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千里眼177

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:同一人物正午すぎ。依然として空は厚い雲に覆われていた。茨城県桜川市|真壁《まかべ》町にある桜川警察署、鉄筋コンクリート三
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同一人物

正午すぎ。依然として空は厚い雲に覆われていた。
茨城県桜川市|真壁《まかべ》町にある桜川警察署、鉄筋コンクリート三階建ての庁舎の正面玄関に足を踏みいれる寸前、伊吹は美由紀を押しとどめてきた。
「美由紀。いいか、まず深呼吸しろ」
「平気よ。わたしはいたって冷静」
「そうでもない。目つきが変わってきてるぜ? いまここで誓ってくれ。ぶち壊しにするような真似はしないって」
いらいらしながら美由紀はいった。「ぶち壊しにはしない。これでいい?」
「なあ、美由紀。ここの留置所に仁井川章介がいたとしてもだ、そいつに二十四年前のことを尋ねたいからと申しでたんじゃ、門前払いを食らうだけだ」
「どうしてよ」
「わかるだろ。たぶんもう時効だろうし……」
「わたしにとっては時効なんか……」怒鳴りかけて、美由紀は口をつぐんだ。「ごめんなさい。やっぱり冷静じゃなくなってる……」
「クルマに戻ってろよ。俺が事情を聞いてくる」
「いえ、いいの。わたしも一緒にいくから」
「……よし。じゃ、迷わないように段取りを決めておこう。留置場に面会に行った経験はあるか?」
「ええ。臨床心理士は刑事事件の容疑者にも接見することがあるの。伊吹先輩は?」
「俺は……入ったことがあるから。知ってるだろ?」
「ああ、そうだった……」
「面接はいま可能かな?」
「逮捕後、四十八時間は接見禁止だけど、地元の新聞に逮捕は四日前って出てるから。だいじょうぶじゃない?」
「必要なものは、身分証明書と印鑑だけか。知り合いじゃなくても会えるのかな?」
「原則禁止だろうけど、こっちが知人だって言い張れば顔を見るぐらいはできるだろうし」
「それでどうする? 二十四年前のことの証人になってくれって頼むのか?」
「……わからない」と美由紀はつぶやいた。「いまはただ事実を確かめたいだけ。それ以降のことなんて、とても想像がつかない……」
 玄関を入り、総合受付の警察官に美由紀は告げた。「漆山靖史さんの事件で、容疑者に接見したいんですが」
警察官は妙な顔をした。「事前にお約束が?」
「いえ。忙しかったので」
「失礼ですけど、容疑者とどんなご関係で?」
「旧知の間柄、っていうか……。ええ、ずいぶん昔の知り合いです」
「ご家族やご親族ではないんですね?」
「はい」
「すると斉藤《さいとう》さんの幼|馴染《なじ》みということですか」
美由紀は伊吹の顔を見た。伊吹も、眉《まゆ》をひそめて美由紀を見かえした。
「あのう」美由紀は警察官にきいた。「斉藤さんって?」
「……斉藤|雄介《ゆうすけ》さん。漆山靖史さん銃撃事件の容疑者です。彼の接見においでになったわけでしょう?」
「あ……はい。そうです。ちょっと気が動転して……」
伊吹がいった。「ショックで時々耳が遠くなるんです」
はあ、そうですか。警察官はなおも怪訝《けげん》な顔をしながらいった。「三階の留置管理課に行ってください。その階段からです」
どうも、と頭をさげて、階段に歩を進める。
「どういうことだよ」と伊吹がささやいてきた。「ここでの殺しは仁井川が犯人じゃなかったのか」
「そうみたいね……。でもどういう事態なのか、会ってみないことには判らない」
 留置管理課での手続きは煩雑だった。
