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千里眼185

时间: 2020-05-27    进入日语论坛
核心提示:傾斜「おい、美由紀!」伊吹は、走り去っていく美由紀の背に呼びかけた。「待てって!」追おうとしたとき、銃撃音が鳴り響いた。
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傾斜

「おい、美由紀!」伊吹は、走り去っていく美由紀の背に呼びかけた。「待てって!」
追おうとしたとき、銃撃音が鳴り響いた。足もとの湿った岩が砕け、間歇《かんけつ》泉のように水|飛沫《しぶき》があがる。
蒲生が身を翻し、岩の壁づたいにこちらに迫ってきていた敵に反撃した。もう半壊状態の家屋に残った柱の陰に隠れ、自動小銃の敵にナンブ三十八口径で応戦している。
伊吹はそこから駆けだし、大きくまわりこんで敵を引きつけようとした。
ふたりの男がこちらを狙い澄ます。うちひとりを両手撃ちで仕留めたとき、もうひとりは蒲生に撃たれて背中から軽く飛んだ。ふたりが突っ伏すと、また静けさが戻った。
だがそれは、伊吹たちの周辺のことに過ぎなかった。洞穴の入り口のほうで撃ち合う音がする。ときおり照明弾が撃ちあげられ、白昼のような光を放つとともに、激しい銃撃音がこだまする。
洞穴のなかが、ぼうっと赤く染まった。家屋は炎上をはじめていた。火が外壁を覆い、屋根までまわろうとしている。
煙がたちこめてきて、伊吹は咳《せき》こんだ。自衛隊の訓練で催涙弾には慣れているが、火災で生じた煙となるとさすがにきつい。
伊吹は蒲生に駆け寄った。「援護する。先に外に出なよ」
「馬鹿いえ」蒲生もむせながらいった。「美由紀が洞穴の奥にいるんだぞ」
「たぶん向こうに出口があるんだよ。だから仁井川の奴もそっちに逃げたんだ」
「なら追うまでだ」
「いまからじゃ煙が充満しちまう」伊吹は蒲生の服装を見て、呆気《あつけ》にとられた。「防弾チョッキ着てねえのか? SATが短機関銃使ってんのに、ナンブで乗りこんでくるなんて……」
「きみこそ空で暴れてろ。国内の事件は警察の仕事だ」
「ちゃんとやってくれるならな。……なあ蒲生さん、仁井川を逮捕したとして、美由紀の裁判に利点はあるか?」
「逮捕はもう必要ないだろ。SATが幼女たちを救出した。証言と医師の検査で暴行はあきらかにできるし、二十四年前にアラヒマ=ガスが美由紀を売った相手も仁井川だ。美由紀が幼くして性的搾取の犠牲になったことは、もう証明されてる」
「じゃあ、あいつの自白というか、証言はもう必要ないわけか」
「ああ」蒲生は伊吹をじろりと見た。「なにを心配してる?」
「いや……。美由紀にとって、もうあいつが生きている必要がないのなら……」
「殺すか? 馬鹿いえ。美由紀はおまえみたいに凶暴じゃねえよ」
伊吹は黙りこんで、洞穴の奥を見やった。
殺す可能性がないなどと、どうして言いきれるだろう。
あの男こそ美由紀にとって、最も理性を失わせる存在であるはずなのに。
 美由紀は洞穴のなかを走っていた。ごつごつとした岩の足場を飛び移るようにして前に進む。
さっきの建物から出火したらしく、洞穴の内部に煙が漂っている。悪いことに、この洞穴は昇り坂になっていた。煙は煙突のように空洞を上昇してくる。逃れるすべは、出口まで行き着くしかない。
だが行く手は見るかぎり、果てしない暗がりがつづいている。そのなかを、仁井川が幼女を抱えたまま駆けている。何度もつまずき、転倒しながら、必死の形相で起きあがる。ぜいぜいという声が美由紀の耳にまで届いていた。
仁井川は足をとめて振りかえると、自動小銃を乱射してきた。美由紀は横方向に飛び、壁面の岩のくぼみに身体を這わせてかわした。
ガチッという鈍い金属音とともに、掃射はやんだ。その音が装填不良《ジヤム》だと直感した美由紀は、くぼみから駆けだして全速力で仁井川のもとに向かった。
あわてたようすの仁井川は、銃をかなぐり捨てて逃走した。
その先に、泥だらけの四輪バギーとオフロード用バイクが停めてあった。
