピット内に響き渡った。「東京ミッドタウンの被害、甚大なんだけど。あなたと蒋[#「くさかんむり/將」、unicode8523]が巻きあげたお金で弁償してもらうから」
戯言《ざれごと》を。魏は一笑に伏した。「遺言はそれだけでいいのか? 岬。以前に日中戦争の開戦を阻止した英雄だそうだな。気功の心理的からくりを解き明かして人民代表会議を説得し、無血で平和を取り戻したとか。今度も俺を説得するつもりか?」
「ええ。そのつもりよ。わたしを撃たないほうがいいわ。無事に帰りたいならね」
「臆病者《おくびようもの》の小娘が精一杯強がったところで、運命など変えられん。思い知るがいい」
魏は窓ごしに美由紀を狙い済まし、ミサイル発射ボタンを押した。
だが、その瞬間、魏は己れの過ちを悟った。
発射寸前に、照準システムが標的をロックオンした。真正面に位置する岬美由紀の姿を捉《とら》えた。
本来はそのはずだった。だが、いまは違う。ウィンドウフィルムに反射した電磁波はまっすぐに跳ね返っていた。すなわち、ヘリはみずからの機体をロックオンしてしまった。
それがなにを意味するのか、魏は身を持って知った。
頭上でメインローターが四方に飛び散り、魏はコクピットごと機体から射出されてしまった。空中で回転し、それから自由落下が始まる。
魏は悲鳴を耳にした。コクピットに響く叫び。それは自分の声だった。
 美由紀は窓ガラスごしに、コクピットを射出したヘリを眺めていた。
発射されたミサイルは空中で弧を描き、Uターンして機体に命中した。目もくらむような閃光《せんこう》、一瞬遅れて激しい爆発音が轟《とどろ》く。突きあげる衝撃が襲う。轟音とともにビル全体が揺れた。ガラスに縦横に亀裂が走り、直後に弾《はじ》けるように砕け散った。
高度二百メートルの強風が吹きつけるなかに、美由紀はたたずんだ。
四散したヘリの残骸《ざんがい》が、黒煙を噴きながら地上にばらばらに落下していく。
あの辺りは緑豊かな庭園だ。墜落しても被害は最小限度だろう。多少の木々の補充は必要になるだろうが。
射出されたコクピットは、自動的にパラシュートを開き、風に舞って漂っている。
魏は生還できるだろうが、どこに下りようと逃げのびることはできないだろう。これだけ暴れまわったのでは、治外法権などなんの意味もなさない。
臆病風《カウアデイス》か。言いえて妙ね。
美由紀はつぶやいて、踵《きびす》をかえした。
遠くでサイレンの音が沸いている。赤いパトランプの渦が、フロアの天井に明滅を映しだしていた。
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