所持品検査を受けたあと、何枚もの書類に書きこみ、さんざん待たされて、ようやく接見の時間は訪れた。
接見室は、テレビドラマでよく見かける殺風景な部屋そのままだった。装飾のない壁に囲まれた狭い部屋は、ガラスで間仕切りされ、向こうには容疑者が座る席、こちら側は訪問者の座る席が用意してある。
ガラスには声が通るように穴がいくつも開いているが、そのガラス自体が二枚重ねになっていて、穴もずらしてある。細い物ですら、ガラスの向こう側に投げこむことはできない構造だった。
斉藤雄介は、眼鏡をかけた五十歳すぎぐらいの男で、疲弊しきった顔で現れた。
誰が訪ねてきたのか、よく聞かされていなかったらしい。ガラスごしに美由紀たちを見ると、妙な顔つきになった。
「どなたですか」と斉藤がきいてきた。
美由紀は困惑して、伊吹を見た。
伊吹が小声でたずねた。「見覚えのある顔か?」
「いいえ。全然……」
「あのう」斉藤がいった。「私に何の御用でしょうか」
こちらから面会を申しでた以上、なにも尋ねないわけにはいかない。美由紀は告げた。「斉藤さん。漆山工場長を銃撃したそうですけど……」
「とんでもない!」ふいに斉藤は身を乗りだした。「私はやっていない!」
「おい」斉藤の肩越しに、警察官が注意した。「大声をだすな」
「やっていないといったら、やっていないんだ。何度いえばわかる。私はその朝、クルマごと牛久《うしく》市のほうに出かけてたんだ。漆山さんって人が住んでる土浦《つちうら》のほうなんて行っていない」
「事件に関する供述は取調室でおこなえ。接見を中止するぞ」
「接見って、だいたいこの人たちは誰なんだ。私は断固、抗議するぞ。早く弁護士を呼んでくれ。これ以上警察に喋《しやべ》ることなんか……」
呆然《ぼうぜん》としながら、美由紀は感じたままのことを口にした。「そうよ」
斉藤は押し黙り、美由紀を見た。警察官も眉間《みけん》に皺《しわ》を刻みながら、こちらに視線を向けてきた。
美由紀はいった。「斉藤さんは、嘘をついていない。冤罪《えんざい》だわ」
しばし唖然《あぜん》としていた斉藤が、興奮したようすで警察官に怒鳴った。「ほらみろ! この人も言っている。私は冤罪なんだ。これは誤認逮捕だ!」
「静かにしろ! すぐに留置室に戻れ。接見は中止だ」
「戻るものか。無罪の人間を勾留《こうりゆう》しておいて、ただで済むと思うな。女房と一緒に地検に怒鳴りこんでやるからな。覚悟しとけ」
そのとき、美由紀の背後のドアが開いた。
「騒々しいな」ワイシャツ姿の無骨な中年男が室内を見まわした。「接見だと聞いて上がってきたが、いったい何をやってるんだ」
どうやら、刑事課の人間らしい。この銃撃事件を担当している捜査員だろう。
斉藤がガラスごしに刑事にいった。「私の無罪を証明しに来た人たちだ。ちゃんと話を聞いとけ」
「誰だ? 知り合いか?」
「いや……。よくわからないが、そんなことはどうでもいい。三十五年にもわたって運転手稼業ひとすじの私は、交通切符一枚すら切られていない優良ドライバーだ。お抱えから独立して、この先年金暮らしまでの十余年を明るく楽しく暮らそうとしたとたん、警察はその自由を奪いに来た。まるっきり知らん襲撃事件とやらの容疑で、私の腕に手錠をかけた」
刑事がじれったそうにいった。「逮捕状なら見せただろう。襲撃に使われた高級外車セダン、ベントレー・アルナージも間違いなくおまえのクルマだ。近所の目撃者が証言したナンバーも一致した」
「四ケタだけじゃないか。陸運局名や、ひらがなのところは記憶してなかった、そうだろ?」
