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千里眼176

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:購入者足尾電子秤工業は、足尾山麓の筑波山方面に広がる広大な敷地だった。フェンスのなかに見える工場棟はどれも年季の入った建
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購入者

足尾電子秤工業は、足尾山麓の筑波山方面に広がる広大な敷地だった。フェンスのなかに見える工場棟はどれも年季の入った建物で、美由紀が四歳のころから存続していたとしても不思議ではなさそうだった。
だが、ここに来た覚えは美由紀にはなかった。フラッシュバックする記憶もない。ただ思いだせないだけかもしれないが……。
ヴェイロンの車内から工場を眺めていると、伊吹がふいに速度をあげた。
どうしたのだろう。前方を見ると、工場に入ろうとしている十トントラックが見えた。ゲートは、そのトラックを通すために開いている。
伊吹はトラックを外側から抜き去ると、ステアリングをゲートのほうに切りながらサイドブレーキをかけた。テールがスライドし、ヴェイロンは横滑りしながらトラックの鼻先をかすめ、門のなかに飛びこんでいった。
トラックがあわてて急ブレーキをかけ、けたたましい音が響く。ヴェイロンは広々とした工場の庭で、ターンしながら停車した。
にやりとしながら伊吹がいった。「時間を無駄にしたくなかったんでね」
美由紀は呆《あき》れて首を横に振って見せた。「不法侵入よ」
「おまえに言われたかねえな。あ、誰か来た。ありゃそれなりの責任者だな」
ヘルメットを被《かぶ》った体格のいい男が、しかめっ面で近づいてくる。「第二工場長の村沢ですが。どちら様です?」
伊吹がドアを開け放ち、外に降り立ちながらいった。「どうも、村沢さん。ちょっと伺いたいことがありましてね」
「新聞記者の方ですか? なら、ゲートのところでちゃんと受付をしてください。いまは社長もいないんで、質問に答えられる人間は誰もいませんよ」
美由紀は妙に思った。不法侵入したクルマを即、新聞記者と結びつけた。取材攻勢にでもあっているのだろうか。いまはひっそりとしているようだが。
「冗談」と伊吹は村沢に笑った。「このクルマが、記者の取材用車に見える?」
「……たしかに凄《すご》いクルマですな。車重はどれくらい?」
秤の工場で働いているだけに、目新しい物を見ると重さが気になるのかもしれない。だがいまは、こちらとしても尋ねたいことがある。美由紀はドアを開け、車外にでた。
「すみません。村沢さん、なにか取材を受けるようなことでもあったんですか?」
「そりゃ、例の発砲事件だろ。漆山《うるしやま》の告別式は終わったばかりなんだし、遺族もショックを受けているだろうから、しばらくほっといてくれないかな」
「発砲事件……。漆山さんという方が亡くなったんですか」
村沢は眉《まゆ》をひそめた。「あなたたち、そのことで来たんじゃないのか」
「いえ。関係があるかどうかは、まだわからないんです。漆山さんは、こちらの社員の方だったんですか?」
「漆山|靖史《やすし》、第四工場長だ。定年間際だった。享年六十四歳。あんな気の毒なことになるなんてな」
「どこで銃撃されたんですか」
「朝、自宅の玄関を出たところを、乗りつけられた黒の外車から降りてきた男に撃たれたとさ。ほぼ即死だったそうだ」
「撃ったのは誰ですか?」
村沢はうんざりしたような顔になった。「もういいだろ。記者じゃないんなら、ただの野次馬かい? 犯人についてなら、とっくに逮捕されて桜川警察署に留置されてるから、そっちで話を聞きなよ」
「わかりました。あ、でも、もうひとつだけ」
「なんだね」
「漆山さんが工場長を務めてたっていう第四工場というのは、どんな秤《はかり》を製造してたんですか?」
「輸送機用の大型で特殊なやつだ。搭載したコンテナの総重量を検出する……」
「ああ。自衛隊がCH47に導入している、あれですね」
「そうだ。よく知ってるな……。自衛隊機をはじめ、国内機のシェアの九割以上は、ここの第四工場で製造された秤が独占してる」
美由紀は、気になったことをそのままたずねた。「北海道と沖縄では重力が違うから、秤の計測にもずれが生じると思いますが」
「ほんの〇・一八グラムの差だが、それを修正する仕組みが導入してある。秤にGPSが内蔵してあってな。輸送機が世界のどこに飛んでも、その国に必要な微調整をおこなう。漆山も開発に携わってきて、ソフト部分の管理責任者だった」
