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千里眼150

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:始発警察署に向かうトラックからひとり途中下車した美由紀は、国道十七号線沿いにぽつんと建つコンビニの駐車場で腰を下ろした。
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始発

警察署に向かうトラックからひとり途中下車した美由紀は、国道十七号線沿いにぽつんと建つコンビニの駐車場で腰を下ろした。
真夜中の二時、クルマの往来もなければ立ち寄る人もいない。それでも、コンビニの窓から漏れてくる明かりは貴重だった。こうやって外で座っているだけで充分な光を得られる。
デニムの尻《しり》ポケットから丸めた雑誌を取りだす。週刊インシデント。
発売日を見ると、七月二十八日となっている。今年の隅田川花火大会はたしかきょうから一週間後、二十八日のはずだ。
大事故が起きた翌日に、早くも特集記事をリリースして、創刊号の目玉にする腹積もりなのだろう。
表紙を眺めると、さっきは気づかなかった別の見出しが目に入った。北朝鮮ミサイル基地図面を持った謎の女。
ページを繰って、その記事を探した。見開きで載っているのは、暗視カメラでとらえたとおぼしきピンボケの写真だった。
白いワンピースを着た女が、ごつごつとした岩が連なる地形のなかを逃げている。女の顔ははっきりしないが、望遠で拡大して捉《とら》えていた。
思わずため息が漏れる。顔が映っていなくても、髪型と体型で畔取直子だとわかる。場所も北茨城の五浦海岸に相違ない。
記事には、写真にあわせていい加減な状況がでっちあげられていた。
『ダリス』誌に掲載され話題を呼んだあのミサイル基地の図面は、日本国内に潜伏する正体不明の女A子が送りつけたものと判明した。本誌記者はその所在を突き止め、取材するべく茨城に向かったが、女は逃亡を図り、嵐のなかの五浦海岸に姿を消した……。
A子は日本人だが、なぜあのような北朝鮮国家の存続に関わる重要な図面を持っていたのか? 本誌記者は、A子が女子サッカーの熱烈なファンだという事実をつきとめた。女子サッカーといえば、最新のFIFA女子ワールドカップが中国でおこなわれ、北朝鮮チームも出場していたことが記憶に新しい。しかもA子は、天津|奥林匹克中心球場《オリンピツクセンタースタジアム》でおこなわれた北朝鮮チームの試合を観戦したことがわかっている。おそらく彼女はこのとき、北朝鮮の軍事関係者と接触したのではなかろうか。
 開いた口が塞《ふさ》がらないとは、まさにこのことだと美由紀は思った。
畔取直子は、まんまとこのフィクションの登場人物に仕立てられている。記事には、逃亡するA子の声も録音したと書いてあるが、二〇〇三年のワールドカップ観戦のためのヘソクリと同様、もっともらしい物証を作ろうとしただけだろう。
ここまでくると、直子はたぶんノウレッジ出版に雇われていたエキストラだった可能性が高い。裕福な彼女にとってはギャラの金額など問題ではなく、ただ賑《にぎ》やかな仕事を求めてマスコミに関わりたいと思ったのかもしれない。直子自身がどれだけ納得していたことかは別として、彼女がA子を演じ、捏造《ねつぞう》がおこなわれたことはたしかだ。
だが、情報が情報だけに聞きつけた防衛省が乗りだしてきて、しかも悪いことに直子が転落事故を起こして記憶を失ったせいで、サインドまで実施されて大事《おおごと》になってしまった。
やらせに端を発する不幸の連鎖。元凶はこの雑誌にほかならない。しかもこれによれば、より大きな捏造が準備段階にあるわけだ。
隅田川花火大会関連の記事を、詳しく読みこむ。
 花火大会が開始して三十分ほど経ったとき、轟音《ごうおん》とともに大爆発が起きて、会場周辺は瞬時に焼け野原になった。ビルは倒壊し、木造家屋は焼け落ち、辺り一面は空爆の直後のように跡形もなくなっていたという。そして、そこかしこに累々《るいるい》と横たわる黒焦げの死体……。
 掲載されている写真には、現場のようすはなかった。まだ起きてもいない事故なのだ、当然だろう。代わりに、事故の背後にあった陰謀らしきものを裏づける、隠し撮りのような写真が説明つきで載っていた。
レゲエのようなファッションの男が道端に座りこんで、敷物の上に商品を並べて売っている。日本ではなく、どこか外国のようにも見える。
写真に添えられたキャプションによれば『危険な爆発物を売ったと思われる怪しい外国人』。
 この外国人トマス・ミクス(仮名)は、爆弾の密造業者として某国を追われた過去があると噂されている。花火大会当日の午後一時すぎ、トマスはとある日本人男性と接触している。午後三時過ぎ、この日本人男性の上着が警察により東京湾で発見された。場所はレインボーブリッジのちょうど真下あたりで、これより早い時間に勝鬨橋《かちどきばし》の下に漂っているのを見たという目撃証言も多く、隅田川方面から流れてきた可能性が高い。
 当日は、この記事のシナリオどおりに捏造がおこなわれるのだろう。実際に漂流する上着を大勢の人々の目に触れさせたり、警察に通報して発見させる気にちがいない。むろん、上着は男が溺死《できし》したように示唆するためだけのものであり、実際には芝居の道具立てにすぎない。
だが、この外国人のほうはどうだろう。日本人男性と接触する場所は、どこに設定されているのだろうか。写真は外国のようでもあるが……。
穴が開くほど写真を見つめるうちに、美由紀は違和感を覚えた。
男の背後にある看板にFree Marketと書いてある。
正しくはFleaと綴《つづ》らねばならない。蚤《のみ》の市という意味のフランス語に由来する。自由《フリー》と勘違いするあたり、いかにも日本人らしい間違いだった。
これは日本だ。トマスなる男も日本育ちで英語に疎いか、単に外人っぽい顔をしているだけで純粋な日本人の可能性がある。
もしそうなら、この写真そのものが当日の彼を隠し撮りしたという意味の演出かもしれない。花火大会の日、トマスはどこかでフリーマーケットに出ているということだ。とすれば、取り引き相手の上着が二時間後に東京湾で見つかっているのだから、出店も都内に違いなかった。
ひとしきり考えて、美由紀はうずくまった。
デニムの膝《ひざ》が破け、血がにじんでいる。
畔取直子の無念を晴らすために行動を開始したのに、いまは花火大会の大惨事を食い止めねばならなくなった。
だがこれは、本来の目的を見失ったことにはならない。直子がやらせ出版物の協力者だったにせよ、事故で記憶を失ったことにつけこまれ、身体を弄《もてあそ》ばれた事実は消えない。彼女は性犯罪の被害者だ。
そう、その一点だけでも、わたしが努力する意義はある。ノウレッジ出版の陰謀を阻止し、直子の不安の種をすべて取り除く。彼女のためなら頑張れる。心に傷を負った彼女のためなら。
美由紀はゆっくりと立ちあがった。JR高崎線の桶川《おけがわ》駅はそう遠くはない。いまから歩けば、朝の始発には間に合うだろう。
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