「何度いえばわかる。鑑識がタイヤ痕《こん》から、四輪の摩《す》り減りぐあいをそれぞれ調べあげた。ドライバーや走行の癖や、乗員がどこに乗るかによってタイヤの磨耗は一台ずつ変わる。いわば指紋と同じだ。それがすべて、ぴたりと一致してるんだぞ。あれはおまえのクルマだ。だいたい、フリーの運転手風情が、ベントレーに乗ってること自体不自然だろう。そんなに儲《もう》かってるのか?」
「こんな侮辱は初めてだ! 私はずっと社長に気に入られ、社長の自宅がある阿見町《あみまち》からつくばみらい市の会社まで、月曜から金曜まで休みなく送迎しつづけた。あのベントレーは七年前に社長が購入し、今年の八月七日に私が辞めるにあたって餞別《せんべつ》にと、くれたものだ。さすがによく走りこんだだけに、走行距離は九万キロを超えてたが……」
おかしい。美由紀は疑問を感じた。それでは計算が合わない。
「待って」と美由紀はいった。「阿見町からつくばみらい市を週五日、七年間往復したんでしょう? 国道四〇八号線を使ったの?」
「ああ、そうとも」
「じゃあ走行距離は十八万キロを超えるはずよ。九万キロに留《とど》まるはずがない」
「な、なんだって……?」
刑事が目をいからせた。「斉藤! でたらめをいうな」
「でたらめなんかじゃない」斉藤は必死の形相で訴えた。「私は同じ道を毎日、走りつづけた。嘘なんかついてはいない」
「ええ」美由紀はうなずいた。「斉藤さんはやはり、嘘をついてません」
「なんだ?」刑事は甲高い声をあげた。「ふざけてるんですか、あなたは」
「そんなつもりはありません。正しいことを告げてるだけです」
「斉藤がいったことは間違っていたんでしょう?」
「はい」
「なら嘘つきじゃないですか」
「そこは違います」
「どうして」
「顔を見ればわかりますから」
刑事は頭をかきむしり、ガラスの向こうの警察官にきいた。「留置管理課で接見者の身元はチェックしたな?」
「はい」警察官は戸惑いがちに応じた。「ええと、そちらの女性の方は、臨床心理士の岬美由紀さんとのことでしたが」
「岬……」刑事が驚きの目で美由紀を見つめてきた。「あなたが……千里眼?」
伊吹がにやついた。「地方のほうが知られてたりするんだよな」
斉藤も面食らったようすだった。「ほんとに岬さんですか?」
「ええ」美由紀は斉藤を見つめた。「あなたが冤罪なのは間違いないと思います。お聞かせ願いたいんですが、どこかの会社に雇われてたと仰いましたけど、そのときベントレーはどこに停めてましたか?」
「龍ヶ崎市上町横溝のタワー駐車場です。会社が借りてる駐車スペースですから、ふだんはそこに戻しておく決まりで」
「雇っていた会社名は?」
「待った」刑事が口をさしはさんだ。「岬先生。なんの権限でこの事件に首を突っこんでおられるんです。臨床心理士の派遣を要請してはいないし、だいいち、先生はいま公判中のご身分でしょう? 新聞で読みましたが」
「ええ……。たしかにそうです。ここには私用で来ただけです」
「失礼ですが岬先生。容疑者への接見というのは民間捜査を許可する場ではありません。不審な接見者には事情を聞くこともありえます」
「わたしが不審な人物なの? ちゃんと名乗ったけど」
「あなた自身が別の事件の被告人なのですから、怪しまれるのは当然でしょう」刑事は美由紀の腕に手を伸ばしてきた。「お越しください。聞きたいことがあります」
美由紀はすかさず刑事の手首をつかみ、合気道の小手返しの要領で身体をひねると、関節を極《き》めてバランスを崩させた。刑事の背にまわると、腰から手錠を引き抜く。美由紀は刑事の両手を後ろにまわさせて、手錠をはめた。
「痛《い》てて!」刑事が大声をあげた。「おい、早く応援を呼べ!」
ガラスの向こうで警察官が血相を変えて、ドアの外に飛びだしていった。
斉藤はぽかんと口を開けてこちらを見ている。
「心配ないわ」美由紀は斉藤にいった。「あなたの無罪はわたしが証明する。明日には釈放されるから、待ってて」
