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千里眼148

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:メッセージ美由紀は地下鉄の青山一丁目駅に降り、半蔵門線に乗った。ひと駅で降りて、永田町駅から有楽町線に乗り換える。午後十
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メッセージ

美由紀は地下鉄の青山一丁目駅に降り、半蔵門線に乗った。ひと駅で降りて、永田町駅から有楽町線に乗り換える。
午後十時すぎ、帰宅を急ぐサラリーマンの姿も少なくなっている。駅構内ではときおり警官の姿を見かけたが、美由紀はなにげなく進路を変えて別の通路から先を急いだ。
有楽町線は池袋方面行きに乗り、護国寺《ごこくじ》駅で降りた。
階段を昇ると、講談社の前にでた。ひとけはほとんどなかった。音羽《おとわ》通り沿いには出版社のビルが数多くあるが、とっくに退社時刻は過ぎている。
駅の売店で買った『ダリス』誌の奥付に記載された住所によると、ノウレッジ出版の本社ビルもこのすぐ近くだ。グラビアページには、これまた眉唾《まゆつば》ものの北朝鮮最新鋭潜水艦の図解が載っていたが、例のミサイル基地の図面のイラストと画風はうりふたつだった。
胡散臭《うさんくさ》い出版社だけに、怪しげな情報網もあちこちに張りめぐらせているのだろう。大元を辿《たど》った結果、ついにこの会社に行き着いたわけだ。
そこは音羽通り沿いの建築物のなかでは小さな部類に入る、五階建ての細いビルだった。宣伝の垂れ幕がかかっている。衝撃の新写真週刊誌、週刊インシデント創刊。
正面のエントランスは閉まっているが、三階には明かりがついている。ブラインドの隙間から、雑然としたオフィスのような部屋だとわかる。たぶん編集部だろう。夜遅くまで作業しているということは、雑誌を担当する部署の可能性も充分にありうる。
美由紀は辺りを見まわし、通行人がいないことを確認すると、ビルの脇に滑りこんだ。
外壁は滑りやすいタイル張りだったが、雨どいは頑丈だった。美由紀は縦に伸びるポリ塩化ビニル樹脂の管をよじ登った。すぐ近くにすりガラスの窓があり、足をかけることができる。
二階までは楽勝だったが、三階では窓を頼りにすることができなかった。すりガラスに身体を圧着させたのでは、中にいる人間に気づかれる恐れがある。
てのひらに汗をかき、滑りやすくなっていた。美由紀は歯を食いしばって足を壁面に踏ん張り、身体を押しあげた。
なんとか四階に達すると、美由紀は窓枠にしがみついた。中指にはめているカルティエのラブリングのダイヤをすりガラスにあてがい、円を描くように強くこすりつける。円形の傷の中央に肘鉄を食らわした。ガラスに丸く穴が開く。手を差しいれて錠を外した。
暗い四階のフロアに忍びこむ。そこは倉庫で、ダンボールが山積みになっていた。
階段に向かおうとしたが、廊下にでるための扉には鍵《かぎ》がかかっていた。指先で鍵穴に触れてみると、ピッキングが不可能なカバスターキーだとわかる。
階下に降りる道は断たれた。それでも、ようすをうかがうだけなら方法はある。
美由紀はしゃがんで、床をさすった。メンテナンス用の通用口の蓋《ふた》は、すぐに見つかった。
それを開けてなかに入る。床下はわりと広く、縦横に鉄骨が張り巡らされていた。鉄製のはしごを降りると、底部から明かりが漏れている。
三階の天井裏だ。埋め込み式のライトの熱を逃がすための穴があいている。
細い梁《はり》の上に身体をうつぶせに横たえて、美由紀は穴のなかを覗《のぞ》きこんだ。
事務机がいくつも突きあわされた島にはひとけはなく、ただひとり、頭の禿《は》げた男が居残って仕事をしていた。受話器を耳にあてている。
「……ええ、そうなんですよ」男は情けない声をあげていた。「あの銀杏《いちよう》並木のカフェテラスの店です。先週号の女優の色恋|沙汰《ざた》も、あそこの萩森って従業員から買った情報が元になってスクープ……。ああ、そうですよ。Jリーガーのも萩森のところがソースです。でも一時間ほど前から、電話に出ないんですよ、萩森が。連絡も寄越さないし、どうもトラブったみたいで……」
