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千里眼175

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:暗雲の記憶翌朝、群馬の空はどんよりと曇り、遠雷もきこえていた。関東の雷の発生源という知識が、早くも裏付けられる光景だった
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暗雲の記憶

翌朝、群馬の空はどんよりと曇り、遠雷もきこえていた。関東の雷の発生源という知識が、早くも裏付けられる光景だった。
嬬恋《つまごい》村、上信越高原国立公園のなかを走る一本道を、伊吹の運転するヴェイロンが走りつづける。美由紀はその助手席におさまり、十八世紀の浅間山の大噴火で溶岩流によって形成された、やや不気味な岩の台地を眺めていた。
「美由紀」と伊吹がステアリングを切りながらいった。「いちおうこの辺りも、雷雲の通り道だけどな。風景を見て、なにか思いだすことはないか」
「さあ……。いまのところないけど」
「そうか。ま、焦ることないけどな。じっくり探すだけのことだ」
無言のまま美由紀は、ウィンドウに映りこむ自分の顔を見つめた。
四歳以前の長期記憶のうち、陳述記憶は消え去り、非陳述記憶はときおり思いだすことがある。記憶喪失に苦しんでいた畔取直子《くろとりなおこ》の気持ちが、いまはよくわかる。彼女の相談に乗っていたときには、わたし自身に想起できない記憶の断片があるなど、思ってもいなかった。
車内に電話の呼び出し音が鳴り響いた。オーディオのスピーカーから聞こえてくる。
「ああ。俺の携帯だ。ハンズフリーでつながってる」伊吹はステアリングのボタンを押した。「はい」
「伊吹さん?」嵯峨の声だった。
「ああ。嵯峨先生。何か用? いま美由紀と一緒に群馬に来てるんだけど」
「群馬? どうして?」
美由紀はいった。「嵯峨君は精神鑑定のために客観的立場を維持しなきゃならないんでしょ。理由は話せないわ」
「それはちょっと冷たいな……。昨晩飛びだして行ったきりだったから、心配してたんだよ」
「ごめんなさい。だけど……」
「じゃあ、ちょっと待って。僕じゃなきゃいいんだろ? 舎利弗《しやりほつ》先生に代わるね」
すぐに舎利弗が電話口にでた。「美由紀。だいじょうぶかい?」
「ええ。心配ないわ。ありがとう」
「雪村藍さんのことだけど、嵯峨先生が病院に行ってカウンセリングしてるよ」
「そうなの……。経過はどうだって?」
「かなり落ち着いているよ。あの子って、前にも中国の高官相手に堂々としたところ見せてたしさ、ああいう冒険は性にあってるんじゃないのかな? 自分でもそういってるし」
「ってことは、落ち着いてきているの?」
「ああ。不潔恐怖症が再発するきざしはなさそうだ。彼女も強くなってきてるみたいだな。まあどんな症状がでても、優秀な嵯峨先生がついていれば心配ないと思うよ。雪村さんは、美由紀に頑張ってと伝えておいてと言ってた」
「……わかった。藍にも、すぐ帰るからと伝えて。それと、ごめんねって……」
「謝る必要はないよ。雪村さんも、美由紀と再会するのを楽しみにしてるみたいだ。ところで、僕たちのほうで何かできることはないかな?」
伊吹が告げた。「ネットで群馬・茨城の山間部について調べてもらえますか。雷雲の発生しやすい山間部。榛名山とか赤城山、榛名|西麓《せいろく》とか」
「いいけど、何を調べるんだい?」
美由紀は身を乗りだし、ダッシュボードのマイクにいった。「二十四年以上前から存続している施設とか、企業とか……。どんな物でもいいんだけど」
「ずいぶんアバウトだね。待ってくれ」キーボードを叩《たた》く音がする。「ええと、二十四年前か。一九八〇年代……。ああ。会社関係の所在地リストで地名を検索してみたんだけど、ごく少ないね。山奥だからかな。それも工場がいくつかあるだけだ」
「どんな工場?」
「榛名西麓の林道沿いに和菓子の製造工場。榛名山には製糸とビールの工場がある。それから少し離れて足尾山には秤《はかり》の工場がある」
「……秤?」
「なにか思いだしたの?」
「いいえ。だけど……」
ジェニファー・レインがわたしを竪穴に落とし、幼少の記憶を呼び起こそうとしたときのことだ。わたしはあるひとつの奇妙な質問を受けた。それを思いだした。
沖縄で使っていた秤を、北海道に運んだときにはどう調整すべきか。そういう質問だった。最大〇・一八グラム減らす、というのがその答えだ。北海道と沖縄ではそれだけ重力が違うからだった。
わたしはどうしてあの解答を知っていたのだろう。防衛大で知識を広げるために多種多様な本を読みあさったが、秤と重力の関係など、どこにも記されていなかった。
そうだ、おかしな問いかけはそれだけではなかった。ほかにもあったはずだ……。
美由紀はいった。「よくわからないけど、秤工場が気になるわ。場所はわかる?」
「もちろん。メールで住所と地図を送るよ」
「お願い。それと、二十四年前の東京駅の駅長について、なにかニュースが残ってないか調べてほしいの」
「駅長? それも記憶をたぐるヒントなのかい?」
「ええ。東京駅には駅長がふたりいるでしょ? 東日本旅客鉄道と東海旅客鉄道、いずれにも駅長が存在する。そのことについて、わたしが四歳のころに事件性があることが起きてたら、関わりがあるかもしれない」
「わかった。調べてみるよ。それと、美由紀」
「なに?」
「あくまでも冷静にね。取り乱しそうになったら、考えることをやめて踏みとどまることだ」
「……努力してみる。いろいろありがとう、舎利弗先生」
じゃあ、また連絡するよ。舎利弗がそう告げて、電話は切れた。
ふうっと美由紀はため息をついた。
脳の回路が切断されている以上、記憶を紐解《ひもと》こうとしても無駄だ。ジェニファー・レインの質疑内容を検証していくしかない。あの女が、わたしの幼少の経験の何を確かめたがっていたかを。
美由紀の携帯電話が短く鳴った。
取りだして液晶画面を見ると、メールが入っていた。
「舎利弗先生からのメールだわ」美由紀は伊吹にいった。「足尾電子秤工業。住所は茨城県石岡市誉田三一六二」
「ナビに出てくれりゃいいけどな。じゃ、いくぜ」
伊吹は大きくステアリングを切り、ヴェイロンをUターンさせた。
遠雷がまた聞こえる。
この空と同じく、わたしの記憶も暗雲に覆われている。払拭《ふつしよく》できるかどうかは、自分しだいだった。
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