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千里眼141

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:恐るべき瞳《ひとみ》午後六時すぎ。蒼《あお》みがかった空はまだ、黄昏《たそがれ》をわずかに残している。嵩原利行は日産プレ
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恐るべき瞳《ひとみ》

午後六時すぎ。蒼《あお》みがかった空はまだ、黄昏《たそがれ》をわずかに残している。
嵩原利行は日産プレジデントの後部座席におさまり、土浦|駐屯地《ちゆうとんち》につづく国道一二五号沿いにひろがる|霞ヶ浦《かすみがうら》を眺めていた。湖面は波打ち、きらきらと輝いている。じきに夜の闇が包み、湖も寝静まるだろう。この風景も過去のものになる。
そう。きょうもひとつの仕事を終えた。あの女も過去のものになった。
懐から図面を取りだすと、防衛省の印章が入った封筒にそれをおさめる。
この図面が国防上、どれだけの意味を持つものかはわからない。国の内外を問わず、軍事的に脅威となる書類やデータの流出は日常茶飯事だ。その内容に注目したところで、防衛政策局の調査課で働く嵩原の業績につながることはなにもない。分析は運用企画局の仕事だ。
俺としては、ただ与えられた職務をこなすだけだった。指示されたとおり、図面を取り戻した。それでいい。褒美は微々たるものだが、すでに受け取ってある。
思わず苦笑が漏れる。畔取直子、いい女だった。疑うことも知らず、文字どおり身を預けてくれた。
記憶が戻るのがもう少し遅れてくれれば、より堪能《たんのう》できたのに。身体の隅々まで味わいつくすことができなくて、残念だ。
報告書の作成が終わったら、土浦駅前のパチンコ店に舞い戻ってつづきをやろう。朝のほんの短い時間の息抜きだったが、連勝していた。ポケットにはまだ換金前の特殊景品がおさまっている。
経費を拝借しては麻雀《マージヤン》やパチンコに興ずる。ばれたら一大事と知りながらも、やめられない。宮仕えにも気分転換は必要だ。それに、大臣クラスの横領や賄賂《わいろ》がなおも横行している現状では、このていどの金額など問題ではない。
クルマはゆっくりと停車した。
行く手に土浦駐屯地のゲートが見えている。第112地区警務隊土浦連絡班の隊員が、運転手の身分証を確認し、ゲートを開けようとしているところだ。
嵩原は以前、陸上自衛隊に籍を置いていたころ、この駐屯地にある武器学校に勤務していたことがある。危険の伴う不発弾処理の現場での指揮をおおせつかることが多く、憂鬱《ゆううつ》な日々を過ごした。基礎体力作りに余念のない日課を強要されたのもたまらなかった。あれこれ画策して内部部局勤めの官僚に昇格できたことは、まさしく喜ばしいことだった。肉体労働など、ノンキャリにやらせておけばいい。
隊員が後部座席の嵩原に敬礼した。クルマは、ゆっくりとゲートのなかに入っていった。
そのときだった。後方から地響きのようなエンジン音が轟《とどろ》いたかと思うと、オレンジいろに輝く車体がゲートを突破し、日産プレジデントを追い抜いていった。
ランボルギーニ・ガヤルドは、駐屯地の敷地内道路をふさぐように横になって停車した。
運転手がクラクションを鳴らす。だが、ガヤルドは道を空けようとはしない。
ドアが開き、ひとりの女が降り立った。
嵩原は驚いた。岬美由紀だ。
後部座席のドアを開け放って、嵩原は車外にでた。「いったいどうしたんだね」
岬美由紀は険しい表情をしたまま、つかつかとこちらに向かってきた。「嵩原さん。お伺いしたいことがあるんですけど」
「なんだね。私は忙しいんだ。きみもサインドが職務内容を説明できないのは知っていると思うが」
「わざわざ元自衛官だったわたしを呼んだのですから、概要ぐらいは明かしていただいてもいいでしょう。畔取直子さんは何者だったんです。どんな図面を持っていたんですか」
「彼女は、特に危険人物というわけではない。あの辺りの地主だったご両親に先立たれたあと、遺産を食い潰《つぶ》して暮らしているだけの女性だった。ところがある筋から、北朝鮮のテポドン2号を擁する地下軍事施設の図面を、なんの因果か彼女が持っているとの情報が入った」
「軍事施設? というと咸鏡南道《ハムギヨンナムド》のミサイル基地ですか」
「そうだ。その重要性の高さはわかるだろう」
「本物の図面だったんですか?」
「さてね、知らんよ。私としては図面の入手のみが仕事だ」
「お仕事以外のことにも手を染められたようですが」
「なんの話だね?」
「嵩原さん。単刀直入にうかがいますけど。直子さんと夜を共に過ごしましたか?」
射るような鋭い目つき。嵩原はぎくりとして、視線を逸《そ》らした。
「きみには関係ないことだ」と嵩原は踵《きびす》をかえそうとした。
ところが美由紀は素早くまわりこみ、進路を塞《ふさ》ぐようにして立った。「プライバシーの侵害を訴えることができるのは、本物の夫婦のみです。サインドはその緊急性の高さから身内を装うなどの工作を容認されていますけど、相手が記憶を失っているのをいいことに、身勝手な快楽のために利用することなど許可してはいないはずです」
「岬君だったね。私はべつに、そんなつもりがあったわけではない。彼女のほうが私を頼ってきたんだ」
「それが本当だったとしても、実際には結婚していないわけですから安易な行動は慎むべきです。しかしながらあなたの場合は、故意にそうなるように仕向けた。あなたは直子さんを弄《もてあそ》んだんです」