「……はあ」
伊吹がドアを開け放った。廊下に目を走らせてから、美由紀に合図してくる。
美由紀はうなずいて、廊下に駆けだした。
階段を降りようとしたが、制服警官が大挙して階下から押し寄せてくるのが見えた。
「こっちだ!」と伊吹が怒鳴り、上に向かう階段を昇っていく。
その後につづいた。伊吹がドアを蹴《け》り飛ばすと、外の光が射しこんだ。
屋上だった。三階建ての建物の頂上。日の丸の旗がはためいているほかには、何もなかった。
急げ、と階段から声がする。追っ手はもう間近に迫っていた。
建物の右手には、二階建ての別棟が隣接していた。そこまでの落差はほんの数メートルだ。
思うが早いか、美由紀は手すりを乗りこえてその屋根に身を躍らせた。
ほぼ同時に伊吹も跳躍した。二階建ての屋根はやはりコンクリートだった。美由紀は前転して衝撃を和らげながら着地した。
身体を起こして、今度は三階建ての本棟の玄関先に長く伸びた軒先を見おろした。どの警察署にもある車寄せの屋根だった。そこまでの落差もやはり数メートルだ。
今度は伊吹が先に飛んだ。トタンの屋根に身体を打ちつける。かなりの騒音だった。玄関にいる警備の警官も気づいただろう。
美由紀も屋根に飛び移った。そのまま前方に駆けていき、本棟から離れる。
屋根ぎりぎりの縁に到達し、ふたり同時に表通りの歩道に飛び降りた。
アスファルトに転がったとき、女性が運転する自転車に轢《ひ》かれそうになった。けたたましい急ブレーキとともに、美由紀の顔からわずか数センチのところで、自転車のタイヤは停まった。
「ごめんなさい」と美由紀は告げて、ただちに起きあがると、ヴェイロンに向かって走った。
伊吹が運転席に乗りこみながら言う。「早く乗れ、美由紀!」
美由紀が助手席に飛びこんだとき、署の玄関から警官らが駆けだしてきた。
「発進して!」と美由紀はいった。
ヴェイロンはエンジンがかかった直後に一気に滑りだし、まっすぐ伸びる公道を直進していった。
サイレンの音が後方に響く。振りかえると、パトカーが追跡してきていた。
「なめんな」と伊吹がギアを入れ替え、アクセルを踏みこむ。
その加速は、F15Jの離陸時、アフターバーナーの点火が与える唐突な推進力にうりふたつだった。公道は滑走路のように流れ、このまま飛び立つのではと思えるほどのGとともにヴェイロンは疾走した。はるか向こうに見えていた黄いろの信号が、赤になるよりも前に交差点を通過した。
圧倒的なトルクの差。サイレンの音は徐々に遠ざかり、ついには聞こえなくなった。
伊吹はほっとしたようにため息をつきながらも吐き捨てた。「騒ぎを起こすなってあれほどいったのに」
「だって……。あの人は冤罪《えんざい》だし」
「また他人の心配かよ。千里眼が見抜いたっていうだけじゃ有罪無罪は決められねえって、裁判長も言ってたじゃねえか」
「だから証拠を固めに行くの。斉藤さんは、会社にいたころ龍ヶ崎市上町横溝のタワー駐車場にベントレーを停めてたって、そう言ってた。そこまで行ける?」
「ああ。そんなに遠くはないが……。行ってどうする? 彼の無罪を証明できる見込みでもあるのか?」
「ええ、たぶんね」
「……まったく、恐れいったよ。変わらないな、美由紀は」
「え?」
「自分のことより他人のことばかり心配しちまう。それがおまえの本質かもな」
美由紀は苦笑してみせた。「そうじゃないわよ。やむをえなかったっていうだけ……」
漆山靖史を銃殺した犯人を探しだすことは、必ずしも斉藤のためだけではない。
その犯人とはおそらく、二十四年前に漆山の命を狙った人間と同一だからだ。
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