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千里眼123

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:崩落美由紀は装甲車の重機関銃からの掃射を躱《かわ》しながら、大久保通りから路地へと駆けこんだ。道幅は二メートルていど、左
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崩落

美由紀は装甲車の重機関銃からの掃射を躱《かわ》しながら、大久保通りから路地へと駆けこんだ。
道幅は二メートルていど、左右はビルの外壁だった。ここなら、車幅二メートル半の96式装甲車は追ってはこれない。
ところが、背後から迫りくる轟音《ごうおん》はいっこうに消えない。
振りかえったとき、美由紀は衝撃を受けた。
装甲車は路地に入り、両脇のビルを破壊しながら突き進んでくる。砕かれたビルの外壁は粉末状になって飛び散り、鉄骨や支柱は押し倒され、ガス管に点火して爆発が起きる。
熱を帯びた爆風に吹き飛ばされ、美由紀は前のめりにつんのめった。
両手を擦りむき、激痛が走る。
背後から装甲車が迫った。
見あげると、その巨体はすでに目と鼻の先に接近していた。
美由紀は仰向けになり、わずかに背を浮かすと、機関銃の掃射を受ける前にみずから装甲車の下に滑りこんだ。
装甲車は荒地を難なく進めるよう車高が高めになっている。ひとりなら、ぎりぎり潜りこめるはずだ。
通過する装甲車の下で寝そべることは、決して心地のよいものではなかった。エンジン音は鼓膜が破れるかと思えるほどの騒音となって響き、顔がときおり装甲車の底部に接触し、擦《こす》れそうになる。そのたび後頭部を地面に押しつけるようにして、わずかに空間をあけた。ほんの数秒でも摩擦が起きたら、肌が引き剥《は》がされてしまうだろう。
巨大な鉄の塊は美由紀の上を通過していった。
すぐさま美由紀は跳ね起きて、装甲車の後部から車体の上に飛び乗った。
ポアはすぐさま振り向いたが、重機関銃をこちらに向けようとして、それが構造上不可能だと気づくに至るまで、一秒ほどまごついた。
その隙に美由紀は突進してポアの首すじに蹴りを入れた。
打撃に手ごたえはあったが、ポアはものともせず銃手席から跳躍し、ハイキックからかかと落としを見舞ってきた。
美由紀は身を引いて躱したが、格闘には向かない足場だった。
振動する車体で足を滑らせ、落下しそうになった。
ポアが隙を衝《つ》こうと向かってきたが、美由紀はすぐに体勢を立て直した。
美由紀が合気道の入り身突きで反撃にでると、ポアは脛《すね》を上げて防御し、ムエタイの蹴りの連打を放ってくる。一瞬も気の抜けないすさまじい打ち合いとともに、全身に痺《しび》れるような痛みが走る。感覚が麻痺《まひ》し、執念だけが闘争心を支える。
と、頭上でなにかが動いたのを感じとった。
ポアも同じ感覚を持ったらしく、わずかに視線が上に泳いだ。
美由紀はすかさずポアの胸部を蹴り飛ばした。
ポアが仰向けに転倒すると同時に、美由紀も後方に転がって距離を置いた。
ようやく頭上に目を向けたとき、美由紀は信じられない光景をまのあたりにした。
路地の両脇に建つビルが谷間に向かって傾き、崩落してくる。地震で耐久度が弱まっていたところに、装甲車によって一階部分の外壁を削りとられたせいだった。
直後、外壁が大小の岩となって轟音とともに降り注いできた。
美由紀は装甲車から飛び降り、路地を駆けだした。
目の前に数トンとおぼしき巨大なコンクリートの塊が落下してきた。
一瞬ひやりとして足がすくんだが、立ちどまっていたのでは瓦礫《がれき》の下敷きになる。
かといって、前進したがゆえに破片の直撃を受けてしまう可能性もある。
片側の壁に身体をこすりつけるようにしながら、美由紀は路地を疾走した。
背中を何度か、破片がかすめていった。
あと五メートルほどで大通りにでる。
歯を食いしばって美由紀は走った。
三メートル、二メートル、一メートル……。
歩道にダイブするように頭から飛びだしていく。
背後では爆発のように噴煙が吹きあげられ、落雷を思わせる音とともに地響きが襲った。
砂埃《すなぼこり》で辺りは霧のように見通しがきかなくなっていた。
美由紀は上半身を起こし、振りかえった。
静かだった。
ふたつの古いビルと路地があったはずの場所は、いまや塵芥《じんかい》の山と化し、原形を留《とど》めるものはなにもなかった。
装甲車はあの下か。脱出は不可能だったろう。
そう思ったとき、低く轟《とどろ》くエンジン音を耳にした。
美由紀の脇をかすめ飛ぶようにして、大通りをバイクが駆け抜けていった。
ハーレーダビッドソンの大型バイク、乗っているのは長い髪をなびかせたポアだった。
あの崩落から逃れるとは。
しかも彼女は、美由紀に目もくれずにどこかを目指して疾走していった。
夕子のもとに向かう気だ。
痺れる全身に力をこめ、美由紀は立ちあがった。
重い足をひきずって、ポアの後を追って走りだす。
見過ごせない。
あの女がメフィストから派遣されたのなら、目的は夕子ひとりだけだ。一緒にいる幸太郎の身を守る意志は皆無だろう。
というより、ポアの正体を知る身になった彼を、生かしておくはずもない。
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