ふだん仁井川たちが移動用に使っているものらしい。仁井川は幼女を抱えたまま四輪バギーに飛び乗り、エンジンをかけた。
空洞に反響する轟音《ごうおん》とともに、バギーは泥水を巻きあげながら走りだした。岩の凹凸《おうとつ》に激しく縦に揺れながら、バギーカーは洞穴の上り坂を疾走していく。
美由紀もすかさずバイクに駆け寄った。キーがつけっぱなしになっている。バイクにまたがったが、腰は落とさなかった。ステップの上に立ち乗りしなければ、こんな荒地を抜けることはできない。
小指でグリップを握り、あとの指は軽く添える。エンジンを始動し、クラッチレバーの感覚を確かめながら走りだした。
荒馬を乗りこなすようなオフロード走行、勘が備わってくるまで時間がかかる。クラッチはかなり軽い。二本指で充分操作できる。
登り坂に対し、美由紀は立ち乗りのまま前傾姿勢をとった。フロントタイヤを斜面にあてて、そこに体重をかける。岩の上にあがるたびに、スロットルを戻し慣性にまかせた。これを怠るとフロントが浮きあがって後方にひっくり返ってしまう。
水平な岩の上に達する寸前に膝《ひざ》を曲げて腰を落とし、上体を前輪に寄せる。そしてまた立ち乗りに戻る。
操作に慣れてきた。コーナリングでは身体をバイクの中心の外側に置くことで、タイヤに垂直に体重をかけることができ、横滑りを防げる。昇るのが困難な岩場は迂回《うかい》すればいい。
徐々に速度があがり、バギーとの距離が詰まってきた。仁井川がこちらを振りかえった。愕然《がくぜん》とした表情を浮かべたのがわかる。
仁井川はバギーカーを走らせたまま、運転席にかがみこむと、床からなにかを取りあげた。その棒状のものにライターで点火する。小さな青白い光が点滅していた。仁井川はそれを美由紀めがけて投げてきた。
工事用ダイナマイト、光は導火線の火だ。美由紀はとっさに進路を変え、バンク角をできるだけ深くして回避を試みた。
すさまじい爆発音とともに炎が噴きあがる。嵐のような熱風が襲いかかるとともに、洞穴は激しく揺れ、落盤が始まった。爆風はなんとか持ちこたえたが、落下してきた岩がフロントタイヤを直撃し、美由紀は前方に投げだされた。
岩に背を打ちつけ、美由紀の身体は転がった。背骨が砕けそうなほどの痛みを、歯を食いしばって堪える。遠のきかけた意識をつなぎとめる。ここで失神したのでは二十四年の苦悩に終止符を打つことはできない。
なにより、あの幼女の将来を失わせるわけにいかない。
身体を起こした。膝に力が入らない。嘔吐《おうと》しそうな気分の悪さに耐えながら、足をひきずってバイクに戻る。
バギーカーは勝ち誇ったように洞穴のなかを遠ざかっていく。
倒れたバイクを引き起こす。タイヤがぬかるみに嵌《はま》っていた。
美由紀はバイクに乗り、スロットルを少しずつ開けながら、後輪の空転を抑えた。
やがて強烈な推力とともにバイクは押しだされた。急斜面を浮きあがるようにして昇りきり、バイクはふたたび斜面の追跡劇に復帰した。
猛然と飛ばし、減速は最小限に留《とど》める。一瞬の気も抜けない暗闇のオフロード走行、身についた勘だけを頼りに全速力でバギーを追う。
そのバギーカーがふたたび視界のなかで大きくなってきた。振り向いた仁井川の、苦虫を噛《か》み潰《つぶ》したような顔も見える。それだけ距離は縮まっていた。
だがそのとき、洞穴の内部は水平に近くなり、真の暗闇のなかにバギーカーは飛びだしていった。
外気を全身に感じる。出口だ。
そこは、榛名富士の頂上付近に張りだした巨大な岩の上だった。バギーカーは崖《がけ》の上で停車した。
美由紀も、行く手が切り立った急斜面と気づき、あわててバイクを傾けながらブレーキをかけた。
吹きあがってくる上昇気流に、映らないテレビのノイズのような音が響いている。
雨の音かと思ったが、違っていた。岩の向こうにひろがる渓谷に、ひと筋の滝が流れ落ちているのが、暗闇のなかに白く浮かびあがっている。
岩の下は滝つぼだ。目もくらむその落差。足を踏みはずしたらひとたまりもない。
バギーカーを降りた仁井川は、幼女を降ろし連れていこうとしたが、その幼女はつまずいて転んだ。