情報源のひとつを失ったことを、早くも察知したらしい。
男は甲高い声で告げた。「いえ、それなら警察から連絡が入ると思うんですが、そうでもないので……。ありえますね、ええ。追いかけてた誰かに見つかって、尻尾《しつぽ》をつかまれたのかもしれません。……そこはだいじょうぶです。あの店から情報を買ってる物証は残してませんし、全面否定すれば、うちとつながってることはバレません」
尻尾切りか。ぬかりのない連中だと美由紀は思った。慎重に動かないと、この会社の不正を暴くことは困難になる。
「それより」と男は受話器にいった。「製本工場のほうが心配ですよ。……いえ、表のほうじゃなく、裏のほうですよ。そう、ショウブマチにある」
美由紀は携帯電話のフリーメモを表示し、�しょうぶまち�と入力して変換した。勝負待ち、正部町、菖蒲町。
たぶんこれだろうと美由紀は思った。正部町のほうは石川県金沢市だ、都内に本社があるノウレッジ出版の製本工場としては不向きのはずだ。菖蒲町なら埼玉県にある。
男の声が聞こえてくる。「その菖蒲町の製本工場……、いや、表向きは違いますけど、あそこで外国人労働者を雇ってるじゃないですか。そう、不法就労者がほとんどですけどね。製造工程がバレちゃまずいんで、軟禁状態ですけど……。あいつらがヤバいことさせられてるって薄々勘付いて、逃げようとすることがあるんですよ。このあいだもフィリピン人が五人ほど寮から脱走を図りましてね」
製本所のくせに、製造工程を秘密にして、工場の所在までも隠している。どんな本を作っているというのだろう。
「……いや、警備員が無事に連れ戻しましたよ。でもその際に、少々手荒に扱ったんで、労働者どもがいっそう怯《おび》えてましてね。従順になった連中はいいんですが、外部に助けを求めようとする奴らは困りもので。……もちろん電話なんか使わせちゃいません。国への手紙も投函《とうかん》せず破棄してますしね。だから通報の心配はないんですが、なかにはこっそり外に助けを求める奴もいるんですよ。……いえ、それがわれわれの裏をかく手を使いやがるんです。タマネギがいっぱいあるんで、それの汁使って書くんですよ。色校印刷とか、そのへんの紙にね。こうなるとわれわれにはチェック不可能です。とはいえ、外部の人間も気づかないですから、あのアホな就労者どもに救いの手はないわけですがね」
男は笑いながら、引きだしを開けた。黄色い表紙のファイルを取りだし、それを開いている。
なんだろう。美由紀は覗きこもうと、穴に顔を近づけた。
そのとき、頑丈だと思ってた梁のひとつが大きくしなって、耳障りな音を立てた。
はっとした男が、こちらを見あげる。
出版社勤務とは思えないやくざ顔の男は、ずっとこちらを注視していた。目を逸《そ》らそうとしない。
やがて、椅子の上に立ち、天井に手を伸ばしてきた。
電球のカバーを外されたら天井裏が見える。もうじっとしてはいられなかった。
美由紀は梁の上を転がり、撤退を開始した。足音が大仰に辺りに響く。
「誰だ!」男の声がした。
情報はここまでか。美由紀は四階に這《は》いだし、ただちにサッシ窓から外に身を躍らせた。雨どいを滑り降りて、地上に舞い戻る。
と、ビルの脇から音羽通りの歩道にでたとき、思わず足がすくんだ。
すぐ近くにパトカーが停車していて、赤いパトランプが瞬いていた。しかも悪いことに、ふたりの警官が車外に出ていて、うちひとりと目が合ってしまった。
もうひとりも振りかえった。固唾《かたず》を飲み、互いが静止する一瞬があった。
次の瞬間、警官のひとりがいった。「いたぞ」
美由紀はとっさに身を翻した。
だが、それは警官たちを引き寄せるためのフェイントだった。ふたりがガードレールを乗り越えて歩道に入ろうとしたとき、美由紀はそのまま回転してガードレールの柱に片足を乗せ、勢いよく跳躍した。
パトカーのボンネットの上に転がった美由紀は、車体の向こう側に着地した。運転席側のドアを開け、なかに乗りこむ。