「きみ!」嵩原はこみあげる怒りを抑えられなくなった。「元自衛官ではあるだろうが、きみはもう民間人にすぎない。立ち入ったことを口にするのはやめたまえ。後悔することになるぞ」
「それはあなたですよ。あなたは防衛政策局の、いいえ、防衛省の面汚しにほかなりません。直子さんに謝罪して、責めを受けることですね。言い逃れをするつもりなら、容赦しません」
嵩原は、周囲の冷ややかな視線に気づいていた。ゲートの警備についている隊員、運転手。誰もがこちらを見つめている。
「人前で侮辱しておいて、ただで済むと思うなよ。岬……美由紀だったな。畔取直子になにを吹きこまれたか知らんが、私には身に覚えのないことだ。失礼する」
「いいえ」と美由紀の低い声が告げた。「たったいま、あなた自身がその行為をお認めになりました」
「なんだと?」
「身に覚えがないといった瞬間、上|瞼《まぶた》が上がって、下瞼は緊張しました。同時に唇が水平方向に伸びました。この表情は後ろめたさと怯《おび》えの心理によって齎《もたら》されるものです。すなわち、秘めたる感情が露見することに対する恐れであり、発言内容は真実と食い違っていることを表します」
時間が静止したかのように感じられた。
鼓動が激しくなっていくのがわかる。思わず後ずさりたくなる。だが、この場に逃げ隠れできる場所などない。
なにを焦っているんだ。嵩原はみずからを叱咤《しつた》した。たかが小娘のいうことだ。しらばっくれていればいい。
嵩原は笑いとばした。空虚な自分の笑い声をきいた。
「なにを言いだすかと思ったら。運転手に聞いてみるといい。私がそんな表情をしたか?」
「〇・二秒以下のことですから、たぶん運転手さんには観察できなかったでしょう」
思わずいっそう引きつった笑いを発しながら、嵩原はいった。「〇・二秒! これまた常識外れなことを言いだすものだ」
「ちなみに、いまはおかしさなど微塵《みじん》も感じていませんね。焦燥感を覆い隠そうと、大仰な作り笑いでごまかしているだけです」
「なんでそんなことを……」
「眼輪筋が反応していません。眼輪筋は内と外との二重構造になってて、瞼とそのすぐ下の皮膚を収縮させる内側の筋肉は意図的に動かせても、眉《まゆ》と頬に表れる外側の筋肉については無意識にまかせるしかない。本気で笑っていれば反応がでるはずです」
「くだらない話もいい加減にしたまえ!」嵩原は怒鳴った。「それを見て取ったとでもいうのか? きみは一秒以下のほんの小さな動きも見逃さない、昆虫のような目をしているとでもいうのかね。きみは自衛隊でどこの部署だった? 履歴を取り寄せて、きみの上官がどう評価していたかを詳しく調査……」
「百里《ひやくり》基地、第七航空団第二〇四飛行隊。二等空尉でした」
嵩原は絶句した。
二〇四飛行隊……。
「すると……イーグルドライバー?」
「おっしゃるとおり、F15DJの操縦|桿《かん》を握ってました」
心臓が張り裂けそうになる。
たしかに航空自衛隊では女性パイロットの採用がつづいている。何年か前、若い女性自衛官がF15に乗ることになったと聞いた。
すると、この女が……。
「おわかりですか」岬美由紀は静かに告げた。「音速の二倍を超えて飛ぶ戦闘機を操縦していた人間にとっては、〇・一秒どころか〇・〇一秒の光景ですら、見落としの対象にはなりません。表情筋の変化から感情を正確に把握することは、臨床心理士として学びえた知識ですが、わたしの場合はそこに速さも加わったようです」
なんてことだ。
この女は、こちらの表情や眼の動きだけで感情を読みとってしまう。脳のなかを透かして見ているかのようだ。
まるで千里眼だ。いや、この女は……。
「そうか」嵩原はため息とともにつぶやいた。「幹部自衛官を辞職して、臨床医学関係に再就職した結果、千里眼と呼ばれるようになった女の噂を聞いたが……。きみのことだったか」
「いまのうちにお認めになったほうが賢明です」
「……知らんな。きみがどんな評判をとっていようが、それはきみの主観だ。きみがそう感じたというだけで、私を有罪にできるのか? よく考えてみたまえ。証人尋問に呼ばれたとして、きみは裁判長になにを言うつもりだね? 表情がどうの、瞬きがどうのと解説するのか? ナンセンスだ」
「防衛省の査問会議ではなく法廷を連想したんですね。あなたが法に抵触する行為に及んだと自覚しているからです。物証なんか、必要ありません。言葉を交わせば交わすほど、あなたの化けの皮は剥《は》げ落ちていくのですから」
岬美由紀の目は怪しい光を帯びていた。レーザーのように極細の光線を放ち、こちらの脳細胞をひと粒ずつ検証するかのように思えた。
嵩原は泥沼に嵌《はま》っていく自分を感じた。
なにも喋《しやべ》ってはいけない。目すら合わせてはいけない。すべてが明るみに引きだされてしまう。この女のせいで、キャリアのすべてを失ってしまう……。
思いがそこに至ったとき、嵩原は身を翻して駆けだしていた。
建物に入ってしまえばいい。民間人の岬美由紀は追ってはこれない。
ところが、背後で美由紀の声がした。「待って!」
ちらと振り返ると、美由紀はすぐ近くにいた。全力で走り、追いつこうとしている。
逃げねば。嵩原は歯を食いしばり、がむしゃらに走った。もう周囲の目など構っている場合ではない。恐れるべきは、岬美由紀の目だけだ。
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