舌打ちした仁井川が、幼女を抱えようとしている。だが、美由紀がバイクを降りて突進していくと、仁井川は幼女から離れてひとりで逃げようとした。
その仁井川の背に美由紀は飛びかかった。岩の上に突き倒し、うつぶせた仁井川に馬乗りになって、腕で首を絞めあげる。
苦痛の呻《うめ》きをあげた仁井川だったが、手近な岩をつかんで振りあげ、美由紀のこめかみを殴打した。美由紀は激痛とともに倒れた。
仁井川は起きあがり、悠然と歩いてきた。「おやおや。遊んでほしくて自分から擦り寄ってきたのか、クソアマ」
まだ起きあがることができずにいた美由紀の顔を、仁井川の靴が蹴《け》り飛ばした。
美由紀は岩場に仰向けに叩《たた》きつけられた。
「あいにくだったな」仁井川はへらへらと笑った。「俺はな、ガキじゃなきゃ嫌なんだよ。ガキは考えを持たねえ。手なずけておけばネコみてえなもんだ。ところが、大人の女は薄気味悪い。何考えてるのかさっぱりわからねえしな」
「なら」と美由紀は低くいった。「いまわからせてあげるわ」
蝦反《えびぞ》りになって背筋で跳躍し、美由紀は起きあがった。一瞬にして仁井川との間合いを詰めた。仁井川が驚きのいろを浮かべるより早く、美由紀は身体をねじって旋風脚、後ろ回し蹴りを放った。
美由紀の踵《かかと》は仁井川の顎《あご》を直撃し、仁井川は宙に飛ばされた。すかさず美由紀は垂直に飛びあがり、まだ空中に舞っていた仁井川の脳天に手刀の切掌《せつしよう》を振り下ろした。
バキッという鋭い音とともに、仁井川の身体はうつ伏せに岩に落下した。
なおも美由紀の怒りは収まらなかった。ふらふらと上半身を起こした仁井川に駆け寄り、蹴りという蹴りを浴びせ、両手であらゆる種類の突きを食らわせた。
「ま、待て」仁井川のその声は、いくらか残っていた歯さえも折れてしまったらしく、よく聞き取れないものだった。「待て」
美由紀は容赦しなかった。倒れた仁井川にローキックを連続して浴びせて、崖ぎりぎりにまで追いやった。
最後に腹部に一発蹴りを見舞ったとき、仁井川の口が鮮血を噴きあげたのが、白い滝を背景にぼんやりと浮かんだ。
もはやボロ雑巾《ぞうきん》のようになって横たわる仁井川を、美由紀は見下ろした。
そのとき、美由紀のなかに、かつて経験したことのない感情が湧き起こった。
殺意だった。
この男を崖から落としてしまえばいい。それだけで、すべてが果たせる。
だが、かすかな理性が美由紀の本能を抑制しつつあった。
幼女が見ている。彼女の目の前で、殺人など犯せるはずもない。
美由紀は背後を振り返った。幼女はバギーカーのすぐ近くで、上半身を起こしてこちらを見ていた。
ところが次の瞬間、幼女は思いがけない言葉を発した。
「殺して」と幼女はいった。
呆然《ぼうぜん》として、美由紀は幼女を見つめた。
女の子が初めて口をきいた。それも、信じられないことを伝えてきた。
幻聴ではないのか。わたしの朦朧《もうろう》とした意識のなかで生じた、一種の聞き間違いだろう。
幼女は、泣きながら声を張りあげた。「殺して! 早く! そいつ、ぶっ殺して!」
呆然として、美由紀は幼女を眺めていた。
泥だらけの頬に、涙をぼろぼろと流しながら、幼女は叫びつづけている。殺して。ぶっ殺して。
初めて自由になった幼女の感情。その発露は、憎むべき大人を殺したいという思いだった。
否定はできない。わたしもそう感じていた。だが……。
瀕死《ひんし》の仁井川がつぶやいた。「助けてくれ……。頼むよ。殺さないでくれ……」
美由紀は無言のまま、その男を見下ろした。
殺す。ぶっ殺す。幼女はそんな言葉を覚えていた。いや、それしか学べなかったのかもしれない。あの地獄に育って、怒りをしめす言葉をほかに身につけていない可能性もある。
だが、それもこれも、この男のせいではないのか。
思いがそこに至ったとき、美由紀のなかに迷いはなくなった。そして、怒りの炎だけが燃えあがった。
仁井川の胸ぐらをつかみ、美由紀は満身の力をこめて引きあげた。
すぐ背後は滝つぼだ。
「ひっ」仁井川が恐怖の悲鳴を短く発したのを、美由紀の耳はきいた。
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