「よせ!」と警官のひとりが怒鳴って、助手席側に駆け寄ってくるのが見えた。
だが、アイドリング状態のクラウン改造型のパトカーを発進させることなど、一秒もあれば充分だった。アクセルを踏みこんで加速する。追跡する警官たちの姿は、バックミラーのなかでたちまち小さくなっていった。
大塚警察署の前を猛スピードで駆け抜けて、護国寺前の信号を左折、不忍《しのばず》通りを目白通り方面に向かった。
畔取直子という不幸な女性に安堵《あんど》を与えられるまで、いかなるルールを破ることも辞さない構えだったが、次から次へと見過ごせない状況が発覚する。こうなったら、とことんまでいくしかない。
ノウレッジ出版の不正を暴くために、向かうべきは菖蒲町にあるという製本工場だろうか。だが、なんのためにかその所在は秘密になっているという。探そうとして見つかるものではないだろう。
それに、リミッターのないパトカーを飛ばすのは快適だが、このまま走りつづけるのは好ましくない。カーロケーション・システムの電波を発していて、警察本部に位置情報が伝わってしまう。
カーロケのスイッチを切りたいが、どこにあるのかわからない。F15の複雑な計器類は隈《くま》なく理解できても、パトカーには詳しくなかった。
と、前方に、派手なエンジン音を奏でるクルマのテールランプが見えた。
走り屋仕様のスバル・インプレッサだった。たぶんクルマのいない夜中の都心を走りまわろうと繰りだしてきたのだろう。
ちょうどいい。あの手のクルマなら、便利な物を持っているだろう。
美由紀はパトカーの速度をあげてインプレッサを追い越し、その行く手をふさぐようにして斜めに停車した。
窓を開けると、インプレッサの運転席で若い男がぽかんと口を開けていた。
インプレッサのダッシュボードの上で、点滅しながら電子音を発する物体が見える。レーダー探知機だった。音声がきこえてくる。カーロケ電波を受信しました……。
「あ、あの」インプレッサの運転手は窓から顔をだし、怯えたようすできいた。「なにか?」
「いいから」と美由紀はいって、パトカーの無線機の辺りにある配線を一本ずつちぎっていった。
やがて、緑いろのケーブルを引きちぎったとき、インプレッサのレーダー探知機の点滅は消え、静かになった。
カーロケ電波は殺せた。ついでにもうひとつ頼みたいことがある。美由紀はきいた。「マッチかライター、ない?」
若い男は面食らった顔のままうなずくと、使い捨てライターを取りだし、こちらに投げてきた。
それを受け取ると、美由紀はいった。「ありがと。無茶な運転はしないでね」
すぐにパトカーを急発進させ、美由紀はその場を走り去った。
警察無線から声が聞こえてくる。至急至急、警視庁から各移動。マル被、大塚3を奪い逃走中。音羽通りから不忍通り目白方面……。
マル被か。すっかり被疑者というわけだ。偽の情報に注意しなければならない。パトカーを奪ったことは警察に知れている。彼らも傍受されているとわかっている無線で、たいせつな情報のやり取りはしないだろう。
目白通りに入った。美由紀はパトカーを側道からガード下に乗りいれ、人目につかない橋梁《きようりよう》の下で停車させた。
封筒から北朝鮮ミサイル基地の偽図面を取りだし、広げる。
これがもし、その裏の製本工場から流出したものだとしたら……。
ライターに火を灯《とも》し、その紙をあぶった。
製本工場にはなぜかタマネギが大量にあって、軟禁状態の労働者はその汁でメッセージを書き、救いを求めているという。ということは……。
図面の白い部分に、うっすらと文字が浮かんできた。
 タスケテクダサイ ケイサツニデンワシテ ショウブマチオオアザアリカワ2312
 やはり。あぶり出しか。
文字はいびつだった。日本語をよく知らない外国人労働者が、なんとか書きあげたものだろう。
あいにく、警察に追われる立場のわたしが通報しても、まともに取り合ってくれるとは思えない。
でも、安心して。美由紀は会ったこともない相手に対しつぶやいた。わたしがあなたたちを助けだしてみせるから。
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