「でも、どうして撃たれたんでしょう?」
「さあな。恨みを買うような人間でもなかったんだがな。私の知ってるのはそれぐらいだ。警察にでもどこへでも行って、調べてくればいい」
村沢は背を向けると、工場棟に立ち去っていった。
そのとき、美由紀の携帯電話が鳴った。
「はい」と美由紀は電話にでた。
「美由紀」舎利弗の声だった。「二十四年前、東京駅の駅長が殺されてる。当時の新聞に出てた」
「殺人なの……?」
「そう。国鉄からJRに変わったばかりで、駅長がふたりいることを知らなかった犯人が、間違って別のほうの駅長を殺してしまったって事件だ。被害に遭ったのは、東海旅客鉄道のほうの駅長だった杉並信也《すぎなみしんや》って人だったんだが、犯人が狙っていたのはJR東日本のほうの漆山靖史駅長……」
はっとして美由紀はきいた。「なんですって? いまなんて?」
「漆山靖史駅長、当時四十歳と記事にあるけど……。それがどうかした?」
美由紀は振りかえった。村沢の背はもうかなり遠ざかっている。
「村沢さん!」美由紀は声を張りあげた。「漆山さんがこの工場で働くようになったのは、いつごろですか?」
迷惑そうに振り向いた村沢が怒鳴りかえしてきた。「二十年か、もう少し前ぐらいだろ。東京で脱サラした後、田舎に来たが農業に馴染《なじ》めなかったんで、ここで働くことになったと聞いた。なんでもいいから、出てってくれないか。警察を呼ぶぞ」
ぷいと背を向けた村沢が歩き去っていく。美由紀はそれをぼんやりと眺めていた。
伊吹が声をかけてきた。「どうしたんだ、美由紀?」
「殺された工場長は、二十四年前にも命を狙われてた」
「なんだと? 犯人は今度と同じか?」
まだわからない。美由紀は携帯電話に告げた。「舎利弗先生、駅長を殺した犯人について、なにか手がかりはある?」
「犯人なら、現行犯で逮捕されたよ」
「現行犯? 殺人現場で逮捕されたの?」
「そうだよ。駅構内でいきなり拳銃《けんじゆう》で撃ったらしくて、駆けつけた警官に取り押さえられた。仁井川章介《にいがわしようすけ》、当時三十二歳。指定暴力団の仁井川会の跡継ぎだったって書いてある。このとき逮捕され懲役十年、しかも人違い殺人だったってことから仁井川会を破門され、出所後の行方は不明。仁井川会は次男が継いだ。仁井川章介は事件以前から独自の密輸ルートを運営していたらしいから、いまもそれで生計を立てている可能性がある……ってことだ」
すると出所してから、さらに十四年経ったいま、本来のターゲットだった漆山を殺害したということだろうか。
暴力団の元跡継ぎによる殺人。わたしとはまるで無関係に思える。だが、どうも気になる。胸騒ぎが収まらない。
「舎利弗先生。その犯人の……仁井川章介って人だけど。写真はない?」
「あるよ。メールで携帯に送る。じゃ、またあとで」
電話は切れた。
美由紀は呆然《ぼうぜん》と立ち尽くしていた。
「それで」伊吹がきいてきた。「次はどうする?」
「……桜川警察署って、どこだかわかる?」
「ここに来るまでの道に案内が出てたな。たぶん、この辺りの所轄だろう」
「じゃ、そこに行って、漆山さんを銃殺した犯人と面会するしかないわね」
「応じてくれるかな。っていうより、たしかな線なのか?」
「さあ。まだ詳細は何もわかっていない……」
携帯電話が鳴った。メールを受信した。
液晶画面を見ると、画像が表示されていた。
仁井川章介、二十四年前の顔。
短く刈りあげた頭髪、太い眉、目つきは悪く、鼻は潰《つぶ》れたように低かった。歪《ゆが》んだ唇から覗《のぞ》く歯は、何本か抜け落ちているのがわかる。
「……美由紀?」伊吹の声がした。「おい美由紀、どうかしたのか」
伊吹が抱きとめようとする寸前、美由紀は膝《ひざ》から崩れ落ちた。
携帯が投げだされ、地面を転がる。
この男だ……。
陳述記憶にはアプローチできないため、最も辛《つら》い思い出は想起できない。
しかし、この男の顔は非陳述記憶の領域にしっかりと刻みこまれていた。
積み木でわたしの頭を殴打し、白い粉の入った袋を大事そうに抱え、ほかの幼女たちにも暴行を繰り返していた。
携帯電話を拾いながら、伊吹がたずねた。「誰だ、この男?」
「二十四年前、小笠原でわたしを買った男」美由紀はつぶやいた。「群馬にわたしを連れてきて、生涯を狂わすような思い出を刻んだ張本人よ……」
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